◆素人のカメラ選び   

 Tokkeyさんからアウトドアに適したデジカメ選びに関するお話を頂きましたので紹介いたします。

 
 写真の良し悪しは、ほとんどが撮影の構図で決まるものと思っています。もちろん手振れ、ピンボケ、露出なども重要な要素ではありますが、最近のお手軽なカメラなら、少し注意していれば大きな失敗はないものと考えます。

 私はこれまで10台くらいカメラを買い換えています(1台の寿命が3〜5年くらいだから普通だと思います)。しかしこのうち一眼レフカメラは15年ほど前に、CANON EOS Kissを買ったきりです。残念ながら、このカメラには不具合がありました。必ずフィルムに傷がついてしまうのです。フィルムを送るところのどこかに、突起物のようなものがあったらしです。修理で簡単に直ったのでしょうが、なんとなくそのまま放置され、今ではホコリまみれ、カビだらけで難破船のようになってしまっています。

CANON EOS Kiss(フィルム一眼レフ)


 フィルムのコンパクトカメラを何台か買い替え、デジタルカメラの最初はNIKON COOLPIXの400万画素くらいのものでした。当時のスペックでは、望遠機能、レンズの明るさなど、ずいぶん高性能と思われたのですが、起動時間が気が遠くなるほど長く、使い物になりません。これもスペックのひとつなのですが、素人はこんなところは気づくものではありません。

 つぎにLUMIXから発売された、手振れ補正機能のついたカメラ、浜崎あゆみが宣伝していたやつ。これは久々に心の琴線に触れました。発売日、立ち飲み屋で一杯飲んだあとに真っ赤な顔で購入、なんと一銭もまけてくれませんでした。大型液晶モニターを持ち、ファインダーを捨て去った潔さも好印象でした。3年くらい使いましたが、起動時にレンズカバーが作動しなくなり、寿命を迎えました。

 そして直近まで2年ほど使っていたカメラは、CANON IXY 25 ISという機種でした。上記のごとく、前のカメラが壊れたので、何も考えずに大型カメラ店に行き、でその場で決めたのです。たいして広角でなく、望遠も3倍、まったく変哲もないカメラでした。買った直後(1週間くらいあと)に後継機種が発売されて、価格がみるみる崩れていったのには呆然とさせられましたが。

CANON IXY 25 IS


 このカメラ、小さいし、質感もあるし、まあ嫌いではなかったのです。しかし実は買ってから気づいたのですが、露出優先とかシャッター速度優先とかの設定ができないのです。代わりに人とか花とか山とかを選ぶことになっています。今頃のライトユーザーには被写界深度なんてどうでも良いわけで、そういう「くだらない」機能を省いて、わかりやすいカメラという設定であるようです。そんなあ、しまったでありました。

 そこそこきれいに写るし、うまくないのは腕のせい、と考えていたのですが、2009年夏の山行での写真は、それまでの考えを一変させられることになりました。相棒が発売されたばかりのOLYMPUS PEN E−P1という機種で山や人を撮影したのですが、前景の人が後景の山からぐっと浮き上がっているように見えるのです。そのくっきり感は衝撃的でした。どうも、撮像素子の大きさとか、ディテールの表現力とかいう差であるようです。

OLYMPUS PEN E−P1


 また、OLYMPUSは青がきれいだとか、CANON、NIKONはどうとか、いろいろな特徴があるらしいのですが、少なくとも私の写真の平板な表現とは別物であるように感じられました。このカメラは、レンズの後ろのミラーを持たない、新しい企画の一眼で、2010年末の現在は、OLYMPUSのほか、LUMIX、SONY、さらにSAMSUNGからも発売されています。

 ぜったいにOLYMPUS PENだな、CMも宮崎あおいだし(LUMIXなんて樋口可南子じゃん)。もう興奮状態におちいった私は、大枚じゅうまん円を握り締めて、池袋にあるおなじみの大型カメラ店へと急いだのでした。

 もうこれに決めていたのですから、まっしぐらに「これ下さい」でも良かったのですが、まあちょこっと試しに触ってみることにしました。電源を入れてシャッターを押してみる。「ジジー、パチッ」という感じ。ジジーはピントあわせの音、パチッはシャッターの切れる音。ありゃりゃー、なんか期待はずれ。焦点が合うのに2秒くらいかかり(ほんとはそんなにかかりません)、バネがはずれてシャッターが作動するというチープな感じ。ちなみに一眼レフの場合、「ジバシャ」という感覚です。ジ(ほんの一瞬)ですばやく測距し、シャッターが高らかな音をたてて作動する。

 興奮で上がりきった体温はみるみる低下、まるちゃんの漫画のように顔に筋が入り、なんともやりきれない感じです。熱気で、つぎに冷や汗でじっとり湿ったじゅうまん円は、カメラ店からOLYMPUS社に渡る寸前に思いとどまらされることになりました。そして、そこからカメラ選びの漂流が始まったのでした。

 きれいな写真を撮りたい。そのためには一眼レフカメラ(またはもっと大型のカメラ)が絶対必要であると思われる。ミラーレス一眼でも良いのだが、撮影時の感触はミラーレスでは得られない。となると、各社の一眼入門機が適当と思えます。価格も安いし、小型だし。

 CANON EOS Kiss Digital X4が一番であろう、というのがとりあえずの結論でした。NIKONでもPENTAXでも良いのですが、まあ昔からCANONに馴染んできたことだし。CANONは大衆的でW大学、NIKONはどちらかというとお高くとまってK大学みたいなイメージ。しかし一眼レフカメラは、ポケットに入りません。首からぶら下げるか、リュックサックにしまっておくか。ブラブラさせるのは嫌いです。だからダメ。

CANON EOS Kiss Digital X4


 ミラーレス一眼にしたって、ハンドバックには入れられる小ささですが、ズボンのポケットや、胸の小型ケースには入りません。リュックサックに入れておくと、きっと撮影枚数がゼロになってしまいます。さらにそれより大事なこと、俺ってレンズを追加で購入したり、フィルターを買ったりする性格だったっけ?ケチだしなあ。

 こうして、一眼レフ、ミラーレス一眼は、泣いて馬謖を切ることになりました。こうなると、当初の「きれいな写真」はさておいて、コンパクトデジカメから良さそうな機種を選ぶことになります。コンデジなら3〜5万円くらいで購入できます。インターネットの口コミサイトや、友人たちの話などからCANON、LUMIX、RICOHなどから選ぶことになりました。

 最近は、光学35倍ズームとか、24ミリの広角とか、特徴のあるカメラが多く出回っています。価格も安いです。しかしスペックがすごいのに安いなんて、どうも怪しい。やはり俺らプロは画像にこだわらなけりゃね。何てことないのに高価なカメラを選ばなければ笑われてしまう。こうして最終候補となったのは、CANON POWER SHOT S95、同じくG12RICOH CX4の3機種となりました。

 まずこのCX4という機種、大変評判が高く、カメラ好きならこれを選ばなければならないという雰囲気らしいです。しかし残念ながら、露出またはシャッタースピード優先といった設定ができないようなのでパスとなりました。

 S95とG12、購入の前日まで迷いました。G12はS95よりひとまわり大きく、機能満載です。S95より劣っているのはF2.8であるという点(S95はF2.0)くらいでした。ほぼこのG12に決めて、最終チェックのためカメラ店でいじってみました。ダイヤルがたくさんついていてとってもメカニカル。しかーし、むむ、やはり大きい、大きすぎる。胸ポケットに入れて運ぶことはできるが、ズボンのポケットに入れるのはちょっと無理。これでは、高尾山での山ガールのこっそり撮影は難しい。

 というわけで、一年猶予の時間をかけて、CANON POWER SHOT S95という、米屋の羊羹みたいな地味なカメラが伴侶ということになりました。まあまあ、満足の一品であると思います。しかしまあ、当初のカメラを買い換えたくなった理由は何なのか、すっかり忘れてしまいました。カメラ好きの方々から「なかなか良いカメラを選びましたね」、とのおほめの言葉を欲しいがために決めたような気がします。そう言えば購入から数週間経過していますが、自分で撮った写真をじっくり観察したこと、いまだに一度もありません。

CANON POWER SHOT S95


2010年デジタルカメラ人気投票」(PowerShot S95はコンパクトデジタルカメラ部門で一位)