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Tokkeyさんから白馬岳の土砂崩れ事故に関するコメントを頂きましたので紹介致します。
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私たちは8月10日に白馬大雪渓における落石事故に遭遇しましたが、それからわずか9日後、8月19日に雪渓終了点の先、葱平付近にて大規模な土砂崩れが発生しました。この事故は2名が死亡し、1名が行方不明(8月24日現在)という惨事に発展しました。
TVニュースの映像を何度も見なおして、事故のおこった場所を推測してみました。盛夏をすぎると、雪渓の終了点手前2〜300メートル手前から登山道は右の斜面(左岸)へと変更されます。ここには「落石で危険なため、速やかに移動するように」という注意書きがあり、道は急登しながら葱平方面へとトラバースします。問題の個所は多分このあたり、100〜200メートルくらいの間ではないかと思われます。
土砂崩れの直前にここを通過した人の動画がニュースで流れていましたが、右上から滝のように水が降り注ぐ場所を、その滝に向かって突っ込んでいくように歩いている登山者の姿がありました。ここさえ過ぎれば登山道は安定するのです。このような場合はとにかく急いで通り過ぎることが肝要です。
当日は朝から大雨で、登山を中止したパーティもあったそうです。私自身は最も嫌いな表現ですが、「無謀」であるとか、「山を甘く見た」といったそしりを受けることは仕方ないかもしれません。確かに登山に適さない天候であったのだから、この日の行動は中止すべきであったのでしょう。
覚えているでしょうか、この付近では2005年8月にも大規模な土砂崩れが発生し、死亡事故に発展しています。この時は、反対の杓子岳側の斜面が崩壊しています。今回の夏の山行時にも、杓子岳方面は絶えず小さな落石が続いていました。小さな土砂崩れや落石が起こることは、常に頭の中に入れておかなければならない場所であるということです。
さて、今後どのような方向に進むのでしょうか。考えられる対処法のひとつは、大改修工事が済むまで大雪渓の全面通行禁止です。しかし大規模な改修工事が実施されれば、せっかくの自然の景観が損なわれること必定です。また自然の猛威は、人智では計り知れない巨大なものであるため、想定以上の悪天候、または想定外の地震などによって事故を完全に防ぐことは不可能でしょう。
また、悪天候時の入山禁止も選択肢のひとつです。この場合、禁止の拘束力をどこまでとするかが問題になります。さらにごく狭い範囲で天候が急変した場合は対応できず、入山許可をすべきかどうかのトラブルも予想されます。
私たちは今後も「山登りを楽しむ」ことを続けるでしょう。まずはこういった不幸な災害に巻き込まれないよう、想定をはるかに超えた状況にあわないよう、これは祈るばかりです。登山の中止という判断をどのように下すか、いわゆるリーダーシップの研鑽をさらにすすめることも重要なことと思います。
落石事故、土砂崩れによって亡くなられた方に心から合掌。
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常盤 豊(S51卒) |
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