◆自主ワン 笛吹川東沢渓谷釜の沢東俣


 9月はシルバーウィークです。良政のおかげで休日の高速料金は1000円です。マイカーでどこかに行かなくてはなりません。でも渋滞はこわいし、宿泊費も安くありません。

 相棒とふたり、どうしたものか知恵を絞りあいました。てか、あれやこれや私が考えたのですが。その答えが「笛吹川東沢釜の沢東俣」の遡行でありました。

 このあたりは、明治時代に木暮理太郎とか田部重治が活躍した地域です。剱岳点の記で仲村トオルがいじわるな役を演じていた、最後に剱岳の頂上で旗をパタパタやっていたのが木暮理太郎です(日本山岳会第3代会長)。

 台風の通過を待ち、渋滞の隙間をねらって、出発は5連休の2日目、9月20日(日)としました。午後6時にいつもの「明大前路上駐車場」集合。中央高速経由で山梨市(旧牧丘町)の道の駅に19時半到着です。缶ビールと枝豆、おかずパンで夕食とし、20時半ころ就寝しました。

 9月21日、3時半起床。塩山方面に5〜6分戻って、コンビニで食料を調達して出発。西沢渓谷入り口の駐車場に4時半ころ到着しました。まだ真っ暗です。コンビニ駐車場ですべての準備を整えておいたので、すぐに歩き出します。クマに注意だそうで、正直怖いです。

 広い道を30分ほど歩くと、西沢渓谷と東沢との分岐、吊橋を渡って登山道からはずれて、やぶの中の踏みあとをたどります。ほんの少しで東沢の河原に降り立ちます。いよいよです。

 しばらくはゴロゴロの河原歩きです。適当な場所で沢を渡るのですが、どうしても水の中を歩かなければなりません。まだ渓流シューズの出番ではないので、トレッキングシューズのままだったのですが、この数回の渡渉で靴もソックスもぐしょ濡れになりました。

 ここはかつて甲武信岳への一般登山ルートだったそうですが、現状はまったく様相が異なります。水流の中を適当に上ってゆくと淵となり、行く手をはばまれます。また釜を持った滝は簡単に取りつくことが出来ません。しかたなく後ろを見ると目印のテープがあったりして、巻き道を示しています。

 ただこの巻き道がやっかいものです。滝を巻くのに数十メートル登ったりするのですが、きわどい踏みあとで、滑ったらダメヨの連続です。ただし、全行程ロープで確保してシャクトリ虫のような行動を強いられる場所はありません。

 ホラ貝の沢、魚止めの滝、両門の滝と順調に過ぎてゆきます。その間、数百メートルにおよぶスラブをひたひた歩く場所が楽しさの核心かと思います。
  
 
ホラ貝の沢


美しい水流


魚留めの滝・水流の左が登路


魚留めの滝・木登り


両門の滝


水をかぶった


スラブを歩く


スラブを登る


上流のスラブ滝

 一般的に沢の構造は、前半(下流)はたいらでなかなか高度がかせげず、後半(源頭)になると傾斜が急になります。しかし前半部分がささっと歩けるわけではありません。岩を乗り越えて同じだけ下るの連続です。けっこうへとへとになります。

 記録によると、歩き出してから6時間で300メートルくらいしか登っていません。1時間でたった50メートルです。50メートルって10階建てのビルくらいです。階段を登れば5分くらいですよね。

 そしてそのあとの2時間くらいは倒木だらけのゴーロ帯。最後が気が遠くなるほどの急傾斜。3分歩いて30秒息つぎ。へとへとでふらふらするので、すねを岩にぶつけることが多くなります。

 13時半、歩き始めて9時間で甲武信小屋のポンプ小屋に到着。ようやく渓流歩きから開放されました。ここから10分で小屋に到着しますが、普通の登山道がまるで高速道路のように感じられます。

 14時前に小屋のテラスに着いて、濡れたソックスとトレッキングシューズに履き替え、下山にかかります。20分ほどの登りで木賊山に到着。相棒から木賊って何て読むのか聞かれました。とくさです。烏賊(イカ)かと思ったそうです。

 16時半に営業停止中の西沢山荘に、17時前に駐車場に帰り着きました。帰りは中央高速の渋滞を避けるため、雁坂トンネルから秩父へ抜け、関越自動車道経由としました。20時に板橋の自宅に到着、駅前の居酒屋で1時間ほど反省会を催しました。相棒はそれから2時間かけて鎌倉の自宅へ。出発から帰宅までおよそ30時間。車内で寝ていたのが7時間ですから、23時間の夜行日帰り山行でした。
  
                      

常盤(S51)