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ここのところ、毎週のように週末は雨模様です。5月31日(日)、いつもの相棒ともうひとり会社の先輩(59歳、山の初心者)と3人で丹沢三ツ峰を縦走しました。
丹沢三ツ峰とは丹沢山から北東に伸びる尾根で、私の育った神奈川県南部方面からならだれでも指摘できる顕著なピークの連なりです。
始発電車で登山口に7時到着。およそ3時間かけて大倉尾根を登ります。前日の飲酒がたたってなかなか調子が出ません。つらい思いをしながら、塔ノ岳にやっと到着。
塔ノ岳の北に進むと、景色が一変します。これまではガレ場ばかりだったのが、ぶなの深い森に急変です。気分がなごみます。雨が降ってきたので雨具を着用しました。
塔ノ岳から1時間ほどで丹沢山、とくに何の変哲もありません。ここから宮が瀬方面へと向かいます。ずいぶん下って登り返しを繰り返します。円山木の頭というピークへの直前10分はつらくて死ぬ思いです。
三ツ峰最後の本間の頭からはほとんど下り一方ですが、ここいらで先輩の足が止まりだしました。ばてが出てきて、足元がふらつきます。スピードダウンとなりましたが、なんとかもってほしいものです。
ところがあと1時間で宮が瀬というあたりで、ついに膝痛が発症し、ブレーキ状態です。およそ2倍の時間がかかり、予定のバスを逃してしまいました。
バス停到着が4時15分、つぎのバスは4時52分です。けっこう間があります。そこでバス停脇の食堂で、軽くビールでも飲もうかということになりました。
「こんにちわー、すみませーん、ビール飲ませてください」、奥からおばさんが飛んできました。大きな声で「あんたたち、山から来たんでしょ、ちょっと待って、入っちゃダメ」いったい何ごとなのでしょうか。
「あんたたち、ヒル付いてない?」「えっ?ないっすよ」「うそ、みんなそう言うけど必ずいるんだから、今日は特に雨だし。ちょっと外出てってよ」鬼の形相です。
というわけで店から追い出され、各自点検となったのです。雨具を脱いでバサバサとふるおうとしたら、おばさんはものすごい剣幕で怒ります。「そんなことしたらヒルが撒き散らされちゃうでしょ、おとうさーん、ちょっとー、塩持って来て」
いた!一匹。ズボンのすそに黒くて気持ち悪いヤツがシャクトリ虫のように動いています。おとうさんが塩をがばっとつかんで、塩ごとヒルを落とします。
またいた!こんどは登山靴のひものところ。ひえ!こんどは雨具の膝あたり。「ちょっとあんたたち、ズボン脱ぎなさいよ」とおばさん。いい歳してパンツ一丁です。ただ、このあたりからおばさんも平静をやや取り戻し、やさしくなってきました。
店の玄関に新聞紙を敷いてもらい、パンツ以外すべてを脱ぎます。靴の中にも一匹。ああ、恐ろしくて鳥肌です。先頭を歩いていた私からは2匹のみでしたが、後ろの二人からはそれぞれ7〜8匹発見されました。
あれれ、相棒の首のあたり、真っ赤なキスマークではありませんか。どこで?誰と?と思うまもなく、スーと血が流れます。やられた!おとうさんが、よもぎの葉っぱで手当てしてくれました。「絶対掻いちゃだめだぞ、毒が回ってるんだから、1ヶ月くらい直らねえぞ」とおとうさん。こんな拷問ならきっと白状して冤罪、処刑でしょう。
こうしてヒルとの格闘30分、ビールなんて飲む余裕などなく、ようやく着替えが終わったのです。時間ぴったりに下りてきて、そのままバスに乗ったとしたら、バスの中にヒルをばら撒いていたことになります。
厚木へ向かうバス、途中から登山者が何人か乗ってきましたが、私は嫌悪の目で睨みつけ、接触しないよう体をねじったのは言うまでもありません。
ヒル対策でもっとも手っ取り早いのは、塩を持参することだそうです。そうは言ってもヒルを目視してから塩をかけるのですから、すでに手遅れの可能性が大きいです。そこで「ヤマビルファイター」です。これでヒルは寄り付きません。もしも見つけたら「スーパーヤマビルジェット」で完璧です。
なんと言っても、夏、雨だったら、丹沢には行かないことが最大の予防法ですね。相棒からの連絡、家で整理していたらもう一匹見つかったよ。汚れたズボンなどの入ったリュックサック、そのまま捨ててしまいたい気分で玄関に放置してあります。
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