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重いコンダーラ、試練の道を、行くが男の、ど根性〜…、コンダーラって何だ?漫画では、飛雄馬少年が、地面をならすローラーを引いているけれど、アレのことでしょうか。少女時代、後輩のIKTさんは、本気で疑問に思っていたそうです。
アルプス一万尺、子ヤギの上で、アルペン踊りをさあ踊りましょ。ですが、アルプスの少女ハイジって、ずいぶん乱暴なお転婆娘ですね。いくら少女であっても、子ヤギの背中で暴れるなんて、かわいそうじゃないですか。しかし、これって、山屋さんならご存知の通り、まったく違いますよね。アルプスは日本アルプスの槍ヶ岳、一万尺はおよそ3000メートル(槍ヶ岳の標高は3180メートル)、子ヤギは小槍(槍ヶ岳・大槍の近くにある岩塔でロッククライミングのクラシックルート)、ここに登って、うれしさのあまり踊ってしまうのですね。
この「アルプス一万尺」、作詞者不明だそうですが、29番まであるそうです。その27番の歌詞、槍の穂先で小キジを撃てば、梓・高瀬に泣き別れ、であります。梓は梓川であり、高瀬は高瀬川。小キジ、これは山屋さんには説明不要ですが、お公家さん風に言えば、御不浄をお借りするということ。槍ヶ岳の頂上は、梓川と高瀬川の分水嶺にあたりますから、そこで放たれたお小水は、梓川方面と高瀬川方面に分かれてくだり、その後合間見えることがないということです。ほんとでしょうか?
梓川(槍ヶ岳付近は槍沢)は、上高地から松本の市街地付近を通り、豊科周辺では犀川と名前を変えます。犀川は明科で北から南下する高瀬川と合流し、長野市付近で千曲川といっしょになります(千曲川の上流は、当然ながら旧信越本線をさかのぼった上田、軽井沢、碓氷峠付近かと思ったのですが、こちらには太い川がなく、小海線に乗り換えて、佐久平、小海、を過ぎて信濃川上に至り、さらにここから西へ金峰山、甲武信岳方面なのです。この意味では、小海線も立派なものです。八ヶ岳高原線とかチャラけたこと言わずに、堂々と信濃川本線と呼べば良い。なお、JR最高地点は、おなじみ、野辺山駅近くです)。ここからJR飯山線沿いに長野県内を流れる時は、引き続き千曲川なのですが、県境を越えて新潟県に入ると、突如信濃川と名前を変えます。信濃から越後に入ったとたんの名前変更、信濃川から越後川なら、どこにでもあるホームタウンデシジョンと納得できますが、これが逆とはたいしたもんだと、言わざるを得ません。さすがは日本一の信濃川です。でもさ、流域面積なら利根川なのね、惜しかったです。
なお高瀬川は、槍の穂先からいったん北に向いますが、大町市付近でUターンして南下します。JR大糸線に沿って、松本方面に向います。そして有名な大王わさび農園付近、明科のあたりで犀川(ほんの少し前まで梓川)と合流です。槍の穂先で泣き別れたお小水は、長い旅路の果てに安曇野でようやく合間見えることができました。メデタシ、メデタシですね。
急にまじめな話です。高校一年の地理のテスト。川の左岸・右岸を答えさせる問題がありました。40年以上前のことですが、ほんとにありました。私が山登りを始めたのが、高校2年からですから、BM(befor mountain)1年です。勉強不足であったため、良くわかりません。こういうのは引っ掛け問題だろうと推測しましたが、ええい、ままよ、自分の思いの通り、下流から見て右を右岸、左を左岸として、やはり思ったとおり×でした。常識とは反対で、上流から下流を見ての右・左なんて、地理学の根本から説明できるのでしょうか。
これと似た、変な呼び方に、支流というのがあります。本流と支流です。川の流れは、源流(みなもと)からですから、この場合は直感的には流れに沿って、上流から下流を眺めるものでしょう。支流というのは、どこかで流れが分岐して、別の方向に流れてゆくものと考えるのが常識であると思いませんか?
でもね、水は高いところから低いところに流れるのですから、途中で分岐するということはめったにありません。まれに、大平野とか、盆地の中、河口付近など、高低差の少ないところでは起こりうる現象ですが、山岳地ではまずあり得ません。山の襞状を流れる小川と小川が合流します。大きな川だと、これが何百回、何千回と繰り返されて、ひとつの流れが形成されます。これを地図などに表し、図、または絵として眺めると、川が上流で分岐しているように見えるはずです。だから支流と呼ぶのでしょうが、まあ、名称として、完全に納得できるものではありません。やはり上流が正しい。左脳ではしぶしぶOKだが、右脳は絶対拒否です。
関東平野を取り巻く大河を数えてみます。北東から反時計回りに、利根川、荒川、多摩川、ちょっと離れているけれど相模川でありましょうか。かつて利根川は関東平野を南下し、東京湾(江戸湾)へと流れ込んでいたのだそうです。くわしくはwikipediaをご覧いただきたいのですが、治水目的などで、東に向うことにされ、現在の千葉・茨城県境から銚子方面へと変更れたとか。なお、森高千里で有名な、渡良瀬川(曲名は渡良瀬橋)も江戸湾に注いでいたらしい。
古い話ですが、多摩川に突然現れたアザラシのタマちゃん、横浜の鶴見川・帷子川付近にいたかと思うと、こんどは荒川であったり中川であったり。また、自慢じゃないが、ワタクシ生誕の地、赤線・青線の本場である、横浜黄金町、その駅前を流れる、墨のように濁った大岡川でも見かけられたらしいです。そしていつのまにか姿が見えなくなり、無事に大海に戻ったこととされています。東京湾に注ぐ川はとてつもなく錯綜し、人工的に仕切られたものが少なくありません。隅田川(荒川)、荒川放水路、中川、江戸川など、数キロおきに現れてきます。堤防などで仕切られていますが、それがなければちょっとした大雨で、簡単に氾濫していたのでしょう。と言うより、関東平野南部は、見渡すかぎり沼地であったとの解説のほうが適当なのでしょう。タマちゃんは、川から東京湾、そして別の川、もしくは水門が開いていたら、直接川から川へと移動していたのでしょうか。2002年の夢のようなお話です。椋鳩十先生がご存命なら、どんなお話にして下さったでしょう。
こんどは山の話です。東京の中心を山手線が走っていますが、どこかのターミナル駅から放射状に出るJR、私鉄沿線にお住まいの方が少なくないでしょう。総武本線(千葉方向)、京成電鉄、常磐線、つくばEX、東武鉄道、東北本線、高崎線、東武東上線、西武池袋線、西武新宿線、中央本線、青梅線、京王電鉄、小田急電鉄、東急電鉄、東海道本線、横須賀線、京浜急行などなど。そしてこの沿線の奥、関東平野の縁にあたるところに、1000〜2000メートル程度の日帰りハイキングに適当な山々が多数あります。
しかし、関東平野の北、北東方向は奥が深く(山地まで遠く)、筑波山を除いては、気軽に登れる山は多くありません。日光連山、足尾付近、上越国境の谷川岳周辺、西上州など、できれば泊まりで出かけたいものです。その点、北西ないしは西、南西の方向に向えば、ターミナルから1時間ほどで、目的の駅に到着できます。バスの便が良ければ、プラス30分もあれば登山口に立てます。まったく有難いことです。奥武蔵、奥多摩、中央線沿線、丹沢などです。
まずは奥武蔵。これは広大な武蔵野の奥の地域という意味でしょう。交通は、東武東上線、西武池袋線(飯能から先は西武秩父線)、西武新宿線を利用します。荒川の流域です。なお、秩父の山も荒川の流域に含まれます。奥秩父とは、秩父からもっと奥の山のことです。荒川、多摩川、千曲川などの上流が集まっています。しかもこの奥秩父の山脈を越えた裏側は、甲府盆地です。甲府盆地は山脈の南ですし、交通の便も良いので、秩父の奥の、その裏側に当たる地域(甲府盆地)は、実は逆に奥秩父の表玄関になっています。奥秩父の名付け親は、かの木暮理太郎先生ですが、先生は上州出身なのでこのように呼んだのでしょう。甲府の方であったら、「北笛吹」に決まってます。奥秩父に金峰山という立派な山があります。山屋さんはほとんど「きんぷさん」と呼びます。実はこれは甲州側の名称であって、信州側では「きんぽうさん」と呼びます。会社に長野県佐久出身の人間がいて、「違います、きんぽうさんですよ」と指摘されたことがあります。幸い、上記の知識があったので、なんとか喧嘩にならずにすみましたが。なお、奥秩父の山から南に流れる川は、甲府盆地でほとんどが富士川となり、駿河湾へと注がれます。
つぎに奥多摩。多摩川の上流の山々です。中央線、青梅線、京王線の利用が便利です。なお、中央本線は高尾の先で小仏トンネルを抜けて相模湖駅に出ます。このトンネルの上に小仏峠がありますが、この峠の先は桂川の流域です。桂川は富士山山麓の河口湖周辺が源流であり、相模の平野に出ると相模川と名前が変わります。したがって、奥多摩とは言っても、一部相模川流域でもあります。なお川崎・羽田あたりでは六郷川と呼ばれている多摩川ですが、ほぼ北西にさかのぼり、立川の南で浅川と別れています。八王子・高尾周辺を流れているのは、この浅川であり、高尾駅もかつては浅川という名前でした。青梅線に沿って、多摩川の上流をさかのぼると、拝島で秋川を分けます。キャンプで有名な秋川渓谷です。こちらのJR終点は武蔵五日市。青梅線の終点は奥多摩駅(かつて氷川駅)であり、その上流に奥多摩湖(小河内ダム)があります。奥多摩湖の西はずれに東京都奥多摩町と、山梨県丹波山村の境があるのですが、北に小さな谷があるくらいで、明瞭な分岐点があるとは言えません。
丹沢です。相模川の西にある、結構急峻な山々です。東京から富士山を見ると、富士五合目あたりまで、黒い山がじゃまをしています。これです。こちらの方角からだと、いちばん左に三角の山があって、平野へと下りますが、これが相州一の名山、大山です。丹沢で人気の高い登山口に大倉という場所があります。ここを流れている川は水無川、これは相模川ではなく、花水川となって相模湾に注ぎます。箱根駅伝の3区〜4区の平塚中継所は花水川河口付近にあります。大倉から西に500メートルほど離れたところに、四十八瀬川が流れています。これは松田付近まで小田急に沿って流れくだり、酒匂川となって、小田原付近に達します。渋沢駅165メートル(小田急で最高)、6分後の新松田55メートル、この110メートルの下りは迫力満点ですよ。というわけで、西丹沢は、酒匂川の流域の山々です。なお、酒匂川はJの字をさかさまにしたように、上流がぐるりと回っていますが、Jのさかさまの内側にあるのが箱根山です。東海道本線は、かつて国府津(小田原の手前)から酒匂川沿いにさかのぼり、箱根の北を通って御殿場に至り、狩野川沿いに沼津に出ていました。しかし、小田原、熱海、丹那トンネル経由で三島、沼津に向うショートカットコースができたため、ローカル線になってしまいました。御殿場線に乗車中、あるアベック(東京人)の浅薄そうな男が、「こんな田舎電車、どっちが上りだか下りだかわかんねえ」と言っていました。いかにも薄幸そうな女も、うっとりとうなずいていましたが、殴ってやろうかと思ったくらいです。かの日本一の大幹線、東海道本線のことを何と言うのか!東京(国府津)方面に行くのが上りであり、神戸(沼津)方面が下りに決まっておろうが、この無知めが。こんな大事なことがわからないなら、あまえら、早く別れたほうが良いぞ、お互い苦労するばかりだぞ、フー(鼻息)。私の通っていた小学校は、東海道本線のすぐ脇にあり、校庭からビジネス特急こだま(新幹線の下等電車ではありません)など、毎日眺めていたものです。
昨年、会社の若いもんが、富士山に登りたいというので、同行して見事登頂を果たしました。その彼が、こんどは友達を誘って、どこかに行きたいのですが、適当な山はありますか?と質問してきました。それは良かった、そう、自立するのが一番ですよ。ということで、いろいろ案を練ってみて、奥多摩の御岳山〜大岳山を紹介することにしました。大岳山から馬頭狩尾根を縦走できれば立派なものだし、途中で左右に下ることも可能です。しかしその若いもんは、富山県出身なので、関東周辺の土地勘はあまりありません。そこで、川の説明から書いてみたのが、この長文です。フムフム、なるほど良くわかりましたと感じてくれるでしょうか。まあ、そのはずです。それにしても会社でもそうですが、年寄りの説明はクドくていかんと、常々感じています。ワタクシは、絶対にそうならないようにと、日ごろから注意している次第です。このあと、具体的なコース説明に入るのですが、今回はここまでと致します。それでは、以上。
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