◆三県境について    

  常盤さんから、地理に関するお話を頂きましたので紹介いたします。

 
 紙を1枚用意します。その四角い紙が、一つの島国だと考えてください。その紙に線を引いてみます。できれば直線でなく、適当な曲線で、10くらいの県に分割してみましょう。つまり引いた線は県の境です。

 紙の端っこ部分は海ということで、内陸部分には、いくつもの三交点ができます。アメリカ大陸のように、砂漠の中に強引に州境を引いた場合、縦横交わる4交点ができてしまうことがあります。ニューメキシコ、アリゾナ、コロラド、ユタ、この4州の交点をフォーコーナーと呼び、一応観光地らしいです。碓氷峠の上にある熊野皇大神社、群馬・長野県境の線が引いてあり、神社が二つに分かれていますが、そんなものでしょうか。

 アフリカ大陸も、イギリスとかフランスとかが国境を勝手に定めた地域ですが、それでも4交点は存在しないように見えます。3交点は、必ず、自然にできるが、4交点は人工の手が加わらないと、ありえないのです。

 日本地図を眺めてみます。少しの例外を除くと、すべての県境に三県境が存在することに驚かされます。例外とは、完全に海に囲まれた北海道、沖縄、半島の先っちょの長崎と佐賀です。これ以外、すべての都道府県に三県境が発生、存在することになります。 
 
 
 
図 : 主な三県境 
 
 
   
 たとえば、いちばんシンプルなのが、青森と鹿児島。青森の場合、南の岩手、秋田との三県境、十和田湖の南にある、四角岳という山だそうです。鹿児島の場合、北の宮崎、熊本との三県境ですが、小さな川が合流するだけで、それが何だという変哲もない場所。

 青森も鹿児島も、回りを海に囲まれているので、三県境は1か所ずつしか存在しませんが、特に内陸県の場合は、接している県の数と同数の三県境が出来上がります。海のない内陸県は、栃木、群馬、埼玉、山梨、長野、岐阜、滋賀、奈良、以上8県です。その中の王者は、なんと言っても長野です。北東から時計回りに、群馬、埼玉、山梨、静岡、愛知、岐阜、福井、富山、新潟、9県に囲まれているので、三県境が9か所もあるってことですね。

 なお、長野県人なら知らぬ人のいないと思われる県歌「信濃の国」、歌いだしは、「信濃の国は十州に、境連ぬる国にして」だそうです。岐阜県が飛騨、美濃、二つの国ですから9県でなく、十州となる模様です。

 と、これがオリジナルだったのですが、日本のアルザスと呼ばれる地域にお住いのかまちょふ君から、ご指摘がありました。長野は、福井には接していない、たしかにそのとおりでありました。ですから、長野の3県境は8か所です。さらに、静岡は、駿河と遠江の2州です。また、愛知は尾張ではなく、三河です。8県プラス、静岡、岐阜の2州ということで、信濃の国は確かに十州に境連ねています。

 さらに、三重には飛び地があり、9県に接していてここが日本一だそうです。愛知、岐阜、滋賀、京都、奈良、和歌山の6県。伊勢神宮が、全国に領土を持っているのでしょうか。そうだとすれば、ちょっとずるい、わかりっこありません。

 長野の8か所もある三県境、私が行ったことのあるのは、甲武信岳(埼玉・山梨)三俣蓮華岳(岐阜、富山)、白馬岳・三国境(富山・新潟)の3ヶ所です。最近、標高国内3位に昇格した間ノ岳、そこからわずか西に三峰岳(みぶだけ)という山があります。ここが三県境(静岡・山梨)の一つなのですが、残念ながら間ノ岳には行っても、わずか1000メートルしか離れていないここに、行ったことはありません。なおここは、2999メートルという、剱岳同様、惜しい、残念な山です。

 そして東京です。千葉、埼玉、山梨、神奈川に接しており、東端は東京湾。したがって、三県境は3ヶ所です。葛飾区、水元公園のとなりの江戸川の中、すぐ対岸に松戸駅があります(千葉、埼玉)。花の百名山で有名な生藤山、から徒歩数分の小ピーク、三国山(神奈川・山梨)。ご存知、東京の最高峰雲取山、細かく言うと、避難小屋のある東京側の小ピーク(埼玉・山梨)。

 百名山を制覇した方、その途中の方、興味が無いわけではないがそれほどでもない方(私はここに属します)、興味のない方、いろいろでしょうね。県境、とりわけ三県境探訪はなかなか楽しいです。上記、生藤山のとなりの三国山、雲取山の三角点のとなりの小ピーク、最近訪れましたが、「この1点なのか」と感慨深いものがありました。ぜひお勧めです。松戸駅のすぐとなりなら、雨でも訪れることができますよ。

   以上