暑熱を歩く

　◆暑熱を歩く　

　常盤さんから面白いチャレンジのご報告を頂きましたので紹介いたします。

　明治35年１月25日、旭川で最低気温－41.0℃という大記録が打ち立てられました。以来100年以上もこの記録は更新されていません。新田次郎の「八甲田山死の彷徨」をお読みになりましたか。この小説は、ちょうどこのときの行軍の様子がモチーフになっています。１月23日に青森連隊駐屯地を出発し、八甲田山を目指した歩兵部隊ですが、吹雪にはばまれ翌日には遭難状態となり、25日に事実上全滅となったというものです。当時の将兵の気持ちをしのび、いつか遭難現場を歩いてみたいと思います。しかし現実的には、往復するだけでもずいぶん費用がかかってしまいます。

　逆に最高気温は、昭和８年７月25日に山形で記録された40.8℃であると習いました。これも70年以上破られなかった不滅の記録です。小学校で社会をちゃんとお勉強した方なら、きっと覚えていらっしゃると思います。ところが平成19年８月16日、ついに王座陥落の日がやってきました。岐阜県多治見、埼玉県熊谷で40.9℃、こんなところに伏兵がいたのです。-

　さて、現在進行中の出来事であり、今後の状況は予断を許さないのでありますが、ニッポン暑熱地帯を歩いてみたらどうでしょうか。これまでに今年の記録となった場所は、熊谷、越谷、館林などであり、東京から遠くなくてお手軽です。都心からほんの１時間程度で、日本有数の灼熱地獄に行くことができるのです。なんてすばらしいことでしょうか。

　お盆の中日にあたる８月15日、胸に秘めていた計画を実行することになりました。遠足といえば早起きが定番です。もうウキウキして４時前に目が覚めてしまいます（いつものことですが）。我慢できなくて始発電車に乗車です。最寄り駅の上板橋５時15分発小川町行き、乗り換えて東上線の終点寄居に６時50分到着。電車は適度に冷房が効いているし、快適なぶらり旅。

　寄居、ずいぶん田舎っぽい地名です。しかし秩父往還の宿場町として栄えた町で、現在も東武東上線・八高線・秩父鉄道が交差する埼玉県北部の交通の要衝となっています。ただし、栄えているとは思えません。駅前にはスーパーのライフと焼き鳥屋があるきりです。

　ここで秩父鉄道に乗り換えです。電車に冷房装置はありますが、扇風機のみで冷房は稼動していない模様。でも朝だから気持ち良いです。30分で日本一の熊谷に到着、まだ７時半です。駅前にラグビーの銅像があります。４年前に急逝した宿沢広朗選手のことが思い出されます。

　さて先を急ぎましょう。もたもたしていると暑くなってしまいます。あれれ、暑熱を歩きに来たのでした。本末転倒とはこのことですね。再び秩父鉄道に乗ります。行田市という駅（JRの行田とは離れている）を過ぎて、８時半過ぎに羽生到着。すかさず東武伊勢崎線で本日の終点館林へと向かいます。３つ目です。

　館林を有名にしているのは、なんと言っても茂林寺、分福茶釜です。最寄り駅は館林の南２キロにある茂林寺前なのですが、勉強不足で興味がわきません。館林の市街は駅の東に拡がっていますが、西には日清製粉の工場と正田醤油、正田記念館があります。日清製粉は美智子皇后のご実家であり、正田醤油はその本家筋だそうです。記念館、土・日は休館のため入場できません。お土産と決めていた正田醤油はゲットできませんでした。

　９時を過ぎると日差しが強まります。朝起きてから６時間以上が経過し、そろそろ疲れてきたので家路につきましょう。そう言えば越谷が残っていました。区間準急という名ばかりの、実は各駅停車に乗って新越谷、武蔵野線・南越谷から、越谷レイクタウンに行ってみました。

　これはすごい！もと火葬場だった場所に大規模な調整池を作り、その付近一帯を商業施設として再開発しています。すでにイオンが巨大な商業施設を作り、300もの専門店が営業しています。まわりは造成中でまるで原野。３年後に街が完成するそうですが、ほんとにぃぃ？？？という感じ。私の娘がここで働いているのですが、施設のはずれ近くであるため、駅から15分もかかりました。こんな巨大戦艦のような施設が、長続きするはずないと思いますが・・・。

　そんなわけで、家に帰ったのが12時過ぎ。これからが暑さ本番という時間。“練馬で37℃”とか報じられていました。しまった、こんなに遠くまで行かずとも、居ながらにして灼熱地獄を味わえたのに。午後はビール飲んでクーラー効かせて昼寝タイムとなりました。寝ている間の熱中症には十分な注意が必要ですものね、zzz。　

小川町で乗り換え