GWの槍ヶ岳


 ゴールデンウィークから5月末ごろにかけての高山は、楽しみが満載されています。
谷筋はほとんど雪に覆われており、尾根は少しずつ岩が露出し始めています。
天候は激変することがありますが、晴れれば盛夏と変わらないほどで、強烈な紫外線対策が必要になります。
 この美味しい時期を逃さぬよう、最近は毎年のように北アルプスに出かけています。
おととしは八方尾根から唐松岳、昨年は上高地から蝶ヶ岳、そして今年は槍沢から槍ヶ岳を目指しました。



<この時期の山小屋>
 主要な山小屋はほとんど営業を始めています。もちろん2食付きで利用可能です。夏山と条件は変わりません。
ただし今回、「双六小屋営業休止中」の張り紙があり、事前の情報収集が必要なことを痛感させられました。
私たちは、槍沢ロッジに宿泊予約をしました。雨でも雪でも、ここまでは絶対に行く予定だったからです。

<交通手段>
 ゴールデンウィークの初日に車で移動、渋滞が恐ろしいです。しかし長年の経験から、アクシデントさえなければこれでOKという方法を編み出しました。
昨年の夏の山行でも実施しましたが、大月に8時過ぎ集合という技です。
最近の中央高速は、渋滞個所が小仏峠付近に限定されつつあり、相模湖以遠はほとんどスムーズに流れます。
今回も交通量は多めでしたが渋滞とは無縁で、大月からほぼ2時間で松本に到着しました。

<釜トンネル>
 上高地への出入りで隘路となっていた釜トンネル。片側通行でしたので、必ず20分から30分ほど待たされました。
しかし2005年に新しいトンネルが完成し、現在は対面の広いトンネルになっています。
沢渡の駐車場でバスまたはタクシーに乗り換えて、5〜6分で釜トンネル、さらに15分ほどで上高地に到着です。

<今回のメンバー>
 初日は普通の行程ですが、2日目が少々ハードな計画です。昨年の夏の山行でごいっしょした方のうち、わりと元気だった方に声をかけました。
来年もどこかに行きたいと考えていますので、ご希望があったらお知らせください。

<装備>
 ピッケル、アイゼンは必携となっています。必携ですから持参しないわけにはいきません。なにかのアクシデントが発生した際に、不携帯だと批判者の好餌にされるからです。
 実際、ここでアイゼンがあれば助かると思われた場所は、ほんの数メートルほどでした。少しだけ凍り気味な1ヶ所のみ。その時アイゼンはザックの中にしまってあり、使用しませんでした。
 なお持参したアイゼンは、12本爪、10本爪、8本爪、6本爪と各自ばらばら。できれば重登山靴プラス10本爪以上のアイゼンといきたいところですが、予算の関係もあり、夏用のトレッキングシューズと6本爪の簡易アイゼンという、あまり感心できないと言われそうな貧弱な装備のメンバーもいました。でもそれで危険であるとか、最初から考えていませんでしたが。もちろん結果はそれで十分でした。
 ピッケルは「杖」として少し役に立ちました。神田「さかいやスポーツ」で、いちばん安い6500円のピッケルを買ってきた臼井君、何ら問題ありませんでした。
 防寒具は夏とほとんど同じ、ただし午前中はほとんど雨具を着て過ごしました。暑くなって、1枚脱ぎ、2枚脱ぎ、ついにはTシャツ1枚までいってしまいました。
 出発時の気温は零下5度、日中の最高時は20度もあり、当然そのようになります。雪盲が恐いのでサングラス、日焼け止めクリーム、手袋は軍手でもOKです。

<行程>
4月28日
  浜田さん・古園さん・常盤の3人は、予定どおり8時13分に大月に到着。御殿場から
 マイカーで 着てくれた臼井君と合流して、すぐに出発。大月ICから中央高速、長野自動車道
 経由で松本ICは10時ころだった。時間が惜しいのでそのまま休まずに新島々まで行き、
 コンビニで食料など購入して沢渡の駐車場11時ころ。タクシーに乗ってしまえばわずか20分で
 上高地駐車場だ。
  集合した大月では、ほんの少しだけ天気雨が舞っていた。中央高速走行中に本格的な
 雨がやってきては止み、沢渡は幸い曇りだったが、上高地が近づくと曇天はいよいよあやしく
 なってきた。そして釜トンネルを抜けると、なんとみぞれ。さらに大正池あたりでは本格的な
 降雪となり、上高地バス停付近は吹雪模様だった。
  我々は登山用の雨具があるのでそれほど問題ないが、観光客の人たちは傘かビニールの
 合羽程度の持ち合わせしかなく、ずいぶん寒い思いをしたであろうと察せられる。濡れながら
 パッキング、整理をして、12時20分ころスタートした。
  暖冬だったせいで残雪は少なく、横尾までの路面は概ねドライ。水溜りこそあったが、靴を
 濡らして冷たい思いをすることはなかった。横尾まできっちり3時間、一ノ俣まで1時間、
 そこで持参したビールをビニール袋に移し、雪で冷やしながら歩いた。槍沢ロッジに17時10分
 到着。食事が18時からということで、ちょうど良い乾杯タイムとなった。20時ころ就寝。

4月29日
  3時17分に目が覚める。臼井君が持参した日本酒を独り占めして飲んだらしく(覚えてない)、
 なんだかにおう。日本茶とカップヌードルという簡単な朝食。1時間くらいで出発できるかと計算
 していたが、なんやかやと1時間半もかかってしまった。
  4時48分出発。天候はピーカン、気温が低いので耳を覆う帽子と手袋、ヘッドランプはもういらない。
 かつては、 槍沢ロッジ周辺から槍ヶ岳を見ることはできなかったが、樹木が倒れたためか、小屋から 
 200メートルほど先の丘から穂先が望めるようになった。
  2001年にも同じような日程で槍ヶ岳に登った。その時も翌朝は上天気で気温が下がり、雪面は
 かりかりに凍っていた。まるでコンクリートの道路のよう。足あとが無数についているので、滑りにくく、
 ただただすたすた歩くことができた。
  ところが今回は、前日20センチ〜30センチくらい積雪があった模様。先行者がいたのでラッセルを
 強いられることこそなかったが、一歩一歩が雪に埋まって重い。馬場平から大曲りを過ぎたあたりで
 かなり息があがってきた。槍沢のはるか前方には何人か人影が見える。モレーンの急斜面が思い
 やられる。槍ヶ岳の穂先がだんだん近づいてくる。
  急斜面・緩斜面を3セットほどこなすと殺生小屋だ。最後の急斜面を控えて一息入れる。スキーと
 スノーボードのシュプールが美しい。ああ、今度はスキーを担いで来たいね。夏はジグザグに登る
 斜面だが、この時期はとにかくまっすぐに登る。100メートル歩いては立ったまま休憩、これを4回
 繰り返して槍の肩にたどり着いた。
  さて穂先であるが、「おどろおどろしく氷の鎧をまとった化け物」だった。登るためには、ダブル
 アックス、12本爪出歯アイゼン、確保用ロープ、それに何より氷壁を登る技術が必要だった。
 肩から穂先本体まで50メートルほど槍沢上部のトラバースがあり(夏ならランララランと3分で通過
 するようなところ)、先行の3人組が通過していたが、その50メートルに10分くらい要していた。
  肩に登りついたのが9時半、10時半ころまでおよそ1時間ほどゆっくり過ごした。この時間に
 涸沢岳で滑落事故がおこっていたらしいが、そんなことは知る由もない。ふと穂先を見ると、さっきの
 人たちが頂上下の雪壁で苦闘しているではないか。登らないで良かった。
  あとは下山だけ。尻セードを楽しみにしていたが、雪が深くて思ったように滑ってくれない。
 歩いたり駆けたり、1時間半で槍沢ロッジに到着した。急いで支度をして12時半出発。横尾14時、
 上高地16時50分、足がしびれてもうへとへと。17時タクシー乗車、17時20分沢渡、17時30分
 発車。心配していた下りの渋滞は杞憂に終わり、18時20分松本IC、大月に20時過ぎに到着した。
 中央高速はこの先渋滞だったが、臼井君と車は御殿場に帰り、3人は電車で八王子へ。
 恒例の反省会を実施し、終電近い電車で帰宅した。                       

常盤 豊(S51卒)