◆2008年 夏の山行(白馬岳)の報告


 夏の山行に参加された皆様、お疲れ様でした。大きな事故が続いている白馬岳ですが、今回は大きなケガをされた方などもいらっしゃらなかったようで何よりです。

 さて、参加者の皆様から山行記録を頂いていますので、こちらに紹介いたします。山行記録を作成してくださった皆様、ありがとうございました。


 @8月9日(猿倉から白馬尻)・・・臼井君よりご報告頂きました。
 A8月10日(白馬尻から白馬岳〜白馬三山〜天狗山荘)・・・中村(明)さんよりご報告頂きました。
 B8月11日・B班(鑓温泉)・・・中村(陽)さんよりご報告頂きました。
 C8月11日C班(不帰の嶮)・・・諏訪さんよりご報告頂きました。
 D白馬大雪渓で落石事故を目撃・・・常盤さんよりご報告頂きました。


 @8月9日(猿倉から白馬尻)
うっしゃあです。
2008年野歩の会OBG夏合宿のレポートです。

8月9日(土)、JR大糸線白馬駅 現地集合
これに合わせ、総勢20名が集まりました。
まずは11:00、若輩者(…か?)4名をのせた常盤号が駅に到着、ここで早くも水掘夫妻と合流しました。
 続いて11:30、あずさ3号組の到着、そのあとの50分、今度は新幹線〜長野;バス組が合流。
 そして最後に、名古屋から茂福さんの到着、これにて全員集合です。


 移動はタクシー使用。……とはいえ、さすがに20名全員が乗れるタクシーなどはなく、もちろん分乗。4人5班に分かれてタクシーで移動しました。タクシーに揺られて15分ほどで猿倉に到着、これが大体12:30頃でしょうか。

 ここで各自、出発の準備や登山届けの記入、あ、それからみんなで白馬尻小屋の宿泊者名簿まで書いて、猿倉スタートは12:50となりました。
 当日の宿泊地、白馬尻小屋までは約1時間ほど。そのうちの半分くらいはほぼ平坦な林道です。気持ちよく晴れた……イヤ、あっついくらいの日差しの中、それでも開放的な自然を楽しみ、みんなでワイワイしゃべりながら歩きました。
 途中にある小川を木の橋で渡ってからはだんだんと山道らしくなってきます。やがて周りの木立も迫って道幅もせまくなってきます。

 小屋まであと10分くらいかな〜ってところで小川に差し掛かると、一部の面々がザックを降ろし、荷物を取り出す。何を取り出したかというと……ビールです!もちろん冷やします!!総数48本!!!×350ml!アンド冷酒パック2Lプラス芋焼酎(紙パック2L)!!!!……どんだけ??

 5分ほど流水に浸して……あんまり冷えなかった……_| ̄|○
 敗因は、思ったより沢の水が冷たくなかったためかと……

 ともあれ、14:10分頃には白馬尻小屋に到着、目の前に広がる大雪渓からはひんやりと涼しい風が吹いていました。これで初日の行程はすべて終了です。

 到着して一息ついた我々は、そのまま小屋の前のベンチで遅い昼食とも早い夕食ともつかない宴会に突入。大丈夫、酒ならあります!冷えてない分は……小屋の水で冷やしました!
 「うっしゃあ、雪渓まで行って冷やしてこい」
 え〜〜〜〜っΣ(´Д`;)
 ……半分冗談でした。半分は……(汗)

 食事のほうも抜かりなし。あらかじめ先行していた車組が、小淵沢の駅に立ち寄り、駅弁を調達済みです。
 そんなこんなで15時半頃まではやっていたと思うのですが、だんだん雲行きも怪しくなり、大雪渓から吹く風もひんやりから肌寒くなってきたので大宴会もお開き。あとは本日宿泊の部屋に移動しましょう。

 今回は予約済みだったこともあって、宿泊棟の3階を貸切だー、わーい!
 って……アレは部屋というより屋根裏だと……
 それでもみっちりとすし詰めの状態で眠るような狭さはなく、ある意味ではらっきーではありました。ただ若干、風通しが悪いのと日差しで屋根が焼けたのかやたらと暑かったのを除けば。

 なんて事をいいながらも、いつの間にやらここでも2次会が始まったのですが。
 とはいえ、早くから飲み始めたせいもあってか、早々にダウンする人も居り、消灯21時にもかかわらず、ほぼ全員19時過ぎには就寝しておりました。ZZZZZ……

以上、初日報告おしまい

 A8月10日(白馬尻から白馬岳〜白馬三山〜天狗山荘)
05:10 白馬尻小屋出発
05:25 雪渓入口到着 アイゼン装着15分
06:45 モレーン休憩15分
07:03 落石事故
07:50 ねぶかっ平休憩15分
08:40 休憩10分
09:20 小雪渓休憩15分
10:05 村営宿舎休憩50分(昼食)
11:38 白馬岳山頂12分
12:20 村営宿舎25分休憩
13:32 杓子岳手前休憩13分 
      5名(田中さん、石井さん、臼井さん、諏訪さん中村(明))杓子岳山頂へ
14:25 白馬鑓途中休憩10分
15:10 白馬鑓ヶ岳休憩20分
16:20 天狗山荘休憩

天候に恵まれた1日でした。
大雪渓渋滞を避け、朝食をお弁当にして落石事故にも巻き込まれることなく行くことができました。
白馬大雪渓を登り、白馬三山 白馬岳、杓子岳、白馬鑓ヶ岳を制覇することができ、白馬を満喫しました。
また、疲れた後の天狗山荘の夕飯は最高でした。

 B8月11日・B班(鑓温泉)
BグループはCグループと同じ時間に天狗山荘を出発しました。
急な坂を降り、くさり場を通って、鑓温泉小屋に到着しました。
鑓温泉小屋では、温泉につかったり、足湯に入ったりして約1時間休憩。まだ午前中でしたが、天狗山荘から持ってきたお昼ごはんもここで食べました。天狗山荘の食事はお弁当であってもおいしかったです。
その後、ひたすら下り続け、途中で雪渓を2度渡り、「落石注意」とある監視員のいるガレ場を通りました。
標高が低くなるにつれ、温度・湿度が上がり、ビール目標にひたすら下りました。
1日目に通った林道に到着したら、ビール飲みたい組はあっという間に猿倉荘にかけ下り、ビールをゲット。
遅い組は猿倉発の15時半の最終バスにぎりぎりの時間に到着したので、残念ながらビールはゲットできませんでした。
そして、やっと八方にバスで到着しました。

 C8月11日C班(不帰の嶮)
到着 出発  場所
6:42 6:55  天狗山荘
- 7:20  天狗大下り(すぐにきわどい鎖場)
8:22 8:35  大下りの下のコルで休憩
9:02 9:15  一峰下で休憩
10:13 10:35  二峰南峰
11:12 11:23  唐松岳
11:38 12:20  唐松岳頂上山荘(カップヌードル450円)
13:50 14:05  八方池
- 14:40  八方池山荘
- 15:20  八方
- 15:30  斉藤さんよりTEL入る
15:40 -  中村屋旅館

0歳のときから高層マンション(といっても10階建ての団地)の10階で育った私ですが、高いところが苦手、高い建物を下から見上げるだけで足がすくむ、真の高所恐怖症です。

なので、山に入るまでは・・・クサリ、ハシゴが連続する岩場なんて怖いに決まってるじゃん。山登りも素人だし。C班に誘ってもらえたのは光栄だけど「ちょっと・・・パス・・・だな。」と思っていました。
しかし、連日の長時間歩行(?)の後で「C班は最後、八方尾根をリフトで下るから楽ちんだよ。」と甘い言葉(?)に誘われて足を踏み込んでしまいました。不帰の嶮に。

が、しかしチャレンジしてみたら意外と・・・余裕?!でアスレチックではしゃぐ子供のように、というのはオーバーですが、童心に返って楽しむことができました。
岩場の切れ目にひっそりと咲く草花がキレイでした。ひと岩越えたときの風がとても気持ちよかったです。なお、二峰最初の下りで足がすくんだのは内緒です。

お昼は唐松岳頂上山荘の食堂で食べるという計画だったのですが残念なことに山荘は環境整備?のため工事中で、食堂が休業中でした。しかたがないので、山小屋外のベンチに一列に座り「カップラーメン」「菓子パン」などモソモソと頂きました。

その後、テクテク順調に山を下り、八方のリフト乗り場に到着!
ビールを飲んで・アイスを食べて→ヘロヘロ状態でリフト乗車→中村屋到着→お風呂→ビールビールビール・・・


今年も素敵な思い出を沢山ありがとうございました。また来年も是非参加させてください。

 D白馬大雪渓で落石事故を目撃
 白馬岳大雪渓、その全長はおよそ2000メートルと言われています。白馬尻小屋から500メートル、15分ほど通常の登山道を歩いて雪渓に降り立ちます。雪渓のスタートからしばらくはなだらかで、右から三合雪渓を迎え入れます。次第に傾斜がきつくなり、三合尾根をすぎると続いて四号雪渓。ふたたび緩傾斜となり、前方にモレーン状の岩屑の小山が見えてきます。このモレーンを通過すれば残り500メートルで終点の葱平(ねぶかっぴら)。しかし盛夏をすぎると雪渓上部はクレバスが発達し、手前200メートルのところで右の斜面に取り付くように導かれます。なお、雪渓を通過するのにコースタイム2時間ということですから、1時間で1キロ、30分で500メートルくらいのペースで歩きます。
 
 山小屋の食事は5時か5時半からとだいたい決まっています。私たちが泊まった白馬尻小屋は5時からであったようです。当初の計画では小屋の朝食を普通に食べるというものでした。4時半起床、食事開始の10分ほど前に食堂の前に並べば、一番で食事にありつけます。人間目覚し時計の私がいっしょですから、必ずそのようにしたはずです。5時15分食事終了、洗面などを済ませて5時40分小屋の前に集合というところ。集合写真を撮って、きりの良い時刻、6時出発でほとんど間違いないでしょう。
 雪渓に降り立つまでおよそ15分、そこでアイゼンを装着するのに15分ほどを要します。そうすると6時半から雪渓上を歩くことになります。ということは雪渓入口から500メートルのその問題の地点に到着するのが7時前後という計算になります。

 山行の一週間前の例会で、和田則昭さんから「通常の出発では雪渓で渋滞に巻き込まれる可能性が高い、弁当にして早めに出発すべき」との申し出がありました。梅干と漬物が嫌いな私は山小屋の弁当が苦手なのです。しかし先輩の忠告には抗うこともできず、数日前に予約変更の連絡を入れたのでした。
 4時半に弁当が用意されました。案の定まずいおにぎり2個、それも歯が折れそうな硬いご飯。梅干と小さなタラコ、漬物、ウィンナソーセージ、揚げ物。だから言わんこっちゃない、私は半分くらいしか食べられませんでした。
 小屋の前で集合写真を撮ったりして、出発は5時10分です。ところが歩き始めてほんの2〜3分、揚げ物でムカムカし、嘔吐です(うしろのほうにいたので、皆さん気づかなかったかもしれません)。まあこんなことは何度も経験しているのでたいしたこともなく、先頭に遅れること5分で雪渓入口に到着しました。
 思ったとおりアイゼン装着に手間どり、5時40分に歩き出すことになりました。先頭をリードしたのは平石さんですが、ゆったりしたペースで進みます。途中の急傾斜をすぎても休む気配がありません。SLOW & STEADY は案外はやく、6時45分にモレーンに到着しました。ここで15分休憩、7時からふたたび歩き始めます。あと300メートルで雪渓は終わり、そこからは葱平へとむかいます。
 その時です、正確には7時3分か4分。右の方からドドーンと音がしたような気がします。直後に「ラーク」というコール。落石です。まずは前方に注意、上から落ちてくるのではないようです。時計の反対まわりに体をひねると、四合雪渓のあたりから黒い大岩が転がってくるのが見えました。その大きさについては各自の印象まちまちですが、私には軽自動車くらいの大きさに見えました。縦・横・高さ2〜3メートルくらいの巨大なジャガイモのような形状です。大岩は数秒後に大雪渓の上に降り立ち、ゴロゴロと回転しながら落下していきます。雪を巻き上げながら、シューシューという音を立てていたような記憶があります。
 登山者は大雪渓の右岸(杓子岳側)にそった紅ガラに導かれて歩きます。したがって、大岩が雪渓に降り立ったあたり(左岸)に登山者はいません。しかし大岩はさらにスピードを増しながら雪渓の中央へとむかってきます。さらに左右、S字を書くように蛇行してきます。私たちは上から見ていたので、さほど危機感はありませんでしたが、大岩がどんどん迫ってくる状況だった下方の登山者の気持ちは、どのようなものだったのでしょうか。
 何十人かの登山者の脇を通り過ぎた大岩はついにターゲットを決めました。雪渓入口から500メートル、私たちから1000メートルの場所に5〜6人の登山者が散開していましたが、この人たちは上手に回避。ホッと胸を撫で下ろしかけた直後、その下方20メートルほどの場所に4〜5人が横に並んでいたのです。必死に(そのように見えました)左右にわかれて逃げましたが、右から2人目の人に接触したか、寸前かわせたか、どうか。
 直後、縦だった人影が横になっていたように見えました。まわりの人たちはまったく動きません。どうも接触した可能性のほうが高そうだけれど、ケガですんだのだろうか、それとも。それにしても、まわりの人たちはなぜ集まってこないのでしょうか。なんでもなかったのか、5〜6分が経過してもまったく動きがありません。
 釈然としないまま、私たちは動き出しました。雪渓が終了し、アイゼンをはずしている時、ヘリコプターが飛来するのを見ました。事故から30分くらいでしょうか。現場から白馬尻小屋へと通報に走り(携帯は使えません)、そこから連絡が行ったのでしょう。けが人を収容し、すぐに飛び去りました。しばらくすると、上の小屋から昭和医大のネーム入りシャツを着た人3人が、ものすごい勢いで駆け下っていきました。さらに小屋の手前でグリーンパトロールの人に行き会いましたが、事故の詳細は教えてくれませんでした。死亡を知ったのは、村営宿舎のテラスです。事故の顛末を無線でやりとりしており、様子が耳に入ってきました。即死でした。まわりの人たちが動かなかったのは、降ってわいたあまりに無残な出来事に、凍り付いてしまったのがその理由かと思われます。

 今回、登山届はきちんと提出し、保険にも加入していただきました。しかし万一(いや、万分の一でなく、二分の一くらいその可能性があった)この立場であったら、どのような対処をしていたのでしょうか。考えれば考えるほど憂鬱にさせられる事故でした。