◆自主ワン 熱血富士登山


 日程:平成21年9月12日(土)〜13日(日) 

 参加者:平石、石井、和田則、北島、浜田、常盤、
      常盤佳(おかん)、藤沢千(長女)、藤沢(婿) 
     



 昨年は9月21日〜22日に行った富士山、今年はその2週間前に登ってきました。昨今の富士登山ブームは相当なものがあります、槍も穂高も眼中になく、とにかく富士山という勢いです。来年登る方もいらっしゃるかと思いますが、お役にたてるかどうか、昨年との比較をしながらご報告です。

 富士山は、山開きが7月上旬・閉山が8月末ということであり、9月に登るのは熟達者と言われています。そのためこの2ヶ月に40万人もの方々が集中し、まともな登山は到底不可能です。計算すれば1日平均7000人ということになり、お盆・土日に集中することを考慮すると、ひどいときは2万人くらいになるのではないでしょうか。

 最も人気の高いのが河口湖口(吉田口)であり、これも推定ですが、集中日には15000人くらいの老若男女がこのルートで頂上を目指すことになります。ほとんどの方がご来光目当てですから、午前3時ころから5時ころに1万人ほどが八合目から頂上にかけてじゅずつなぎになります。ひとり50センチ幅とすると、なんと20キロとなります。20キロは大げさでしょうが、頂上から七合目あたりまで、小屋を出たらずっと渋滞、零度前後の気温と強風。ご来光に間に合うためには12時前に小屋を出る必要があるそうです。およそ5時間、寒さと強風にじっと耐えねばなりません。そこで初秋の富士山がお奨めなのです。

 さて昨年と2週間の差があったためか、今回は最初の予約からつまづきました。8月にバス、山小屋の予約を済ませました。9月に入ってから追加1名のご希望がありましたが、バス・小屋ともに予約がとれないのです。バスには代替手段がありますが、小屋が満員ではどうしようもありません。不本意ながら参加をお断りすることになってしまいました。

 富士山の登山道は4つあります。河口湖口(吉田口)、富士宮口、須走口、御殿場口です。河口湖口と吉田口はかつて別の登山道でしたが、スバルライン開通で一本の道になってしまいました。六合目から下が河口湖口登山道、上が吉田口登山道のようですが、以下は河口湖口に統一します。

 河口湖口は交通が便利であり、山小屋の数が最も多い登山道です。ツアーはほとんどがここの往復です。登山道と下山道が分かれています。本八合で須走口登山道と合流します。シーズン中は殺人的な渋滞に見舞われます。五合目の標高は2300メートル。

 富士宮口、五合目の標高が一番高く、最も楽に頂上に立てる登山口です。五合目の標高は2400メートルです。富士山特有のザラザラ、砂地が少なく岩場が続きます。登りやすい道ですが、ここを下るのはけっこう辛いです。膝に優しくない下山道となります。公共の交通を使うと、ここまで交通費が高くつきます。

 須走口、五合目の標高は2000メートル。河口湖口、富士宮口とくらべて300〜400メートルほど低いため、登り1時間半、下り1時間ほど余分にかかります。登山者は少なく、静かな道です。下部は砂走りと言われる砂礫帯であり、慣れた人はとても楽に下れます。ハイシーズンは、本八合で河口湖口合流の渋滞に巻き込まれるそうです。

 最後は御殿場口です。標高1400メートルから登ります。登山口から頂上まで2300メートル以上あり、本邦最大の標高差です。たぶんかつてのメインルートであったと思いますが、今はひどいすたれぶりで、営業している小屋も少なくなっています。富士登山駅伝をご覧になった方もいらっしゃるかと思いますが、あれはこのルートを使っています。大砂走りを豪快に下ります。たすきを渡したあと、数メートル転がってやっと止まります。

 昨年は河口湖口から登って、御殿場口へと下りました。大砂走りは予想通り楽しい下りでした。しかし今回は初心者もいることだし、御殿場口ルートの標高差を避けて、河口湖口〜須走口としました。なお、数年前に野歩の会の先輩方と富士宮口往復を致しました。下山時に大雨となり、岩尾根の下りのつらさもあってAB先輩(特に名を秘す)からは、今でも「ひどい目にあわされた」とうらまれています。

 新宿〜河口湖口五合目のバスは2600円、とてもリーズナブルです。またトイレ付きですから安心です。7時に西口に集合し、7時45分に出発しました。天候が悪いせいかほとんど渋滞もなく、予定通り10時すぎに五合目に到着しました。昨年は外人ばかり目立ちましたが、今年は日本人ばかりでした。2週間の差でしょうか。

 五合目では小雨模様だったので、バスの中で雨具着用(私たちだけでした)、休憩所で準備を済ませ、いよいよ出発です。15分ほど下り、泉ヶ滝というところから登山道です。天候は小雨ときどき曇り、そしてひどい突風。今回はHRIS先輩(名誉のために特に名を秘す)の調子が悪く、みなが40分歩いて待っていると20分後に到着という具合です。まあみんな中高年ですから仕方ないですよね。

 幸いなことに、雨量は多くなかったのでびしょ濡れにはなりませんでしたが、とても寒かったです。気温5℃、最大風速20メートルくらいでしょうか。それでも大きな障害もなく、午後3時すぎに標高3250メートルの「元祖室」に到着です。初日になるべく上の小屋に泊まりたいという思いでこの小屋を選びましたが、高度障害を避けるためには、もう少し下の小屋のほうが良かったかもしれません。

 富士山の小屋の従業員は有無を言わせません。マニュアルどおり、正確に、必要な説明をペラペラしゃべります。耳を傾け、説明に従わないとこっぴどくしかられます。質問などはもってのほかです。私たちは無事関門を突破し、3時半から酒盛り、4時半からまずいカレーの夕食となりました。

 食事タイムは4時50分ころまで。5時から2回戦の模様です。5時半には寝てしまいましたが、夢の中で6時ころ4回戦が始まったようにゆらゆらした記憶があります。昨年はたしか2回戦くらいで終わりだったように記憶していますが。

 さて翌日、2時10分に電気がつきました。みんな急いで出発していきます。私たちはゆっくりしたくして3時10分出発としました。ほとんどびりでした。出発時には渋滞なし。ところが昨日ブレーキになったHRIS先輩がこの日は大ブレーキ。エベレストサウスコルから無酸素で頂上に向かうアタック隊のようです。それでも3時間もあれば着きますから、あせることはありません。

 泊まった小屋は八合目、つぎが本八合、そのつぎが八合五勺、さらに九合目、頭の上に頂上が見えていますが、とてつもなく高く感じられます。時刻は5時を過ぎて、いよいよご来光の時間です。出発時には快晴で、月が煌々と光っていましたが、このころになると東にいやらしい雲が漂いだしてきました。どんどん明るくなるのに太陽は姿を見せません。予定の5時半はとっくに過ぎました。残念ながら今回はご来光なしでした。

 ひーはー、ひーはー、6時ころ頂上部分に到着。寒い寒い。お釜を覗き、その向こうには本邦最高点剣が峰が見えています。調子の上がらないHRIS先輩と、高度障害で頭痛・嘔吐の長女と3人で下山することにしました。先輩はこれまでに2度剣が峰に立っているので、今回は「まっ、いいか」という感じ。うちの長女はちょっと残念だったけれど、気分の悪さには勝てません。

 私は剣が峰に行かなかったので、詳しいことはわかりませんが、剣が峰直前の「馬の背」は予想通り青息吐息だったそうです。富士山の場合、この剣が峰に登ったか否かで満足度がずいぶん違うようです。槍ヶ岳で肩の小屋、奥穂高で穂高岳山荘、白馬岳で白馬山荘までといった感じなのでしょう。

 高度障害で具合の悪くなった長女ですが、予想通り高度を下げることで調子を取り戻し、3000メートルあたりではなんともなくなりました。砂走りを経て須走口登山口に到着したのが8時半。みんなが下りてきたのが10時45分。2時間以上待つことになるのですが、ここの山小屋はとても感じよく、食べ物も美味しかったことを付け加えておきます。

 須走口五合目から御殿場へ向かうバスは、8時半、9時半、10時半、11時と大変便利です。マイカーで同じ登山口に下りてくる場合は仕方ありませんが、公共交通の場合はぜひ須走口への下山を推奨します。なお私たちは人数がそろっていたので、タクシーで御殿場の「御殿場温泉会館」に向かい、入浴後再びタクシーで御殿場駅へ。ラーメン屋で反省会後電車で帰りました。

 富士山のハイシーズンは、個人では小屋の予約ができないと聞いています。すべて旅行会社が押さえているのだそうです(今年登山した知り合いから聞いた風聞ですので、確かであるか不明)。9月のこの時期も、8月後半なら予約可能でしたが、9月上旬にはすべての小屋が満員・宿泊不可となっていました。常識を変えなければなりません。

 前にも書いてありますが、小屋では完全にルールに従わなければなりません。少しでも口答えをするとビンタが飛んできます。昔の軍隊なみです。ただそれを理解すれば、言われているほど窮屈な思いはしないで済みます。寝床はひとり畳半分くらいありますので、まあまあ十分です。カレーはまずくても福神漬け、ラッキョウが食べ放題。おかずのほとんどない朝食はふりかけ持参で対処できます。

 トイレはきれいです。小屋ごとにあって利用可能、心配ありません。1回200円かかりますが、それくらい仕方ないです。ただしこの時期は本八合の小屋が最後です。頂上まで1時間半、お鉢めぐりに1時間、戻ってくるのに1時間。おしっこの近い人はここで必ず済ませておくことです。殿方の場合「どこでもトイレ」といきたいところですが、人が多く、登山道からはずれることが出来ないので、非常手段を使うには相当な勇気がいります。

 いかがでしょうか、ちょっと大変だけれど富士登山。また来年も行きましょう。最後にこれまでの経験で最もコストパフォーマンスの高い登り方のご紹介です。まだあまり混まない山開き直後がおすすめ。夕方に参加者が集合し、山麓で車の中またはテントで一泊します。朝3時ころ五合目に行き、頂上まで5時間、お鉢めぐり、下山に4時間。お昼ころ下山します。そのまま帰れば3時ころ帰宅できます。1000円札何枚かで済ませられます。
 
                      

常盤(S51)