◆佐渡、花の山旅 報告


  日程:平成22年5月29日(土)〜30日(日)     
 



 越後の春日を経て、今津へ出る道を珍しい旅人の一群れが歩いている。母は三十歳を踰えたばかりの女で、二人の子供を連れている。姉は十四、弟は十二である。それに四十ぐらいの女中が一人ついて、くたびれた同胞二人を、「もうじきにお宿にお着きなさいます」と言って励まして歩かせようとする。

 はて、気付いた方もいらっしゃることでしょう。この4人は岩代の信夫郡から筑紫へと向かう途中です。つまり福島県から福岡県に向かっています。野歩の会で私の同期、二瓶君のお住まいは福島市信夫山のふもとです。二瓶君宅の近所から、新潟県上越市(春日)を経由して都(京都)から福岡(多分大宰府)に行くことになっています。たぶん郡山に下って、磐越西線沿いに会津経由で新津・長岡へ、そこからは信濃川をさかのぼるように飯山線沿いに長野に出たのでしょう。すでに善光寺は出来ていますので、きっとここでお参りを済ませたはずです。さらに一行は信越本線沿いに、高田(春日)から直江津(物語では直江の浦)へと向かうのです。
 そして事件はこのあたりで起こります。直江の応化橋で、一行は山岡大夫という人買いに騙されて、売り飛ばされてしまうのです。母の名は玉木、姉は安寿、そして弟は厨子王なのでした。
 安寿と厨子王は丹後へ、母は佐渡へ、離ればなれになります。姉弟は山椒大夫のもと、塗炭の苦しみを味わいます。何年もの時が経過し、姉弟は天啓を得て母に会うために脱走しようとします。安寿はその途中で命を落とします。
 やがて京へ出て出世した厨子王はついに佐渡へ渡り、年老いた母と再会するのです。「安寿恋しや、ほうやれほ。厨子王恋しやほうやれほ」。そして物語の結末は以下の通りです。

 女は雀でない、大きいものが粟をあらしに来たのを知った。そしていつもの詞を唱えやめて、見えぬ目でじっと前を見た。そのとき干した貝が水にほとびるように、両方の目に潤いが出た。女は目があいた。「厨子王」という叫びが女の口から出た。二人はぴったり抱き合った。

 佐渡に行ってきました。朱鷺と金山とジェンキンスさん、そしてお花畑の島。しかしだんだんとわかってきたのですが、佐渡は流刑の地としてたいそう有名な島なのでした。承久の乱に敗れた順徳上皇、日蓮上人、世阿弥も佐渡に流されています。

 東京7時発のMaxとき303号、E4系流線型の美しい列車です。8時58分に新潟着、万代口からバス15分で新潟港に到着。10時のジェットフォイルに乗船すれば、わずか65分で佐渡・両津港へ入港です。

 昼飯を済ませ、レンタカーぎゅう詰めで観光に出ぱーつ。まずはなんたって金山。たいしたことないと聞いていましたが、人形がリアルで案外グットな印象でした。「早く外へ出てーよう。なじみの女に会いてーよう」、何度も何度も同じせりふを繰り返すのです。あああ、頭にしみこんでしまう、「ディズニーランドのイッツアモールワールドみてえだよう」

 次は尖閣湾。何の知識もなかったのですが、絶景の海岸だそうです。しかし、海岸に出るにはお金がかかります。おかしいじゃありませんか。むこうから観光客風のおっさんが近づいてきました。「みなさん、船に乗ったほうが良いよ。船の中からこーんな大きな魚が見えるよ」。どうも怪しい、おっさんは観光客ではなく、観光船の船長のようでした。団体に近寄ってきて営業しているのですね。早々に出発。

 次は酒蔵、真野鶴という有名らしいブランドの尾畑酒造。試飲可能ということで、酔っ払いの団体客がふらふらしています。ここに取材に訪れた芸能人の写真が何枚も張ってあります。と言っても、もんきっきーとか、つるの剛士とか。しかしそればかりではありません。なんとローマ法王ヨハネパウロ2世の写真が、唖然。こんな田舎にローマ法王が来たんだって?そんなことないですよね。ここの社長がローマ法王に謁見した(それでもすごい)時の写真なのでした。うまく騙してくれたものです。誰もがここに来たと勘違いしてしまいます。

 最後は佐渡歴史伝説館、ジェンキンスさんだぞう。駐車場に車を止めて、正面から入ろうとしました。入場料700円、ちょっと高いです。でも、裏口から入ればただなんです。“出口”を無視してズンズン進みます。いましたいました。「はい皆さん、ジェンキンスさんです。それではジェンキンスさんと集合写真です。握手もできまーす」売り場主任のようなおじさんが手際よくさばきます。ほんの10分で私たちだけで30000円くらいのお買い上げ。たいしたものです。その間ジェンキンスさんは無言、無表情(日本語はできません)。これは如何なものかという先輩もいらっしゃいましたが、まあノー天気にお土産をゲットしました。

 泊まったのは佐渡シーサイドホテル。私が幹事を勤めさせていただいて、初のホテルです。すばらしい。部屋に鍵もあるし、テレビも100円入れなくて映ります。ただし、畳はブヨブヨで床がぬけそうだし、タオルはくれないし、浴衣の襟は擦り切れているし。7500円、2食付き、刺身も生臭くなかったし、登山口までのお送り、帰りの入浴も無料ですから悪くないです。

 というわけで、翌朝は6時朝食、6時45分ホテル前集合、アオネバ登山口まで宿の車で送ってもらい、登山に出発したのでした。天候は曇り、道は粘土質でねちょねちょ。お目当ての花ですが、シラネアオイ、カタクリは10日ほど前なら最高だったでしょうが、ほとんどしおれていました。オオイワカガミはそこそこきれいでした。ドンデン山あたりまで来ると次第に雲が切れてきて、ようやく佐渡の前景を見ることができました。日本海のブルーは確かに美しかったです。

 さて、そろそろ帰らなくては。私がタイムキーパーですので、時間にはやけにうるさいのです。13時40分に宿に戻り、14時半まで入浴、両津港15時到着。またここでビールだ、日本酒だで1時間を過ごし、16時30分のジェットフォイルで新潟へ。そこからもタクシーでスムーズに移動です。

 帰りの新幹線Maxとき344号は、朱鷺色の帯のペインティング・E1系の列車です。新潟からの新幹線、大事なことです。指定券は不要です。まず絶対座れます。ただし、自由席の2階は3人掛け×2、リクライニングなしという、非人間工学に基づいた設計です(自由席でも、1階の席は3人掛け+2人掛け、リクライニングあり)。景色を眺めたい人は2階へ、寝たい人は1階へ行きましょう。越後湯沢からは富山方面からの乗客が乗ってきますので混んできます。1階に席を確保しておいて、しばらく2階で景色を楽しみ、越後湯沢の手前で1階に下りる作戦がベストと思われます。

写真はこちらです。 
                      

常盤