◆「丹沢・大山北尾根」報告   

  和田(則)さんから自主ワンのご報告を頂きましたので紹介いたします。

 
日 程:平成24年2月11日(土)朝晴れ後曇り・微風

コース:小田急秦野駅=(バス)=ヤビツ峠−地獄橋−北尾根−大山−下社−ケーブル=(バス)=小田急伊勢原駅

同行者:阿部、佐藤、三木、斎藤ご夫妻、石井(啓)、星川、和田(則)(記)



  • この日は風が強く気温も低いと考えていたが、寒くなく風もない穏やかな冬の日であった。欲をいえば、もう少し日差しがほしかったし、富士山を眺めたかった。バスがヤビツ峠まで入ったので当初のコースを歩いた。北尾根上部には十分雪があり、ひと気の少ない、雪道から山頂をめざした。大山山頂からは時間の余裕をみて下社へ下った。
    破線コースの北尾根にも最近は団体客も入っていると言う。しかし、冬だから落ち着いた雪の山登りができた。陽光の下の稜線歩きではないので、ある程度アルバイトはあった。北尾根は落葉広葉樹林の尾根なので、新緑や紅葉時の下山ルートにもよいと思う。


  • 小田急線の車窓から眺める丹沢、その東面山肌は一様に白かった。大山の南面は最上部が白くなっているほか地肌のまま。1月22日の降雪から日がたち、週初めの雨も雪にはならなかったようだ。事前に交通機関に確認したところ、ヤビツ峠行きバスは運休との返事で、タクシーでヤビツ峠まで入るつもりでいた。ところが早めに着いた秦野駅からバスロータリーに下りると、ヤビツ峠行きバスが止まっていた。この土日は運行するとのこと、みんな揃ってあわててバスに乗り込む。バスは満員で出発。
    バス車中から二度、植林帯の中でライフルを肩から下げ微動だせず樹木に立姿勢のハンターを見つけた。シカ狩りであろう。シカが通るまで樹木になりきり、辛抱強く待つ仕事。バスがヤビツ峠に近づくと、外の気温が低いのだろう、窓ガラスが急に曇った。斜面にも雪が残り始めた。ヤビツからは山の世界なのだ。


  • ヤビツ峠から塔ノ岳に向かった若者1名を除き、我々以外の登山者は全員大山に向かった。峠の気温は0℃、日中は山中で3、4℃だった。峠から沢沿いの登山道を下ろうとしたが、雪のつき方が中途半端で暗い感じ。林道を歩くことにした。林道は除雪されており、車が通行していた。丹沢名水の取水場を横目で見て、ひと気のない青山荘を通り過ぎると、ミツマタの白いつぼみが目につく。


  • 地獄橋を渡った右手斜面に、北尾根の登山口案内板があった。熊出没の注意書きもあった。この時期は冬眠だろうが雪が少ないのでそうとも限らない。念のためクマ除け鈴をザックに括りつけた。登り口周辺には雪はなく、道は不明瞭であった。尾根を直登すればよいので、ミツマタ畑の苗木に気をつけグイグイ登った。4年前の春に大和田さんと北尾根を下ったことがある。当時の登山地図には登山口への最後の下りは尾根の南側をトラバースするルートで、そのとおり登山道もつけられていた。そのトラバース道が幅数メートル崩れており、通行に難儀した。その後ルートは屋根上に変更されたようだ。


  • 所々に雪が残っている落葉樹林帯をまっすぐ登る。送電線の巡視用階段は登りやすく得した気分だった。送電鉄塔が近づくと尾根は緩やかになり、左手の梢の先にヨモギ尾根や、樹林に白い山肌の丹沢山と丹沢三山が望めた。丹沢山は南面も真っ白だった。丹沢の最高峰はさすが厳しい顔をしていると勝手に納得した。目に入った丹沢三山を最初大山三山と誤認してしまった。
    そんなところに単独の若者が下ってきた。この日北尾根で出会った唯一の登山者だった。「雪はこんなものですか(少なくて残念です)」と尋ねると、「上にはたっぷりありますよ」と嬉しい返事。尾根の開けた場所から八王子方面を覗き見て、送電鉄塔の下で休憩をとった。三ノ塔を正面に望める絶好の休憩地なのであるが、この日は休憩よりも寒さが勝っていた。ここからアイゼンをつけたが、寒い中のアイゼン装着は大変。歩行中にアイゼンが緩み、何度か皆で調整し合った。


  • 鉄塔地から薄く雪の残った急斜面を直登。所々に残る下山者の足跡を手掛かりに冬枯れの木々の間を縫って登る。白い雪面に数多く残されている小動物の足跡。シカかウサギだろうが、識別できないのが残念。ミズヒノ頭に到着すると、はるか遠くに大山の頂き。山頂に連なる波打つ北尾根は白い山肌。思わず「あそこまで行くの」の女性の声。
    ここからは多少登り下りはあるものの、雪の平坦な馬ノ背尾根で、晴天であれば雪と戯れたくなるところだ。右手には大きな三ノ塔を始め表尾根が横たわっている。その尾根にガス雲がかかると一体を雲が覆い始め日差しがなくなった。太陽が隠れるとすぐに寒くなった。
    雪は締まっていた。雪深の斜面に入らなければ、山靴はもぐることはなかった。雪質によっては軽いラッセルも考えていたが、ラッセルはどんなに軽くとも勘弁してほしい年代となった。どの様な事情でねじれたのかわからないが、立派なねじれ幹に出会った。
    途中、登りの目途がついたところで、コーヒータイム。曇り空の下、コーヒーと紅茶で体を温めてから、山頂へ向かった。


  • 尾根最上部には森林整備用の小型モノレールが敷設されて、尾根の南半分にシカ除けフェンスが張られ、北尾根は窮屈になり、かつての伸びやかさがなくなった。北尾根から唐沢峠(広沢寺方面)への下降点に目印として木の枝にネクタイをかけたことから、ネクタイ尾根下降点といわれる場所で残置ネクタイを確認すると、山頂まではもうすぐである。


  • 山頂施設の脇のシカ除けフェンスを脚立で乗り越えると、曇の影になり、寒々とした大山山頂の一角に到着。登山者は数名いたのみ。眼下には光満ち溢れる湘南の海や厚木の街などが広がっていた。参道は南面にあり、多くの人で雪と泥が混じりドロドロ。滑らないように注意する。
    下社に下山するか、バス最終便のヤビツ峠に下山するか、迷うところはあったが、下社にした。いつ来ても思うがこの参道は道が悪い。アイゼンを外して下る。
    下社からケーブルで登山口へ。大山豆腐の料理屋通りを抜けると、タイミングよくバスに乗れて、伊勢原駅へ。
    駅周辺で飲食店を吟味し、我々中高年にふさわしい店に入り、ご苦労さん会。体は温かい飲み物食べ物を欲していた。熱燗がすすんだ。そして翌日、私は肩がこり、ふくらはぎが筋肉痛。そんな雪山歩きであった。


   以上