◆大菩薩周辺・小金沢連嶺(石丸峠〜湯ノ沢峠)+ α 報告   

  和田(則)さんから自主ワンのご報告を頂きましたので紹介いたします。

 
日 程:平成24年9月8日(土)曇り / 9月15日(土)晴れ曇り

コース:(8日)小屋平−石丸峠−小金沢山−牛奥ノ雁ヶ腹摺山−黒岳−湯ノ沢峠−やまと天目山温泉
     (15日)湯ノ沢峠−大蔵高丸−大谷ヶ丸−滝子山−笹子駅

同行者:和田(記)




  • 天候の巡り合せがよくない。晴れた真夏日が続く中この日に限り「曇り午後から雨」の予報。例会の翌日であり、地味な山域でもあり、訪れるシーズンにずれがあり、一人山歩きとなった。天気は悪くとも気は楽である。

  • 8日はガスや曇りのため展望はなかった。気温は20度前後の快適さで、稜線ではだれにも遭わない2000m級の自由気ままな山歩きとなった。3つある山は総じて山頂の北面は苔の針葉樹林の黒森、南面は笹原が比較的多く、鞍部の笹原は眺めて気持ち良い。晩夏から秋の花は、ボツボツ咲いている程度だったが、いくつか群落があった。
    マイペースでの気ままさが楽しかったので、1週間後の15日に、小金沢連嶺の南半分(湯ノ沢峠−滝子山)を歩いた。


◆平成24年9月8日(土)
 小金沢連嶺(小屋平−石丸峠−小金沢山−牛奥ノ雁ヶ腹摺山−黒岳−湯ノ沢峠−やまと天目山温泉)


  • 中央本線の小仏トンネルを抜けると、曇り空から日差し空に変わりワクワクしたものの、甲斐大和駅からマイクロバスに乗り込むころにはどんよりした空に変わった。満員バスから小屋平で下車したのは私のみ、他は終点の上日川峠に向かった。小屋平(標高1580m)の湿気は高く、最初の笹原の急登で全身汗でびっしょり。
    晴れていれば、大菩薩湖の奥に富士山の美しい姿が見えるのだが。また梢の先に狼平の笹原が眺められるのだが、それらはどんよりした雲とガスの中。

  • 石丸峠周辺で大菩薩から下ってきた2、3パーティとすれ違ったほか、湯ノ沢峠まで誰にも遭わず、とても得した気分となった。石丸峠から小菅の湯に抜ける牛ノ寝通り尾根を分けて、笹原が広がる開放的な狼平へ下る。「狼平」とは想像力を駆り立てられる。南アルプス全山を眺望できる場所のひとつである。小金沢山(2014m)の登りはこの日一番長い登り。1時間の我慢。苔むした針葉樹林の中は深い山にいるようだ。山頂を後にすると、下草が笹原の針葉樹林、あるいは笹原となった。

  • この周辺には雁ヶ腹摺山が3つある。牛奥ノ雁ヶ腹摺山は小金沢山とともに秀麗富嶽十二景のひとつ。山頂部にはマルバダケフキの群落。天気は持ち直し、川胡桃沢ノ頭との鞍部に広がる笹原には陽があたった。
    黒岳山頂の南面にはわずかだが下草のない広葉樹林の疎林が広がり、山梨の森100選とのこと。白谷丸に飛び出すと眺望が開け、初秋の原が広がっていた。草花が増えて、目を楽しませた。このコースは石丸峠、狼平、白谷丸、湯ノ沢峠がハイライトのようだ。

  • 湯ノ丸峠には蛍光灯付きの清潔な避難小屋と水場とバイオトイレ小屋があった。時間的に余裕があったので、やまと天目山温泉まで歩くことにした。携帯電話が通じない峠からタクシーに乗る場合は、電波の通じる黒岳山頂から携帯で予約するのがよい。峠からスピードを速めて下ったため、翌日両足とも筋肉痛になった。古くからの旅館と勝手に決め込んでいた温泉は公共の温泉施設であった。汗を流し、バスで甲斐大和駅に出た。
    小虫が飛び交うことなく笹は刈り払われた後で、歩く際の煩わしさはなかった。


◆平成24年9月15日(土)
 小金沢連嶺(湯ノ沢峠登山口−湯ノ沢峠−大蔵高丸−大谷ヶ丸−滝子山−すみ沢−笹子駅)


  • 小金沢連嶺の北半分は黒森と笹原の山、15日に訪れた南半分は広葉樹林とカヤト原の山だった。森の下草は笹が少なくすっきりとし、シダ類やトリカブトが花をつけていた。大谷ヶ丸から先はカラマツの林であった。

  • 前日甲斐大和駅のタクシー会社に相乗りの可能性を確認したところ、先約は入ってないとの返事、仕方なく予約を入れた。タクシー代4000円は痛い。15日、駅前で登山客を物色していたら、50歳代と思われるご婦人一人から湯ノ沢峠登山口まで相乗りの申し出があった。ラッキー。登山口でご婦人にお礼を言い、先に山に入る。8日は薄暗く見えた沢沿いの道は、昨夜の雨と朝日で瑞々しく映った。

  • 沢沿いに2か所サルナシの実がいくつも落ちていた。指でつぶしてみると、キウィの味がした。昔、沢登りをしていてサルナシを見つけると、みんなで手当たり次第食べ、「猿の分は残しておけ」と先輩から言われたことがある。日本のキウィと呼ばれ、漢字で「猿梨」と書く、猿の大好物である。

  • 沢音が消えると湯ノ沢峠の避難小屋である。気温20度、雲が多いが青空も見える。車中から見えた富士山はまだ見えるだろうか。峠からお花畑と言われている草原に上った。草原はカヤト原であり、所々にノアザミ、カイフウロ、ウスユキソウが花をつけているのみ。花を期待していたので残念であったが、草原の大きな青空に初秋の風が吹き、秋の風情は十分あった。

  • 大蔵高丸は広葉樹林の山で巻きながら登る。小草原の山頂は秀麗富嶽十二景のひとつ。富士山は見えなかった。代わりに甲府盆地の一角を眺めた。広葉樹林とカヤト原を何回か抜けるとハマイバ丸に着く。その先の「ハマイバ丸まで3分」標識付近は20m程度山道が不明瞭だった。天下石から米背負峠に連なる広葉樹林の疎林帯はまるで散策路のようであった。大谷ヶ丸は展望がなかった。この周辺の山は山頂が丸いためか、「○○丸」という名称が多い。丸いので下りで3か所ほど5分程度の急坂だがご愛嬌だ。

  • 大谷ヶ丸を下ると、右手がカラマツ林、右手が自然林となり、おおらかな森林帯が滝子山の接続点まで続く。滝子山(1590m)の肩で一服した。今年2月に常盤さん達が滝子山に登った時、後輩のMさんが後れをとったスキー場のような登り道、防火帯が眼下に広がっていた。私も以前にこの防火帯の登りで息を切らせたことがあった。肩から山頂まではすぐ。日があたり暑い山頂で3組が昼食中。

  • 山頂から北方面には中央に大蔵高丸、奥にはガスのかかった黒岳、左手には三角形の大谷ヶ丸、右手には旧500円札の富士山撮影の山、雁ヶ腹摺山の三角の山容。南方面には鶴ヶ鳥屋山から本社ヶ丸へ続く山並み。本社ヶ丸の山腹にリニアのための変電所と送電鉄塔群を見つけた。

  • 下りは標高差が1000mあるので、できるだけ楽をしようとすみ沢コースを選ぶ。防火帯は快適に下り、沢沿いルートは何か所か崩壊地を横切っており慎重に通過。ナメ底の多いすみ沢から沢登りを終えた若者3名が上がってきた。全身ずぶ濡れの彼らは気持ちよさそうであった。林道に出るまでの小1時間、早く「笹一」への気持ちでペースが上がり苦しくなった。

  • 気持ち先走りで到着した笹子駅手前の「笹一酒造」の食堂は早々と営業時間を終了していた。仕方なく缶ビールを買い求めテーブルを借り、体を冷やした。
    小金沢連嶺は北部と南部で森の植生が異なり、興味をそそられる山域。8月下旬の花のころ、秋空の美しいころや新緑のころがよいと思う。北部では鹿によって幹の皮をはぎ取られ枯れた樹木を多く目にした。南部では真新しい熊の爪痕の残る樹木に出会った。数少ない登山者の多くはクマよけの鈴を鳴らして歩いていた。私はいつも通りザックに入れたままで、ふと、不安・恐怖がよぎるときに手を叩いた。

<<目にした花々>>
ノアザミ、タムラソウ、コウリンカ、シモツケ、ヒヨドリソウ、マツムシソウ、ハナイカリ、アキノキリンソウ、ホタルブクロ、ヨメナ、ノコンギク、トモエソウ、ヤマハハコ、ヤマハッカ、タカオヒゴダイ、ツリカネソウ、トリカブト、ハンゴンソウ、シモツケ、カイフウロ、ウスユキソウ、マルバダケフキ、ツリフネソウ、モミジソウ、シシウド、フシグロセンノウなど。


   9月8日分の写真はこちらです。
   9月15日分の写真はこちらです。


   以上