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中央アルプス・南アルプスという変則山域で実施した夏の山行が終わり、ホッとしていた8月下旬、中村先輩から連絡がありました。「篠原さんから、10月13日〜14日の日程で、会津駒ケ岳山行の誘いがあったが、誰か具体化してくれ」、こんな内容でした。誰かって、それってオレのこと?今回もおせっかい虫がうずき、私が企画することになりました。
福島県は、東から浜通り、中通り、会津と、縦に3つに分かれています。浜通りには相馬市といわき市があり、常磐線が走っています。中通りには福島市・郡山市・白河市があり、東北本線と東北新幹線です。会津地方にはもちろん会津若松市があり、会津・鬼怒川線があります。それぞれ国道が併走しています。そして、会津・鬼怒川線よりもうひとつ奥、西側、只見町〜南会津町〜桧枝岐村を結ぶ国道があります。鉄道はありません。この福島県の最も深い最南に位置する桧枝岐は尾瀬の真北であり、昭和40年代に沼田へと抜ける道路建設の計画がありました。
有名な「尾瀬に死す」であります。桧枝岐〜沼山峠〜尾瀬沼〜三平峠〜大清水〜片品村〜沼田。現在、沼山峠の手前までと、三平峠の手前まで車道が通じていますが、その時の名残です。長蔵小屋の平野長靖と大石環境庁長官が登場するこの史実は、ぜひお調べいただきたいと思います。
只見から伊南川の上流に向かって南下する国道は、尾瀬御池からJの字を描くように北上し、奥只見湖畔から枝折峠を越えて新潟県の小出に達しています。ちょっとわかりづらいですが、只見と奥只見、およそ15キロ、只見川に沿った道はなく、直接行き来することはできません(電力会社の、秘密の道はあるかもしれません)。この奥只見湖(人造湖)建設のために作られたシルバーラインは、雪崩から守るため、ほとんどの部分がトンネルとなっており、気象条件が非常に厳しいことがわかります。
で、会津駒ケ岳です。会津駒ケ岳への一般ルートは、桧枝岐の中心部から始まります。国道から徒歩30分ほどのところに登山口があり、そこから3〜4時間で頂上直下にある駒の小屋、頂上まではあと20分です。会津駒ケ岳の北にも登山道がありますが、中門岳で行き止まりです。また、駒の小屋から桧枝岐と尾瀬御池の中間のキリンテに下ることもできます。
今回の計画です。東京を早朝出発すれば、桧枝岐にお昼前に到着できます。初日に駒の小屋まであがり、ここで一泊したいと考えました。駒の小屋は完全予約、収容人員30名となっています。8月下旬に予約の電話を入れました。人数が不確定だったので15名程度としましたが、あえなく断られました。秋の紅葉シーズンであるため、すでに満杯になっていたのか、15名という大人数が嫌われたのかは不明です。
こうなると、ふもとの桧枝岐に宿泊して、早朝出発のピストン以外考えられません。さっそく民宿に予約を入れて、宿を確保しました。宿に夕方集合です。この桧枝岐へのアクセスは3つあります。@群馬県側から。沼田から大清水までバス、三平峠を越えて尾瀬沼に達し、さらに沼山峠を越えて沼山峠バス停からバス。A福島県側から。東武鉄道で鬼怒川温泉、会津・鬼怒川線で会津高原、そこからバス。B新潟県側から。浦佐まで上越新幹線、バスで奥只見、遊覧船で尾瀬口、さらにバスで尾瀬御池経由。
というわけで、参加者を募ったところ、多くの方がBの新潟県側からの越後口ルートを選択されました。中村さんと篠原さんは、一般的な@を、沼田さんもマイカーでだいたい@に近いルート、それ以外はBです。
東京6時08分発の上越新幹線始発、Maxとき301号に乗車すれば、浦佐以降の連絡もスムーズなのですが、お住まいによって、この電車に乗ることができない場合があります。平石さんは、三木さんと前日に浦佐の安ホテルに宿泊。キムコさんは、始発に乗れば間に合いそうでしたが、念のため東京駅近くのカプセルホテルに宿泊しました。浜田さんは、いろいろ検討した結果、我が家の空き部屋に泊まってもらいました。松田さんは、最寄り駅からの始発では間に合わないので、隣り駅まで歩いたそうです。他の、佐藤さん・阿部さん・石井さん・斎藤さん・生田さん、そして常盤は自宅から。
浦佐に7時37分着。晴天が期待されましたが、冬型の気圧配置が強まって、小雨模様でした。8時のバスに乗車し、奥只見まで1時間少々です。ダムの下にバス停があり、そこからスロープカーです、100円。北区の飛鳥山公園に同じような施設があります。また、大月手前の猿橋にも山上の住宅地を結ぶモノレールがありましたが、故障続きで運行中止となり、新しくエレベーターになってしまったそうです。いっぺん乗りたかった。
スロープカー、トイレを借りているまに発車してしまいましたが、終点まで徒歩でも5分です。ここから船に乗ります。この奥只見湖は電源開発が作った人造湖で、いちばん北(下流)にダムがあります。急峻な場所に作られており、湖の形は丸かったり楕円ではありません。上流に向かって、ちょうど人の手のような細い谷が何本かに分かれています。ダムのあるところが手首、指先に相当する場所のひとつが銀山平であり、尾瀬口です。現在、奥只見⇔銀山平、奥只見⇔尾瀬口の航路はありますが、銀山平⇔尾瀬口はありません。
船は定員50人の小さなもので、船室に20数人、後方デッキに20数人です。これまたモタモタしていて船室は満席になってしまい、デッキで過ごしました。小雨が吹き付けて寒かったです。およそ40分で尾瀬口に到着。ここから45度くらいの急な階段を昇ると、そこに連絡バスが待っています。バスは予約制、もちろん予約済みですが、予約がなくて満員だと乗ることができないという決まりです。私たちの乗った10時15分のあとは16時05分発。満席だったら、何もないところで、6時間もの間、どうするのでしょうか。
連絡バスは、清四郎小屋・平ヶ岳登山口・尾瀬御池を経て沼山峠バス停まで、およそ1時間です。11時半ころ到着しました。時間があるので尾瀬沼を往復します。片道1時間です。沼山峠バス停から桧枝岐方面へのバスは、14時10分と16時20分、サクサク行けば14時10分のバスに十分間に合います。これに乗車し、15時ころ宿に着いて、近くの温泉で入浴と思っていましたが、斎藤さんからの「どうせ早く着いたって、お酒飲んでるだけでしょ」のひと言で、16時20分のバスに変更となりました。
沼山峠まで登り20分、そこから大江湿原経由で尾瀬沼まで40分です。12時半ころ尾瀬沼に着き、ラーメン・そば・ビールで一休みです。ここのラストオーダーは13時だそうで、ギリギリでした。あまりにも早い店じまいに、ちょっとびっくり。肌寒い曇天、ときどき小雨、そして晴れ間という気候。ゆったりした時間を過ごし、16時20分のバスに乗車し、17時ころ民宿に到着しました。中村さん・篠原さん・沼田さんは、もちろん先着していました。
すぐに入浴、6時から夕食です。桧枝岐ではどこの宿でもサンショウウオのてんぷらが出されます。ドジョウみたいなもので、なんてことありません。食事を済ませ、8時ころには就寝となりました。
いよいよ会津駒ケ岳登山です。5時出発。朝ご飯は大きなお握り2つ。おかずも付いてりっぱな物でしたが、梅干が苦手な私にはちょっと…でした。これを予測してコンビニのお握りを残しておきましたが、賞味期限切れで、パサパサでおいしくないです。コロッケパンのほうが良かったか?
宿の車と沼田さんのマイカーで登山口へ。5時半に歩きはじめです。最初は急ですが、次第に緩い登りになってきます。紅葉(ここではブナ林の黄葉)は、たぶん翌週がピーク、ちょっと早かったですが、8月にたてた計画であり、文句言ってもはじまりません。
駒の小屋に9時過ぎに到着。小屋に泊まる6名はお茶タイム。この日に帰る8名は駒ヶ岳往復です。宿泊組はお昼から駒ケ岳〜中門岳を往復し、翌日キリンテに下山したそうです。さらに言いだしっぺの2人は、尾瀬沼方面でもう一泊という豪華版だったそうです。
10時から下ります。濡れた木道は滑ります。「慎重に、慎重に、油断すると転んでしまう」へっぴり腰で下るIKTさん、しゃべらんで良いから早く下れよ。ここでスペシャル作戦その1、IKT先頭、登ってくる人を無視して、道を譲らずに下る。後ろにいる残りが全員道を譲り、「申し訳ありません、なにせ初心者なもので」と深く謝る。道を譲ってIKTさんと間が開いても、すぐに追いつく。
この作戦、まあ悪くはありませんでしたが、IKTさんの慎重下山はだんだんと度を超えたスピードとなってきます。腰が落ち、足が前に出ません。「慎重に、慎重に、六根清浄、六根清浄、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」お声がお山に響きます。ここでスペシャル作戦その2、オーダー変更です。IKTさん以外が先行し、どんどん先に行ってもらいます。登山口を通過し、国道までそのまま下山。IKTさんは、沼田さんの車に乗車してもらいます。
しかし先行組み、意外とスピードが上がりません。こんどはHRISさんがブレーキの模様です。結局、沼田さん・IKTさん・HRISさんと、作戦を立てた私の4人が最後の20分を車でショートカットとなりました。
12時半下山、13時10分のバスで会津高原に向かいます。少し遅れてバスが2台来ました。満席になったため増発したようです。後ろのバスが定期バスで、前のバスは特急・会津高原行きだそうです。特急はガラガラ。飛ばしに飛ばして、14時17分に会津高原着。14時20分の電車があります。小走りで構内を突っ切り、遮断機を上げてもらって電車に乗り込みます。切符は車内で買いました。
この電車は喜多方始発です。あのラーメンの喜多方、会津よりもっと遠くからです。鬼怒川温泉15時02分着。15時03分のスペーシア・JR乗り入れ新宿行きに接続しています。もちろん全席指定ですが、私たちは指定券を持っていません。会津・鬼怒川線の車掌さんは、「とにかく電車に乗り、車内でその旨申し出れば大丈夫ですよ」といってくれました。しかし、鬼怒川温泉では「この電車は満席です」とのアナウンスと、赤旗を振り、ピーピーと笛を吹いて阻止する女車掌、全学連のデモみたい。かくて、電車への突入は失敗しました。
次のスペーシアは、40分後です。こちらは東武本線の浅草行き、この指定券は購入することができました。ただし、8時に帰れば良いという松田さんと、特急料金をケチりたい私は、その5分後に発車の普通に乗車です。
しだいに暮れ行く景色を見ながら、2人でのんびり列車の旅となりました。私たちが乗った電車は、会津田島14時26分発、会津高原14時56分(無理やり乗らなければこの電車だった)、鬼怒川温泉15時49分、浅草18時35分到着の区間快速でした。4人掛けクロスシート、簡易テーブル、トイレつきの豪華列車、4時間以上走り続ける優等列車でした。
途中、栗橋でJRに乗り換えです。湘南新宿ライン逗子行きがちょうどぴったり接続しています。東武鉄道の駅からいったん外に出て、JRに再入場します。ここでトラブル発生、切符紛失です。そこでわたくし、まずカメレオンのように顔を真っ青にします。息を止めて唇はチアノーゼです。ワナワナと、少しどもりながら、身体をよじり、「すっ、すみません、ちゃ、ちゃんと切符を買ったのに、きっ、切符がないんです」と正直申告。おかげさまで無罪放免となりました。本当のことなのだから、こんな演技は必要ないかもしれません。帰宅したのが19時半。バス乗車から6時間半もかかりました。さすがは我が国で最深の地域。新幹線なら1時間という距離なのに、半日がかりでした。
今回の乗り物料金です(池袋起点、池袋帰着)
池袋〜大宮:JR 380円
大宮〜浦佐:新幹線(えきネット・トクだ値35%引き) 3760円
浦佐〜奥只見:バス(荷物代込み) 1000円
奥只見〜尾瀬口:船 1150円
尾瀬口〜沼山峠:バス 1500円
沼山峠〜桧枝岐・駒ケ岳登山口:バス 1020円
桧枝岐・アルザ尾瀬〜会津高原:バス 1690円
会津高原〜栗橋:会津・鬼怒川線、東武鉄道 1980円
栗橋〜池袋:JR 820円
合計 13300円
バス代がずいぶん高く感じられましたが、こうして計算してみると、それほどでもないようにも思えます。民宿は飲み物込みで9000円でした。
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以 上 |
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