◆「大菩薩嶺」報告   

  和田(則)さんからGW後半の山行のご報告を頂きましたので紹介いたします。

 
日 程:平成25年5月3日(金・祝)快晴

コース:JR甲斐大和駅 = バス= 小屋平 − 石丸峠 − 高台 − 石丸峠 − 熊沢山 −大菩薩峠
    − 大菩薩嶺 − 唐松尾根 − 福ちゃん荘 − 上日川峠 − 裂石登山口= タクシー = JR塩山駅

同行者:常盤、生田、石井、相原、和田(記)




  • 当初、上日川(かみひかわ)峠から大菩薩峠に登り、奥多摩の丹波(たば)へ通じる古道「丹波大菩薩道」を下る計画を練っていた。総会のあった雨の日、大菩薩峠では雪。低温が続く中、北面を下る計画を変更した。
    GWも低温との予報、5月1日東京の雨は大菩薩峠では5cmの積雪。2日昼前の気温は1℃。念のため、防寒の用意をして山に入った。
    穂高では27日に稜線では1mの雪が積もり、雪崩の危険性が極めて高いと判断して、一時、横尾から涸沢への入山が規制された。涸沢テント村も雪崩被害を避けるため、テント利用者に対し小屋泊りを呼びかけているとのこと。この時期は寒気が入り込むと気象条件は大きく変わることを実感。

  • 当日は快晴、特に寒くはない陽気。大菩薩の芽吹きはまだまだ先。春の花など、ひとつも咲いていない。石丸峠までは登山者一組しか遭わずに、大空の下、白い南アルプス・八ヶ岳を一望、2000mの無雪春山を堪能した。心残りは富士の眺望が叶わなかったこと。

  • 大菩薩へは、かつては塩山駅からバスで裂石(さけいし)に行き、上日川峠経由で大菩薩峠に向かった。現在、シーズン中は、塩山の2つ手前の駅、甲斐大和駅(昔の初鹿野(はじかの)駅)からマイクロバスに乗り50分で上日川峠まで入れ、徒歩1時間15分で大菩薩峠に立てる。

  • 駅からバスへの乗り継ぎ時間が短いので、Iさんは特急を使い余裕をもって駅に集合した。臨時が1台事前増発され、全員バスに座れた。満員バスの外は芽吹きの山々。青空をバックにした芽吹きは美しい。雪の富士山も一瞬見えた。大菩薩湖(上日川ダム)あたりからは陽光を浴び春を待つ冬木立の景色。外気は冷え、窓ガラスがうっすら曇った。

  • 上日川峠のひとつ前、小屋平バス停で下車したのは、我々のほか1グループのみ。小屋平には施設は何もない。TさんとIさんは、スマホの地図情報アプリに現在位置と時刻をセットして出発。笹とカラマツ林の急坂を登り、しばらくすると梢の間から南アルプスの甲斐駒、仙丈。北アルプスの乗鞍。八ヶ岳の編笠、権現、赤岳、横岳を望めた。山はダケカンバ、針葉樹等が混じる自然林とカラマツの植林となり、山腹を巻いて登ってゆく。

  • 石丸峠手前で、一気に目の前が開け、雄大な風景が現れた。間近に大菩薩湖と取り巻く低山の連なり。雲に隠れ勝ちだが、南アルプスの聖岳、赤石岳、荒川岳、塩見岳。惜しいことに富士山は雲の中だった。

  • 笹原の石丸峠の先で、3年前の「大マテイ山」につながる長大な「牛ノ寝通り」を分け、近くの高台に登る。高台からは狼平につながる笹原と、南アルプス・八ヶ岳のほか、奥多摩、丹沢の山々。滝子山、扇山等を眺望。Aさん持参の魚眼レンズカメラを使い手持ちで集合写真を撮る。稜線上は風があるが、風下の笹原の中は暖かい。

  • 石丸峠に戻り、黒森の熊沢山を経て大菩薩峠に向かう。森の中は1日から2日にかけての雪が残り注意して歩く。簡易アイゼンは使わない。峠の介山荘周辺には上日川峠からの登山者30、40人前後が記念撮影や昼食をとっており、家族連れもいるのどかな春山光景。
    この周辺の景色は、日本を代表する山岳景観の一つではないか。

  • 大菩薩嶺に向かう道はゴロゴロ石で歩きにくい。賽の河原を抜け、雷岩までは見た目以上の登りが続く。雪解け水のぬかった山道の先に、樹木に囲まれた大菩薩嶺。なぜ大菩薩峠でなく大菩薩嶺が日本百名山なのか、話題となった。

  • 帰宅後。深田久弥の「日本百名山」には「峠」でも「嶺」でもなく「大菩薩岳」と書かれていた。大菩薩峠は甲州街道の裏街道である青梅街道の険しい峠。「嶺」は「とうげ」を意味するが、いつの間にか、最高峰に移されたとのこと。
    深田が最初の大菩薩に登ったのは、大正12年のこと。未明に初鹿野駅を徒歩で出発し、嵯峨塩鉱泉から小金沢連嶺の牛奥ノ雁が腹摺山、小金沢山を越え、大菩薩に入り、その日のうちに裂石へ下ったようだ。

  • 雷岩から石が露出し歩きにくい唐松尾根を下る。雲がなければ正面に富士山と湖を眺めての山道である。40年以上の昔、過激派による「大菩薩事件」の舞台となった福ちゃん荘を経て、上日川峠のロッヂ長兵衛を横目で見ながら、裂石への長い下り道に入った。昔の道は歩きやすく、落葉樹林でブナ等の大木もあり、歩いて楽しい。標高1200、1300m頃から木々は芽吹き、裂石の上部で満開のヤマザクラを見る。

  • 「大菩薩の湯」に着く直前、小さな雹混じりの通り雨に遭う。雨が上がると気温は下がった。この温泉は上日川ダム建設に伴う電源立法による交付金で作られたと説明書き。29日の秋山温泉と比べると、規模は半分だったが、脱衣場も洗い場も順番待ちという混みよう。
    それでも大菩薩の澄んだ空気と温泉で、昨日までの疲れを流し去り、美味しいビールで乾杯すれば、みんな笑顔となった。

  • 電車時刻に合わせ、路線バスを待たず、塩山からタクシーを呼ぶ。丘を下るタクシーの中から、普段電車車中からは見えない聖岳、赤石岳を見つけ我々は嬉々とした。前山の奥にそびえる山の大きさは北アルプスにはない存在感だ。
    電車車中では軽くワインとビールで仕上げ。私は寝てしまった。
    万歩計を見ると、29日の矢平山山行とほぼ同じ歩数であった。


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