◆「奥秩父・笠取山と雁峠」報告   

  和田(則)さんから6月の山行のご報告を頂きましたので紹介いたします。

 
日 程:平成25年6月1日(土)高曇り
コース:JR塩山駅 =タクシー= 作場平口− ヤブ沢コース − 笠取小屋 − 小さな分水嶺 − 笠取山
    − 水干 − 小さな分水嶺−雁峠−笠取小屋−一休坂(尾根)コース−作場平口 = タクシー = JR塩山駅

同行者:阿部、佐藤、三木、斎藤、北島、和田(記)




  • 例年より10日早い梅雨入り。毎日曇りがちで気が重たかった。ところが1日は朝晴れ、のち曇空。高曇りで、この時期としては珍しく終日富士山が顔を出していた。
    心配の水源地探訪ツアーグループはおらず、奥深い山域にふさわしく登山者の姿も少なめ。整備された源流部の遊歩道を歩き、草原では開放感に包まれ、山頂では大きな展望に驚き、満開のシャクナゲ道に心躍った1日だった。また訪れたい思い出深い山となった。

  • すでに陽は高く昇り、我々以外にひとけのない駅前ロータリー。予約のタクシー2台に分乗し出発する。登山口へは2つの峠を越える。
    町中から正面間近にのびやかな大菩薩嶺・峠が見えた。青梅街道の高度を上げると、残雪の富士山が現れ、いつもの感嘆の声。裂石を走り抜け、柳沢峠(三窪高原の入口)を越え下り終えたところが落合集落(黒川山・鶏冠山の登山口)、車窓には落葉広葉樹林と若葉が続く。

  • 黒川一帯は戦国時代から黒川金山と呼ばれ、武田家の軍資金を支えた金鉱。人口1000人の集落があったという。遊女の悲惨な最期を伝える言い伝えもある。
    落合から細い林道に入り、犬切峠に向かい高度を上げる。知らない山々が目に入るたびに心は落ち着かない。マタタビの白化した葉が風に揺れ目立つ。運転手からマタタビの名前の由来話を聞く。
    犬切峠は石保土山(いしやすどやま)の登り口だ。山道はなく防火帯を歩く山で、いつか訪れたい山の一つだ。

  • 峠を下ると、満杯の駐車場に到着、作場平だ。とても遠い場所に来てしまった。大きなログハウス・トイレがある。登山口は全山蝉しぐれ、蝉声の底にいるようだ。春ゼミの鳴き声を表現できなかったので、MKさんに尋ねると「しいて言うと、ヒグラシの「カナカナ」に近い」とのこと。初夏の蝉声にはうら悲しさはない。

  • カナカナの林に入ると、「熊注意」と「森林の働き」の説明板。説明板はポイント毎にある。笠取山は山梨県と埼玉県の県境にある。一方、多摩川の源流域でもあるため、水源地保護のため東京都水道局が管理。山道の整備保全、下草狩りなど環境整備が確実に行われていた。快適でフカフカの山道は「水源地ふれあいのみち・源流の道」であった。

  • 若葉の木漏れ陽道は小沢沿いに、あるときは源流に絡み、あるときは流れから離れ、森の中深く入っていく。流れも瑞々しい。歩いていたSさんの脇に昆虫が落ち、Sさんは躊躇することなく拾い上げた。透明羽の春ゼミだった。

  • Sさんは下山時にも生物に縁があった。小さく黒い尺取虫が服についた。ヤマヒルの幼虫のようだった。2年前の春、丹沢三ノ塔に向かうヨモギ尾根では、兄さんのIさんがヤマヒルの幼虫に寄りつかれた。兄妹ともにヒルの好みのようだ。しかし、笠取山にヒルが出る話は聞いたことがない。

  • ベンチで休んでいると、山ガールが登ってきた。この山は中高年よりも、若い人が多いとは、観察力の鋭いMKさんの発見。確かにそうだった。山ガール、笠取山に進出か?

  • 路傍に花の種類は多くはなかった。シロバナヘビイチゴやヒメイチゲの白花。タチツボスミレの薄青花は頻繁に見られた。まれにキバナノコマノツメ(スミレ科で唯一スミレの名前がついてない)の黄花、クリンソウの紅花を見つけた。
    毒々しいが愛嬌のある赤色キノコを見つけた。おとぎの国へ誘い出す囮のようだ。周辺にはこれから顔を出すものもあった。Sさんが調べた結果、スッポンタケの変種と思われるが、まったく見当もつかない。ご存じの方がいれば教えてください。唯一の謎だった。

  • 曇り空と若葉の下、山道は時には木道となり高度を上げると、ヤブ沢峠に到着。ここから小屋までは登り気味の水平林道歩き。カラマツの若葉の間から、富士山が見えた。両側の樹木には鹿の食害跡が続く。その激しさに驚く。熊の爪痕が残る樹木も。この地域は動物天国だ。

  • 林道の終点が笠取小屋。晴れていれば、森の中の光あふれる、こぎれいな空間。小屋の煙突から煙が流れていた。離れて立派なトイレ棟。広場にはテーブルが4、5つ。広場の一角からは三角姿の大菩薩嶺。鹿の食害防止ネットに包まれたズミの木が1本。広場には3、4パーティが食事中。我々は休憩ののち、山頂をめざす。

  • 小屋の周りの森を抜けると、小さな草原に出た。草原のズミの木は紅白色のつぼみと花をつけ、満開が楽しみだ。雁峠への分岐から「小さな分水嶺」の丘に登った。周辺は草地で自然に足取りも軽くなる。花が咲くころの素晴らしさを思った。かつては6月には一面レンゲツツジ、夏にはヤナギランが咲き乱れていたらしいが、残念なことに昨今は花の咲かない、カヤト原にすぎないようだ。鹿の食害によるものと思う。

  • 丘に立つと、新緑のカラマツ林の向こうに残雪の富士山がそそり立っていた。高曇りで大気の流れが止まってしまった静かな風景。丘には分水嶺の石柱が設置され、東側に落ちた雨は荒川へ、西側に流れた雨水は笛吹川から富士川へ、南側に降った雨は多摩川に流れ込む、と説明されていた。

  • 丘の上に三角錐の笠取山。一度下って登り返するだが、下り終えた場所に、その昔放置された林業機材が赤茶けて、オブジェとなっていた。
    山の直登は高度差120m、傾斜は2、30度。集中して登る。振り返れば、右手奥には雁峠の草地、奥には乾徳山から黒金山への稜線。その右に大きな国師ヶ岳。それらの奥には、南アルプスの北部の山々と八ヶ岳・赤岳から権現岳にかけての稜線がうっすらと望めた。
    さらに登ると、薄緑の山々の奥に霊峰富士が聳えていた。植林の継はぎのない自然林の山々と残雪の富士は一幅の絵のようだ。美しいと思った。

  • 急登も20分で岩が露出した山頂に着いた。何組かが展望と食事を楽しんでいた。展望の山頂は山梨県の山頂で、少し先には展望は望めないが静かな埼玉県の山頂がある。岩が多いため、山梨県山頂から水干近くまで石楠花が自生し、満開の花をつけたシャクナゲ通りとなっていた。濃いピンクのつぼみ、ピンクや薄桃色の開花と色とりどりのシャクナゲにみんな大満足した。
    登山者の多くは山梨県山頂から引き返していたが、その先からが見所だった。

  • 山頂部をわずかに下ると、たくさんのミツバツツジ。奥秩父の縦走路と合流し、水平道を進むと水干(みずひ)。水干は源流の沢の行き止まりを意味するそうだが、多摩川の最源頭部で、最初のひとしずくが落ちる瞬間を待った。落ちたしずくは源流となり、沢となり、ここから138km先の東京湾に流れ込む。ここからも富士山を望めた。

  • 水平道を分水嶺まで戻り、雁峠に向かう。峠は目と鼻の先にあり、広々とした草地にはテーブルが置かれて、峠のくぼみの先には乾徳山から黒金山への稜線が広がる。ひとけがないので天気が良ければ、最高に贅沢な場所だ。峠の奥には廃業して10年たつ雁峠山荘がひっそり立っていた。

  • 笠取小屋に戻り、携帯でタクシーの予約を入れ、帰路は一休坂(尾根)コースを下った。小屋の水場から遊歩道を歩き、刈り払われたスズタケやミズナラ林を下り、ウグイスの大きな鳴き声に見送られ、登山口に戻った。

  • 登山口では朝の運転手が待っていた。塩山駅北口に17時15分に到着。予定より早く着いた。往復とも、片道9260円、時間50分。5名乗りのタクシー。
    無理だとあきらめていた、17時41分発の特急に乗車できそうだ。軽く打ち上げ乗車することにした。ロータリーに面した中華店に入り、無理を言い、ビールと野菜炒めを注文。山靴を脱ぐのももどかしい。おいしい野菜炒めを腹に入れ、15分で打ち上げを終えるという最短記録で、駅に急いだ。スリリングな打ち上げだった。乗り込んだ特急の自由席は空いていた。


写真はこちらです。
 1)その1(斎藤さん撮影)
 2)その2(和田さん撮影)


   以上