◆自主ワン・杵淵邸訪問と両神山   

  常盤(豊)さんから自主ワンの御報告を頂きましたので掲載いたします。

 

目的地:杵淵邸訪問と両神山
日程:11月2日〜3日
メンバー:山本(杵淵)、北島(キムコ)、生田、三木、平石、田中、常盤(記)

◎お願い
1) どんな小さな山登りでも、ヘッドランプ(懐中電灯)絶対に必携です。
2) 全員が集合するまで、携帯電話は胸か腰のポケットに入れておき、着信がわかるようにしてください。
3) 携帯電話の電池について、予備電池または簡易充電器を持参してください。

 1〜2年前の野歩の会総会でだったか、杵淵後輩から「私の実家の別荘が秩父にあるので、よろしかったらぜひお越し下さい」こんなお誘いを受けていました。それでは近くお邪魔しようとの計画を立てたのが、今年の夏前でした。ただ、実際に杵淵後輩と山登りなど行った経験があるわけでもなく、キムコ後輩に橋渡しをお願いしました。実施は11月初旬の紅葉の季節とし、具体的には文化の日の3連休としました。初めての訪問であり、おもてなし側の準備もあるので、ほんの内々というか、葉隠例会で、そばに座った人を中心にお声をかけることになり、7名となりました。

 11月2日正午、西武秩父駅集合です。10時20分発の急行飯能行き、乗り換えて西武秩父12時ちょい過ぎ到着、または10時30分発の特急レッドアロー号(それにしてもネーミングは、小田急ロマンスカーのすごさよ、です)で、12時ちょい前到着です。10時ころ、キムコ後輩から電話があり、特急券買っておきましょうかの問い合わせ。おおいに迷いましたが、電車の中ということもあり、じゃあそうしてくださいと返事することを、余儀なくされました。ムム、ちょこっと出費。

 西武線池袋には二つの改札口があります。中央と南です。どちらにいるの?とのメール問い合わせに、「一階の改札口」との返事。こんな場合、会社では、「こら、きちんと質問に答えろ!」と上司が叱責します。中央なの?南なの?、中央=一階、南=地下ですので、「まあわかったような気がする」と答えておきました。一階の中央改札前で無事合流です。

 先に別荘に着いて、風を通しておく杵淵後輩、1時間先行する田中後輩を除いて、三木先輩・平石先輩を含めて4名、さあ、全員そろったから電車に乗りましょう(10時15分)。10時20分の急行を見送れば、10時30分の特急に乗らなければ遅刻です。あれ、イクタちゃんまだ来てないみたい。掲示では、この特急の乗車券はまもなく売り切れです。キムコ、あせって電話します。「電話に出ることができません」のメッセージ。再度電話、また電話、やっぱりだめ。しまいには「くそう」との伝言を入れて電話を切ったみたいです。まあいいや、携帯はザックの中にあるんでしょ、とにかく乗るしかない。特急乗り場に行くと、フラフラとイクタちゃんが歩いています。「きゃあイクタさん、間に合ってよかったあ」「フン、どうしたんですか?」なんできゃあきゃあ言うのか、不機嫌そう。南の地下改札口から来たので、私たちがヤキモキしていた場所を、通らなかったのでした。

 西武秩父駅前のトヨタレンタで、8人乗り大型車を借りてスタートです。途中のスーパーで買出しを済ませ、中津峡という紅葉名所に向います。へえ、そうね、と言えるほどの見事な景色です。さて、雁坂トンネルが開通し、秩父と塩山が結ばれたのが平成10年だそうです。途中見事なループ状道路があったり、秩父さくら湖(本名は滝沢ダムというハムみたいな名前)の景観を楽しみます。東西に伸びる山の南には秩父湖(本名二瀬ダム)があり、ワタクシ、揚水発電かと考えたのですが、イクタちゃん、そんなことにはまったく無反応です(実際は揚水発電ではなかった)。そんなことより、この自然の景色、癒されますよね。ちっとも自然じゃないってば。そのあと大滝温泉という芋洗い湯(お湯はヌルヌルしていい感じ)で汗を流し(汗かいてないが)、杵淵邸に向います。

 デーンとグランドピアノ!横の部屋には卓球台!亡くなられたご両親、さらに双方の祖父母の写真。まるまると太ってかわいい、杵淵後輩幼児の写真(本人の名誉のため、現在はそんなことありません)。すげえ、俺なんかさ、祖父母4人のうち、父方の祖母、母方の祖父について、まったく知らないよ。名前も知らない、出身も知らないし、写真もない。唯一生き残ったおふくろは、認知が進んで、ほとんど会話もない。そんなこんな、そろそろ良い時間なので、となりの「いのしし亭」でお食事です。杵淵邸は、別荘分譲地にあるわけではありません。逆に、そこがすごい。単なるいなか道2〜3分の場所に「いのしし亭」がありました。

 古くて味わいのある建物です。おじいさんとおばあさんが切り盛りしています。中は清潔感漂っています。部屋に入ってびっくり!すごいおいしそうな前菜だらけ。エビとイクラがあったが、あとは忘れました。お酒だ、ビールだ、なんかりっぱな焼酎だ、うまいうまい。こんなりっぱな料理は、五日市の黒茶屋と同格だ、そうだ、葉隠の鍋も絶品だった(実はほかに知らない)。メインのしし鍋が出てきました。おお、紅蓮色のしし肉が、牡丹みたく盛り付けられています。今度は、ぜひともアケミ先輩をお連れしたいものだと、全員一致で決議。ただ、胃がないワタクシ、前菜だけ(とビール)で腹いっぱい。鍋はひとくちしか食べられませんでした。ほんの少しケモノの臭いが残った(でなければ、ただの豚肉になっちゃうでしょ)上品で野趣あふれる鍋でした。

 宴たけなわのころ、ふすまが開かれて、おじいさんご主人が入ってきます。「お嬢さん、これ銀杏」小さな声、これしかしゃべらず、大量の大粒銀杏をみやげにくれました。なんともかっこ良いやりとりです。揚げ物とちまきが出て、本日のお食事は終了。最後にお会計は、目の玉が飛び出るくらいお安い。イヤハヤお嬢さん、なんともご馳走様でした。

 杵淵邸に戻ったのが何時か覚えていませんが、常識的に見て7時半か8時ころかと思います。もうお腹一杯ですが、買ってきたつまみで二次会。ああでもない、こうでもない。時間が流れるように過ぎていきます。平石先輩は12時ころダウン。残ったモンは気がつけば1時を回っていました。明日、山に登れるのでしょうか?

 5時15分、目がさめました。よし、起床です。ほんの数分後、キムコが2階から下りて来て、なんだかお手伝い。スーパーで買ったパンとかヨーグルト、バナナなどを食べるだけなのに、ずいぶん時間がかかります。どうしてなんだろう。チャチャっと片付けるだけなのに、出発時刻は7時前後になってしまいました。道の駅、コンビニに寄るなど、登山口の日向大谷(ひなたおおや)到着が8時半を回っています。

 さて両神山です。「両神と言うのだから、イザナギとイザナミがまぐわってできた山ですか?」との質問(誰からだか忘れた)。そうかも知れないが、俺たちおとなになったものですね。登山道は、今回たどった日向大谷からの表参道のほか、白井差(しろいざす)からの一般道、八丁峠から奥社を経て登る登山道、梵天尾根経由など、いくつかあります。日向大谷からと白井差からのコースのみが一般向けで、そのほかは滑落の危険の大きいコースです。しかし白井差からの登山道は、ほとんどが私有地で、地主と行政の間でトラブルがあり、一時廃道になってしまったそうです。その後、一日30名限定で、予約、料金(1000円)を支払えば通行可能になっています。いきさつは良くわかりませんが、何となくイメージダウンの感否めなく、ほとんどの方が日向大谷からの往復となっています。

 日向大谷の駐車スペースは数十台ありますが、たいへんな車の数です。駐車できなかった車は、仕方なくUターンして路上駐車となります。今回、最初に路上駐車してある車を見てから、一番奥の駐車場まで数分かかりました。たぶん2キロくらいです。私たちも多分そうなるだろうと覚悟して、念のため奥まで進みました。到着直前に下って行く車とすれ違いましたが、願っていた通り、そのスペースに滑り込みセーフ。何と幸先良いことでしょう。しかも誘導してくれた両神山荘のおやじさんの、感じ良いこと。車の数を勘定したわけではありませんが、合計で多分2〜300台。バス利用の人を含めると、1000人くらいがこのコースを利用している計算です。

 一方の白井差コースです。トラブルの真相は不明ですが、なんとなくガメツいイメージ。でも、本当に30人限定なら、1000円払ってでも、こちらの方が絶対にお得です。webで調べると、地主の山中さんという方、この人も良い人みたいだし。ただ、私がこの結論に達したのは、下山してからのことであり、コース決定に際しては思い至らなかったわけですが。で、白井差コースのほうが、安全で短時間で頂上に立てるらしいです。

 日向大谷出発が9時前です。登りはじめが9時近くになってしまいました。コースタイムで往復6時間半、しかも慎重な足さばきで下るイクタちゃん。休憩とタバコ大好物の平石先輩、30数年ぶり、体調不良で朝食がポカリだけの杵淵後輩が同行。8時間以上かかるなあ。下山はうまく行って4時か4時半、5時はまずいよなあ。「おいイクタあ、懐中電灯持ってんだろうな」「ヘッ、それって何ですか?」人は驚くと目がまあるくなるそうです。怒ると三角になるそうです。まあいつものことだから、まあるくなって、四角になったあたりで止まりました。杵淵は?平石先輩は?三木先輩は?「ねえよ、平気だろ、何とかなんだろ」胸がドキドキするって、新鮮で良いですよね。

 沢沿いの道、水量が多くてちょっと苦労しますが、危ない場所はありません。2時間ほどで清滝小屋到着。とてもきれいな小屋です。トイレもきれいだし、ぜひ一度泊まって見たいです(ふもとの両神山荘も、たいそう評判が高い)。ここからしばらくジグザグに登ると、産泰(うぶたい)尾根に登りつきます。ここまでずっと沢筋で、景色がほとんどなかったので、まわりを見ながら清々した気分になります。

 そして岩場が登場します。両神山は、すべて埼玉県ですが、山の地域としては西上州と言えるかと思います。この群馬県西部には険しい山が多く、妙義山、上州二子山などスリル満点な山が少なくありません(二子山はロッククライミングの本ちゃんゲレンデです)。しかし、滑落遭難事故は、この両神山が圧倒的に多いようです。理由は簡単、深田百名山だから、登山者が多いから。で、鎖場が3〜4ヵ所登場します。それぞれ、ほんの10メートルくらいですが、若干高度感があり、滑っちゃダメよ、という場所があります。

 岩場危険地帯が終わり、頂上の手前は穏やかな稜線、そして時計回りに岩場をたどって頂上に立ちます。こんもりしたドーム状、岩でゴツゴツした頂上、平らな場所は6畳くらい。そこに30人くらいの人。人と人がぶつかって、転落事故が起こってもおかしくありません。皆様、譲り合って写真を撮っています。私たちも「日本百名山」の標識をバックに記念写真。なお、天候はうす曇。ゲットできた山は、浅間山、八ヶ岳、奥秩父(ひとつひとつの同定はできなかった)、それに富士山、やけにりっぱな武甲山。あああ、きれいな武甲山であればどれほど良かったか。でも、秩父を支えている山だしね。いろいろな角度から見ると、物事が立体的に見えてきます。そう言えば、おとなりの三峰山・三峰神社にはお犬様として狼が奉られていますが、狼が絶滅したために鹿が増えて、食害が広まったそうです。あああ、狼がちゃんと生きていればなあ。じゃあ、ゴキブリが絶滅すると、やはりいろいろな不具合が生じるのだろうか?へそ曲がりなじじいは、いろいろなことを考えます。

 気がつけば時刻は1時を過ぎています。もう、登ってくる人は少ないはずだから、すれ違い渋滞はあまり考える必要ありません。でも3時間くらいはかかりそうです。登りでちょっと苦労した岩場、鎖、ロープに頼るような感じで、慎重に下ります。先に下ったイクタちゃん、今度はコーチ屋に変身し、右だ、左だ、木の根っこだ、うるさいくらいに元気付けてくれます。集中力が途切れそう。危険地帯が過ぎれば、あとはサクサク下るだけ。

 3時ころ、エンジンの音が聞こえてきます。山小屋の自家発電みたい。でも、そんなものはありません。ヘリコプターのようです。しばらくすると再びヘリコプター。この近くで遭難事故があり、捜索していると考えるのが妥当です。別荘管理人の大島さんから、杵淵後輩の携帯に着信。しかし沢筋なので、着信はするが会話はできず、逆の発信はできません。きっと大島さん心配してるんだろうな。で、まったくそのとおりでした。沢が、小鹿野の方向に向いて開いているところで通話に成功しました。

 「お嬢様、ワタクシめは心配で心配で、胸がつぶれそうでごぜえます。お元気そうで何よりでございました(推測)」「何言ってんのよ、全然大丈夫よ」「そんなことおっしゃられても、遭難されたのは50代男性らしいですよ。その同行するとおっしゃられた先輩は50代でなかったのですか(推測)」「みんな60代よ。あ、そうか、田中さんは50代だっけ。じゃあ、今度行くから、またお願いね」「そんなことより、下山したらちゃんと電話下さいませよ(推測)」

 両神山荘到着は5時ちょうど。植林された木の下は、暗くて歩きにくくなっており、山荘の部屋には明かりが灯っていました。ふう、ぎりぎりセーフ。あと20分遅ければ、本当にライトが欲しいという時間でした。帰りの電車にうまく乗るため、とにかく西武秩父まで下っちゃいましょう。荷物の整理、顔を洗う、などなど何もせずにスタート。直後に雨が降り出しました。ばんざーい!うまくいっちゃったよね。6時に車を返し、ほんの1時間ほど反省会を催し、7時25分のレッドアロー号(それにしてもスペーシアって良いネーミングだなあ)で帰った次第です。長文、おしまいです。 


※写真はこちらです。


  以 上