◆岩山(鹿沼)   

  常盤(豊)さんから4月と5月の単独行の御報告を頂きましたので掲載いたします。

 

日程:平成26年4月26日(土)、5月10日(土) 

メンバー:常盤



一回目:4月26日(土)

 山と渓谷社が宣伝の意味を込めて、「週刊ヤマケイ」という電子雑誌を無料配信しています。一般の方が、前週に登った山などをレポートします(「週刊ヤマケイ」で検索すると、すぐに申し込みページが表示されます)。人気の山はもちろんですが、マイナーではあるが興味深い山も紹介され、毎週楽しみにしています。

 栃木県鹿沼市に、「岩山」というなんともシンプルな名前の山がある、週刊ヤマケイに紹介されていました。標高330メートルほどの里山だが、全体が岩に覆われており、次から次へと岩場が登場する。最後は、70メートルの垂直に近い一枚岩(猿岩)を、鎖に頼って下る。これはおもしろそうではありませんか。

 JR日光線に鹿沼駅、東武日光線に新鹿沼駅があり、1キロくらい離れています。岩山へは、東武の新鹿沼駅利用が便利です。いつものとおり、早朝の出発で、無駄のない計画を立てました。上板橋5:32…5:43池袋5:56…6:08日暮里6:16…6:23北千住6:31…7:57新鹿沼です。池袋で13分の待ち合わせは、ご不浄をお借りするために、わざわざ1本早めたもの。日暮里8分。北千住も8分という絶妙なつなぎです。さらに北千住からの東武電車・快速は、ボックスシート、折りたたみテーブル付きという豪華旅行仕立てです。北千住を発車すると春日部まで(途中17駅)、つぎが東武動物公園(途中2駅)、さらに板倉東洋大前まで(途中6駅)、それぞれノンストップ通過という、なんとも痛快な電車です。

 岩山は、新鹿沼から車道を30分ほど歩き、日吉神社の境内から登り始めます。初めてであり、情報はwebの投稿以外にありません。「だいたい3時間もあれば登って下山することができる」これが唯一の参考コースタイムです。新鹿沼7時57分着なら、日吉神社に8時半ころ。ぐるりと回って、11時半に再度日吉神社。新鹿沼に12時ころ戻る。こんな時間配分でしょうか。新鹿沼12時38分発の快速があります。行きと同じで、快適に帰れます。

 日吉神社まで、予定通りです。それにしてもスマホのGPS地図ソフトは便利です。県道鹿沼・日光線を歩いていて、ほぼここだなというあたりで路地の奥を見たら、神社への石段が目に入ってきました。神社の境内横で一休み。「岩山ハイキングコース」の道標があります。

 10分ほど笹ヤブの道。そのあとすぐに岩場が始まります。宇都宮市北西部および鹿沼市は、大谷石の産地として知られています。家の塀などに使う、黄色くて、ブクブクと穴のあいた岩です。凝灰岩という岩だそうですが、この岩山も凝灰岩のかたまりのような感じです。手がかり、足がかり十分で、ガシガシ登れます。ただし、同じような傾斜の岩場を下るときは、細心の注意が必要で、あまり気分が良いものではありません。

 最初のピークが三番岩。もうこうなれば二番岩があって一番岩が頂上だなって、誰でも推測できます。小さなペンキサインやテープが要所にあり、それに従って進めば、危ない場所はありませんが、登山道を完全にはずすと岩場から転落する恐れがありそうでした。何回かのアップダウンの末、日吉神社から50分、9時25分にあっけなく頂上に到着です。

 日光の山がぼんやり見えましたが、あとは霞んでいて、またこの地域に疎いため、良くわかりません。思いのほか暑く、持参のお茶をずいぶん飲みました。9時40分、いよいよ下山です。眼下には農家とゴルフ場が見えています。標高差はたったの150メートルほどですから、歩きやすい道ならほんの10分です。

 登ってきた途中に鎖の一枚岩(猿岩)はありませんでした。頂上から先にあるのでしょう。進行方向に踏み跡があり、それに従います。しかし、5分ほど進んで間違いに気づきました。眼下に見えていた農家が、どんどん近づいているのです。目的の猿岩を通らずに下山してしまった模様です。戻るのも面倒なので、そのままさらに10分、10時前に舗装道路に下り立ってしまいました。

 猿岩は、次回のお楽しみ。新鹿沼の駅に戻ります。降りた地点から左へ、または右へ、いずれにしても岩山の裾を巻いて戻ります。スマホの地図(国土地理院の25000分の一)だと、右に行くとゴルフ場があってやっかいな感じです。わかりやすい左回りにすることにしました。日吉神社まで30分くらい、そこから30分で新鹿沼駅という計算です。11時ころになりそうです。さいしょの「3時間で下山」は、駅からスタートして、駅に戻るまでということのようでした。

 歩きながら時刻表のチェックです。この時刻の新鹿沼発、10時38分快速(行きと同じ)、10時51分特急浅草行き、11時18分特急新宿行き、11時35分各駅停車。里道を歩き出したのが10時ころですから、10時38分は無理です。がんばれば10時51分の特急に間に合うかも知れません。しかし、多分、11時ころに駅到着となってしまうでしょう。これはまずい。なにしろ、新宿行き(池袋にも止まる)にピッタリですから。

 私は、池袋〜御徒町の定期券を持っています。新鹿沼からだと、北千住まで東武鉄道、そこから日暮里までJRの料金がかかり、1347円です。北千住まで特急に乗った場合、特急料金が1230円かかって2577円です。ところが、「池袋まで直通」なんて甘い言葉に引かれると、便利だ便利だと気づけば、乗車券1560円、特急券1850円、合計なんと3410円という、目の玉が飛び出る料金を支払うはめになります。

 せめて10時51分の浅草行きに乗りたい。舗装道路をほぼ最高速度で歩きます。1分間に126歩、だいたい100メートル、時速6キロです。下山地点から日吉神社まで30分くらいと考えたのは、スマホの小さい地図でだいたいこれくらいだろうと測っただけで、正確ではありません。とにかくビュンビュン飛ばしますが、なかなか近づきません。思ったより距離が長かったらしい。日吉神社通過が10時半ころ、JR直通乗車のわなにはまりそうです。実は、ここで一つだけ良い手があったのですが、それは次回に生かされることになりました。

 駅の手前、道路が鉄道と平行し、線路が見えます。10時50分、東武の特急が駅に向って入ってきます。こちらは、駅まであと300メートルくらい。ダメでした。新鹿沼駅に10時55分ころ到着。11時18分の「池袋まで直通3410円」を選ぶか(12時42分到着)、つぎの各駅停車とするか、これだと池袋に14時13分到着となるので、1時間半もよけいにかかります。高いのもいやだし、遅いのもいや。イライラします。結局、池袋直通の超高価特急電車を選びました。めったに使わない豪華電車なのに、乗っているあいだじゅう不機嫌でした。

 なお、この東武日光発新宿行き特急ですが、かつて成田エクスプレスとして使われていた車両です。赤と白にペインティングされた、おしゃれな車両でした。これが新型に入れ替わり、あまった車両の使い回しです。現在のカラーリングは赤と朱だそうですが、ペンキをべっとり塗られ、年老いた婆さん芸者が、ほお紅を真っ赤に塗られて、再びお座敷に出された感じ。老骨に鞭打って、なんとも気の毒です。第一回目は以上でした。近いうちに再度出動したいものです。


二回目:5月10日(土)

 リベンジです。前回の失敗を踏まえ、猿岩下降と、新鹿沼駅10時38分発の快速乗車を果たすべく、計画を練り直しです。新鹿沼駅にもっと早く到着できないか、上板橋を始発電車で出発する検索をしてみました。

 上板橋4:56…5:07池袋5:11…5:23日暮里5:33…5:40北千住5:46…6:32南栗橋6:41…7:10新栃木7:17…7:37新鹿沼、北千住から2回も乗換えがあるが、前回より20分早く着くではありませんか、こりゃあ良い。が、しかし、日暮里で10分という乗り換え待ちがありますが、それ以外、つなぎが良すぎてご不浄時間がありません。日暮里10分もちょっとギリギリで、万一満室だと大変なことになります。地下鉄千代田線を使うとか、何か良い方法がないだろうか。ウンウンうなって考えました。

 そして、なんとも妙案にたどりつきました。池袋から赤羽、そこから宇都宮線で栗橋に行くのです。池袋5時30分発の埼京線でOKです。上板橋4時56分の始発で池袋5時07分着、乗り換え時間が23分です。長すぎるけれど、短いより良いです。なお、始発のつぎの5時13分発でも間に合うけれど、これでは池袋で用が足せません。このルートだと、料金は1562円。北千住経由より215円高くなりますが、背に腹は替えられません。背は痛くならないが、腹は痛くなってたまりません。

 上板橋4:56…5:07池袋5:30…5:39赤羽5:46…6:30栗橋6:36…7:10新栃木7:17…7:37新鹿沼、これで行きましょう。前回の快速は、南栗橋も栗橋も通過してしまいますが、今回の南栗橋発新栃木行きは各駅停車なので、逆にうまく乗換えができます。

 ちょっと整理すると、南栗橋は東武鉄道の乗り換え、つぎの栗橋はJRと東武の乗り換え駅です。さらにその先に栃木という駅があり、JR両毛線との乗り換え、つぎの新栃木は東武日光線と東武宇都宮線の分岐駅です。

 予定通り栗橋で東武鉄道に乗り換え、栃木に到着です。多くの乗客が下車します。ホームの反対側に電車が止まっています。当たり前のように下車し、つぎの電車に乗り換えました。しかし、終点だったはずなのに、今まで乗っていた電車が客を乗せたまま出発です。ちょっとおかしいです。で、調べると、その目の前の電車は、栃木発の東武宇都宮行きでした。栃木7時13分発、となりの新栃木7時16分着、ここで日光方面ではなく、東武宇都宮方面に向います。ボヤっとしていて、栃木と新栃木を間違えたのです。しまった、すべてが水の泡です。

 ここでやはりスマホ検索。この東武宇都宮行きに乗って、ひと駅先の新栃木に行けば、本来乗るべきだった新栃木7時17分発東武日光行きに乗れるのではないか。なんとかなりそうです。新栃木の構内図を調べてみると、島式ホームの反対側のようです。こうして、大失敗は修復できましたのでした。新鹿沼駅に、予定通り7時37分到着です。肝を冷やしました。なお、新鹿沼駅7時35分発、日吉神社方面のバスがありますが、たった2分差で乗れません。電車が、1時間に2〜3本しか止まらない駅、バスも2時間に1本くらいしか走っていません。あまりにも不自然です。

 前回より20分早く新鹿沼駅に到着。日吉神社まで、前回はキョロキョロしながら歩いたので30分かかったが、今回はまっしぐらなので25分。岩山頂上には、8時56分到着です。今回は猿岩から下ったら右へ、ゴルフ場脇の道を戻るつもり。こちらは近道なので、前回より10分くらいは短縮できそうです。9時15分まで頂上でゆっくりしました。9時半過ぎに里(ゴルフ場)に下り、日吉神社に10時、駅まで25分ですから10時半前には、絶対に新鹿沼駅に到着できます。そして10時38分の快速に乗車です。

 頂上の直前50メートルくらいの所に「→クサリ場」という標識がありました。ここまで戻って矢印に従えば猿岩です。で、戻りましたが、標識がありません。踏みあともなくおかしい。頂上に戻ってやり直しです。再度下っても出てこない。こんな繰り返しを3回、15分が経過しました。困りました。どうしてこんな所で道に迷ってしまったのでしょうか。そこに犬を連れた老人がやって来ました。恥ずかしながら道を尋ねます。「ああ、ここを行けば良いのですよ」、なあんだ、頂上から10メートルくらいのところに小さな分岐があり、はっきりした道がつけられています。

 猿岩がどこか尋ねたのですが、その老人は、こんな道もわからないヤツが行っては危ないといった表情です。クドクド説教しそうな気配なので、あわてて振り切りました。すぐにさっきの標識があり、しばらく稜線を歩きます。前回は、この途中で迂回ルートを下ってしまったようです。

 9時36分、猿岩到着。webでは、たいていの人がここを避けています。垂直に近い一枚岩、濡れていると滑る、腕力だけが頼り、とのこと。たしかに嫌な下りでした。ザイルの確保で、懸垂下降するような場所を、鎖にすがって下る。最初は60度か70度くらい。2本目の鎖の中ほどは、80度くらいありそうです。本当に、鎖だけが頼りです。岩は乾燥していたので、靴底のグリップは効きますが、穂高岳や剱岳に、こんなきわどい場所はありません。嫌だ嫌だで7〜8分、やっと鎖から開放されました。すぐにゴルフ場ですが、場内は歩行禁止です。少し手前に迂回道があります。

 頂上付近で15分の浪費は致命的でした。里に下ったのが9時50分、日吉神社まで30分くらい、新鹿沼駅到着が10時50分になってしまいます。ここで前回の経験が生かされました。途中でタクシーを呼びます。タクシー会社の電話番号を調べ、歩きスマホです。10時10分ころ、自分のだいたいの場所を確認し、日吉神社まで来てもらいます。10時20分に乗車し、5〜6分で新鹿沼駅に到着できました。コーラをガブ飲みし、シャツを着替えて一服し、当初の予定通り、10時38分発の快速電車に乗車することができました。それにしても、いつもいつも、時間ばかり気にしすぎでしょうか?



写真はこちらです。

  以 上