◆残雪の越後の山、丹後山・中ノ岳  

  常盤さんから5月の山行のご報告を頂きましたので紹介いたします。

 
   日 程:  5月21日〜22日(ずっと快晴)  
   メンバー:  田中、常盤  


 まもなく雪が消えてしまう越後の山、田中君と二人で登ってきました。越後の名山、中ノ岳(2085m)と、そのとなりの丹後山(1808m)です。

 この地域で、最も有名な山は八海山(誰もが称える、日本酒のブランドがあります)でありましょうし、人気の高い山は越後駒ケ岳(日本百名山)であるかと思います。そして、最も標高の高い中ノ岳を含めて、越後三山と呼ばれています。

 東京から上越新幹線1時間で越後湯沢、上越線に乗り換えて20分で六日町です。普段、会社に行くより遅い時間に家を出て、8時半過ぎに登山口の駅前に到着。ここからタクシー40分で登山口の十字峡という、すばらしく効率の良いアプローチでした。

 十字峡から三国川(さぐりがわ)沿いの林道を30分少々歩き、そこから丹後山への急登です。頂上近くの避難小屋に一泊し、大水上山、兎岳、小兎岳、中ノ岳へと縦走し、標高差1600mもの脳天逆落としを下って、十字峡に戻ります。

 事前に、三国川沿いの林道について、レクチャーを受けていました。雪が多い年は、この林道が曲者で、非常に危険であるとのことでした。しかし今年は雪の消えるのが早く、何でもない車道を坦々と40分でした。

 急傾斜で、登るのに苦労の多い登山道を我慢して登り、およそ3時間で景色の素晴らしい稜線近くに出ます。八海山、越後駒ケ岳、巻機山など、この地域の名山がズラリです。また湿性の高山植物が所かまわずという感じでした。イワイチョウ、ショウジョウバカマ、カタクリ、シャクナゲ、タムシバなどなど。登山道の真ん中に咲いていて、踏まなければ先に進めない場所もありました。

 丹後山避難小屋、無料で使わせてもらいました。到着時には我々だけ、その後同宿者が一名到着しました。清潔で水もあり、非常に快適でした。田中君が持参した、スピリタスというポーランド原産のウォッカ、アルコール濃度95パーセントだそうです。20倍に薄めてビールと同等、最初は注意して薄めていましたが、だんだんと酔いが回り、後半は5倍希釈くらいで飲んでいたようです。焼酎をストレートで飲むようなもので、やはり腰が抜けました。夜中に目が覚めたが、起き上がれないのです。トイレに小屋の外に出て、大転倒してしまいました。

 翌朝は4時半起床。なんとなく酒臭い身体に鞭打って縦走に出発です。小屋から指呼の間の丹後山、利根川水源、大水上山と大展望の下、気持ちよく歩きます。兎岳で山座同定30分、ここからは小さなピークの登り下りとなります。となりの小兎岳からの下り、雪渓上にトレースがありますが、急傾斜のトラバースで危ない。稜線上はヤブであり、雪渓の上端とヤブの接点を歩きます。ササと灌木につかまりながら、慎重に、へっぴり腰で。

 今回の装備ですが、ヤマレコを参考に、アイゼン、ストック無しとしました(田中君は持参、使用)。アイゼンはまあ不要でしたが、ストックは持参すべきでした。雪面を登るとき、ストック無しのキックステップでは、相当強く蹴りこまなければなりません。これでずいぶん消耗しました。軍手が大活躍。

 中ノ岳への最後の急登は、標高差およそ300mです。前日、今日の前半と、ずいぶん力を使い込んだので、もうヘトヘト。小屋を6時に出て、3時間かなと思っていましたが、5時間もかかってしまい、頂上到着が11時でした。

 ここから1600mもの下りが待っています。丹沢や奥多摩のような山の下りなら、2時間か2時間半で下れます。コースタイムは4時間40分、なぜだかわからないが、3時間もあれば下れるはず。どんなものでしょうか。

 十字峡への分岐は、登ってくる途中にあったはずなのですが、気が付きませんでした。分岐がわからないとは大問題です。ここで登場したのがGPS。スマホ片手にソロリソロリと歩きます。ありました、ほぼぴったりのところでした。登ってくる人のトレースはほとんど消えていましたが、明らかに下っていく小道が見つかりました。雪のためか、標識は立っておらず、GPS無しでは相当苦労したものと思われます。

 ガンガン下ります。最初は1分間に標高15メートルくらいのペース。これなら1時間で900mの計算。2時間で下れるんじゃないかしら。

 ところが、しだいに道が悪くなります。悪い道っていろいろあります。まず、路面がザレてきて、滑りやすいです。左側が深い谷で、滑ったらダイビングです。また、その路面が谷に向かって傾斜しており、恐ろしいのです。稜線の谷側に危うい道がつけられており、一部崩壊している場所までありました。

 危ないところでは、ヤブに入ってみたり、ササにつかまってみたり、とにかく全身の筋肉を使います。行程の半分のところ、日向山という小高い部分、たったの50mくらいの登り返しなのに身体が持ち上がらなくなりました。

 中ノ岳出発が11時半、日向山到着が13時、ここまで1時間半。タクシー会社に電話して、十字峡15時という予約をしました。日向山13時20分出発で、1時間40分あればなんとかなるでしょう。

 しかし、ここからも険しい道が続きました。疲労と暑さでだんだんとスピードが落ちてきます。残りの標高差300メートルくらいのところで、ついに足が棒のようになりました。通常は、膝のばねを使ってスルスル下りますが、動くのは上半身と腰のみ。ピノキオみたいだったそうです。

 タクシー、3時の約束、残念ながら5分ほど延着です。すみません、申し訳ありませんでした(当初の計画では、ここからしゃくなげ湖畔の車道を1時間半歩いて、バス乗車のつもりでした。全然無理、きっとアベックより遅いでしょう)。タクシーに乗車しても、しばらくは呼吸が整いませんでした。

 六日町到着、上越線の発車まで50分。駅から数分の温泉施設「湯らりあ」にて入浴。発車数分前に駅に戻りましたが、駅の階段が登れません、ハアハア。越後湯沢で途中下車、駅前の食堂にて軽く飲食、反省会。新幹線に乗れば、1時間弱で大宮です。池袋での乗り換えもエレベーター利用。さらに最寄駅からの帰り道、フラフラしていたらしく、タクシーから思い切りクラクションを鳴らされました。という、大満足のつらい山行でありました。また行きたい。



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