◆自主ワン 雲取山から飛龍山、将監峠  

  常盤さんから7月の山行のご報告を頂きましたので紹介いたします。

 
   日 程:  7月2日〜3日  
   メンバー:  田中、常盤  


 週末は、奥多摩の笹尾根あたりを歩こうか、それとも懸案の中山道踏破とするか、いろいろと考えあぐねていました。なにしろ中山道は、俄かライフワークではありますが、これが終わるまでは、おちおち遊んでいるわけにはいかないのです。

 数日前、田中君から「数回に分けて、奥秩父全山踏破しませんか?」とのお誘い。そう、それじゃあ早速実行、遊び優先です。まずは東端の雲取山から、登ったことのない飛龍山に挑戦と致しましょう。そのようなわけで、今回は公にお誘いする時間もなく、自主ワンということになりました。

 雲取山は、奥多摩のナンバーワンだが、奥秩父のワンオブゼム。そして、東京都の最高峰だが、埼玉県ではいくつかある人気の山の一つに過ぎない。ただし、1000万東京都民の後押しがあるので、やはり東京でいちばん高い山、といったところでしょうか。多くの人が奥多摩駅からバスで鴨沢へ行き、そこから石尾根経由で頂上を目指します。平成19年10月22日、皇太子徳仁親王殿下も、鴨沢からお登りになられていらっしゃいます。

 ところが秩父地方を代表する三峯神社を中心として、その奥にある、妙法ヶ岳、白岩山、雲取山を三峯三山と呼ぶのだそうです。三峯神社は、かの景行天皇の御時、日本武尊の創建と伝えられています。我らが徳仁殿下もえらいが、日本武尊もえらいです。雅子様もお綺麗だが、紀子様も負けていません、個人的には佳子様ですが。仮に、徳仁殿下より日本武尊のほうがえらいとするなら、三峯神社からたどるほうが、正統かも知れません。そこで今回は、こちらのルートを選択しました。と言いますか、三峯神社の標高が1000メートルもあり、こちらのほうが楽そうだな、これが本音です。

 池袋、6時15分発の準急に乗れば、飯能乗り換えで8時09分に西武秩父です。今回は、所沢で特急「ちちぶ号」(最近は、レッドアロー号とはあまり言わないらしい)に乗り換えて、7時42分に到着しました。早朝の快適な旅です。

 かつては、西武秩父から徒歩5〜6分で秩父鉄道の御花畑、そこから終点の三峰口、さらにバスで大輪、最後にケーブルカーで三峯神社でしたが、ケーブルカーが廃止になり、西武秩父駅前から三峯神社までの直通バスが出るようになりました。8時30分発のバスが9時45分に三峯神社到着。ケーブルカーの廃止で、逆に断然便利になりました。

 バス停で身支度して、10時出発。妙法ヶ岳は縦走をから外れているのでパス、続いて秩父宮殿下が命名されたという霧藻ヶ峰、白岩山を経て雲取山荘です。とても整備の行き届いた気分の良い道です。おしゃべりしながら、登ったり、ちょっと下ったり、長い休憩をとったり、15時半ころ小屋に到着しました。

 通されたのは、8畳くらいの部屋で、真ん中にこたつ。当然ながら相部屋ですが、8畳に4人という、山小屋では豪華版の部屋割りでした。夕食、朝食とも、ごちそうではないが、まあまあおかずもありました。2食付き7800円と高くないし、不満はありません。さらにトイレは水洗です。

 2人とも、缶ビール5本。さらに田中君持参の、ポーランドのウォッカ・スピリタス少々、それに加えて、同室者からブランデーをいただいて、おかげで熟睡です。まあ困ったものです。9時前に就寝、翌朝、私は3時半に目が覚めてしまいました。

 さて翌日のコースですが、雲取山に登り、飛龍山まで行き、そのまま下れば丹波山村です。お昼には下山してしまいます。飛龍山から奥秩父縦走路を進むと、2時間で将監峠。ここから一ノ瀬方面に下れば、三ノ瀬まで1時間半くらい。ただしタクシー代が10000円くらいかかります。2人だし、ちょっともったいない。どうしようか相談です。

 一ノ瀬とは、多摩川の上流にある集落です。今回の将監峠や笠取山方面を目指す人は、ほとんどがここを登・下山口にします。かつて、リゾート地として発展させようとした時期があるらしく、テニスコート、バーベキュー、マス釣り場など、今は打ち捨てられた施設が点在しています。一ノ瀬から一ノ瀬川に沿って下ると、多摩川の上流部分に行き当たります(多摩川は、奥多摩湖の上流を丹波川と呼ぶようです)。ここに青梅街道が走っており、下れば丹波山村方面(ここからバスで奥多摩駅へ行けます)、上れば柳沢峠(大菩薩山嶺の峠、峠の反対側は塩山です)という位置関係です。タクシーを呼ぶのは、柳沢峠の向こう側、塩山からです。マイカーかタクシー以外、アプローチ方法がない!

 夕方、田中君から、「落合」に行けばバスがあるかも知れないですよ、との提案。まったく考慮外でした。落合とは、一ノ瀬のほぼ真南、丹波川(青梅街道)沿いにある集落です。コースタイム、一ノ瀬から落合まで1時間半だって。あら、これなら何てことありません。でも途中、犬切峠という峠を越えねばならず、標高差200メートルもの登りがあります。試しに調べてみたら(雲取山荘、ドコモOKです)、春から秋の土日のみ、1日2本のバスがありました。午後のバスは15時半。条件すべてドンピシャリ、これは利用しない手はありません。

 翌朝、いつものお勤め、今回もうまくいきません。さらに朝食で出た生卵で胸焼け、気持ち悪いです。吐き気をこらえつつ、雲取山まで40分もかかってしまいました。雲取山荘のテン場から出発した、大学生のハイキングサークルの連中が、頂上で楽しそうに写真を撮っています。「おい君たち、大学かい?俺たちも40年前に、おんなじようにやってたんだよ。俺が先輩、こっちが後輩。」なんて会話を交わします(頂上に登り着いたころには、吐き気はおさまりました)。

 雲取山から三条ダルミへの急下降、そのあとは飛龍山直前まで、大きな登りはありません。少なくとも地図からはそう読み取れます。しかし、稜線の下につけられた細い道、道の左は深い崖です。注意を要するきわどい道でした。ちょこちょこした登りが出てきますが、険しくて、気分の良い道とは言えません。

 飛龍山から将監峠へも、同じように等高線に沿ったトラバースですが、こちらは穏やかで気分の良い道でした。将監峠到着が11時50分ころ。コースタイムによれば、三ノ瀬まで1時間半、ここからは車道で、一ノ瀬まで30分、最後に落合まで1時間半。バスに間に合うかどうか、ちょっと厳しいかも知れない。

 良かった、杞憂に終わりました。三ノ瀬までの下り、1時間半のところ、1時間で完了しました。30分短縮できたので、もう余裕です。三ノ瀬から一ノ瀬に回り込み、いよいよ本日最後の難関、犬切峠への登りです。道ばた、日陰に座り込み、水を飲んで、パンなどちょっと腹に入れ、気合を入れなおします。

 とにかくゆっくり、息が上がらないようなスピードを保ち、40分で犬切峠の上に出ました。これで本日の登りは完了です。あとはタラタラ下るだけ。丹波川沿いの落合には、15時10分ころ到着しました。三ノ瀬、一ノ瀬、ともに無人という訳ではないのですが、酒屋などの販売店はひとつもなく、自販機もありませんでした。落合バス停は、廃業した酒屋の敷地にあります。廃業はしていましたが、自販機は動いていました。残念ながら飲みたかったコカ・コーラは売り切れで、ほかの炭酸飲料で乾杯しました。16時半に塩山、駅前で軽く反省し、17時41分発のかいじ号で帰京しました。

 今回の落合バス停利用、田中君のお手柄であります。こんな使ったこともないバスルート、よく知っているものです。実は、彼にはもう一つのオプションがありました。三ノ瀬から、一ノ瀬川沿いに下って青梅街道に出て、そのまま下流方向に歩くと丹波山村に行き着きます。採った犬切峠越えは8キロ、200メートルの峠越えあり。丹波山村は14キロ、すべて下り。事前に調べていたら、どちらが楽であると考えるでしょうか。ところが、残念ながら答えが出ています。丹波山村(丹波バス停)発のバスは、15時45分、そのつぎは18時20分です。三ノ瀬到着が13時。丹波15時45分発のバスに間に合わせるためには、14キロを2時間45分で歩かねばなりません。時速5キロ、完璧にこれを守らねばなりません。これは精神的にきつすぎますよね(丹波発のバスの時刻、距離などは、あとで調べたもの)。

 最近、ひとりで近郊の低山に登る機会が多くなっています。通常は、早朝から歩き始めてお昼過ぎに下山します。ところが、12時ころから15時過ぎまでバスがないケースが目立ちます。お昼のバスに乗り遅れると、里道を2時間くらい歩くか、何もないバス停で3時間過ごすか、どちらかです。今回は、そのお昼のバスもなく、15時半の一本のみ。多少の緊張はありましたが、途中の時間短縮にせいか、ハラハラ感には欠ける下山となりました。というわけで、一ノ瀬のアプローチです。方法がまったく無い訳ではない、でありました。


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