◆自主ワン 丹沢主脈縦走 報告
 
 

  常盤さんから5月の山行のご報告を頂きましたので紹介いたします。

 
実施日 2017年5月3日(水)

メンバー 田中、常盤、知り合いの妙齢の婦人

天候 おおむね晴れ、半袖でちょっと寒い


 最近、どうも「なにか一発でかいこと」病です。田中君から、5月3日(予備日4日)は仕事がないので、丹沢あたりに行きませんかとお誘い。ワタクシ、休日ならいつでもOKの、気楽なサラリーマン。2人なら、きつい思いができる、パンパンの計画にいたしましょう。それで、日帰りでの丹沢主脈縦走です。

 当初の計画。小田急始発に乗れば、大倉登山口を7時に出発できます。塔ノ岳10時、丹沢山11時過ぎ、蛭ヶ岳12時半、姫次13時半、焼山15時、西野々または焼山登山口16時と設定しました。神奈中バスは、西野々16時20分しかありません。前半は緊張して休憩は最小におさえ、後半は良い道だから速歩または駆け足で。コースタイム12時間半のところ、9時間でという、少々舞い上がった計画としました。

 これに対して田中君より、それも良いが、逆コースにしたほうが、バスを逃すリスクがないですよねとの提案。湘南の輝ける陽光のもとに育った私には、丹沢とは、必ず小田急の各駅から北上するものとの固定観念がありましたが、それはなるほどその通りかもしれません。道志川方面に行くのなら、橋本からバスで三ヶ木乗り換えで、焼山登山口7時12分、西野々7時14分着。これなら大倉発とほとんど同じ時刻にスタートできます、これで決まり。と思いきや、上板橋始発に乗車し、池袋3分、新宿9分という理想的なつなぎで橋本到着が6時19分なのに、橋本から三ヶ木行きバス発車が6時20分という、なんとも常識外れのおバカなバスダイヤ。橋本駅構内を全速力でダッシュしても、数十秒差で乗り逃がす可能性大です。京王線と神奈中(小田急系)、そうとうな確執があるかのような、意地悪な設定です。

 それならば、一番安価で賢い方法。橋本でバスより1〜2分遅れでタクシーに乗る。運転手に、三ヶ木方面に行ってもらい、バスがバス停で停車しているあいだにバスを追い抜いてもらう。適当なバス停でタクシーを降りて、当該のバスに飛び乗る、という妙案が浮かびました。まあ、それも良いけれど。

 これまた田中君より、それなら藤野からタクシーで南下したら良いのではないかとの提案。しかも、焼山登山口でなく、道志川のもっと上流、青根(バス停の名前は東野…上記バスは、西野々どまりなので、バスの場合はこの選択はない)まで行きましょう。タクシーなら、林道の奥のほうまで入れますよ。そうかそうか、インターネット駆使して調べると、焼山登山口の標高が約300メートルなのに対して、クネクネした細い林道の終着点は500メートルであり、1時間ほどショートカットできます。主脈完全縦走より、1時間カットのほうが断然魅力的。もう後戻りできません。これだと、コースタイム10時間05分。田中君と2人なら9時間くらいかしら。大倉に下るなら、バスは夜の8時半ころまであるし、何の心配もなくなります(間に合うか、間に合わないかのドキドキ感が味わえないのは、ちょっと物足りないが)。そして、最後の難問。藤野のタクシー会社に予約電話を入れましたが、営業は8時からだそうで、利用不可でした。どうすべきか考えを巡らせていたら、ヒラヒラと天啓が。地図とにらめっこの末、となりの上野原からもそれほど遠くなく、ここなら早朝のタクシーがありそうとの声でありました。為せば成る、為さねばならぬ、なにごとも、ですよね。上野原6時46分着予定、タクシー6時50分の予約が完了しました。

 なお、当初は2人で行く予定でしたが、知り合いの妙齢のご婦人が同行しても良いとのことで、急遽このマゾ的山行に飛び入りすることになりました。最初の計画、大倉から焼山登山口、コースタイム3時間半短縮しなければならぬは、スーパーマゾ。つぎの主脈縦走完遂、コースタイム12時間、下山の時間制限はなしは、相当なマゾ。決定した短縮コースは、私たちの年齢からすると、まあまあ普通のマゾ設定。ただし、最後の大倉尾根1200メートルの下りでの、膝痛を気にされる婦人を規準にすれば、やはりスーパーマゾであろうかというところでしょうか。

 丹沢、とくに北部と言えば、ヤマビル天国であります。5月初旬なら、まだ大丈夫か、もうダメかの分岐点です。私はヤマビルファイター、婦人はヒル下がりのジョニー(どちらもヤマビル忌避剤)で入念な武装。田中君は無謀にも、忌避剤無しでの実験とのことで無防備。ヒルは、通常靴から侵入し、なにも気付かずに下山したら、靴下が血だらけというケースが多いもの。結果は、下山してからのお楽しみです。

 集合、タクシーともに順調、7時47分スタート。1時間に標高400メートルくらい登り、10分ほど休むの繰り返し。12時を少し回ったところで蛭ヶ岳到着です。赤い花とか、白い花とか咲いていましたが、そんなことより、雪を纏って神々しい南アルプス様のお歴々がまぶしい。北は甲斐駒ケ岳から、白根山脈、赤石山脈のほぼすべてが顔をそろえ、聖岳の左、上河内岳、茶臼岳まで確認できました。もっと南のほうまで見えれば最高なのですが、残念なことに図体のでかい富士山が邪魔をしています。

 蛭ヶ岳から丹沢山、さらに塔ノ岳まで、丹沢らしくない、おだやかな草原と広閣な展望には驚かされます。塔ノ岳に近づくにしたがって、何十回とおとずれて見慣れた相模の風景へと移っていき、安心感が深まります。

 塔ノ岳到着が15時を過ぎました。婦人はどうしてもダメだったら、途中の山小屋に、一人で泊まるというオプションを考えていたようですが、それこそ山を甘く見ていたと言えます。たとえば、丹沢山頂上にあるみやま山荘、定員は50名弱の小さな小屋です。午後2時ころ、ここで行動停止と思われる登山客が、小屋周辺に50人以上いました。もちろん小屋の中にも数十人。塔ノ岳に向かって歩いた、午後3時ころまでにすれ違った登山者のほとんどが、みやま山荘を目指していたでしょう、これも数十人。たぶん、与えられるスペースは、ひとり一畳の半分程度のはず。蛭ヶ岳山荘も、尊仏山荘の似たり寄ったりの混雑ぶりです。
   
 そんなわけで、多少の膝痛くらいなら、下るっきゃない。5連休初日、天気は晴れ、翌日も問題なさそう。しかたないと言うか、良かったと言うか、素晴らしくも、頼もしい盛況ぶりでした。しかも私たち、ほとんど人気のない道志川側から登り、大倉尾根の下りは夕方になったせいで、登ってくる人はほぼ終わっているという具合。すれ違いのストレスをほとんど感じることもない、豪華な山旅に、満足感倍増でありました。

 3人とも元気、婦人の膝も大丈夫。ただし、これまでの行程でかなり消耗しているのは当然で、大倉尾根の下りに2時間半もかかりました。でも、そんなことぜんぜんOK。まわりは、かの牟田口廉也将軍に率いられた帝国陸軍、インパール作戦のような有様でありました。たぶん、予定より大幅に遅くなってしまったのでしょう。傷病兵のような下山者。杖にすがりつつ、足を引きずり、時速1キロがやっとという方々がおよそ半分でした。

 大倉バス停、5時35分のバスに乗れるだろうと踏んでいましたが、もう絶対無理。こんなとき、たいそう不機嫌になってしまう稚拙な私ですが、この日はそんなことありませんでした。なにしろ、17時ころのバスダイヤ、16時55分、17時08分、17時35分、17時48分、18時08分、15分おきくらいにバリバリとあるのです。余裕綽々というのは、こういうことなのでしょう。しかし18時08分の次は30分後なので、このバスに乗り遅れることは許されません。雑事場あたりからバス停まで、普通に歩いて20分です。このとき17時30分くらいですから、40分弱もあります。余裕があるので、大倉高原経由で下ったせいもありますが、どんどん時間が過ぎてゆきます。結局、最後の車道を少し急ぐ結果となり、到着は発車の30秒前でした。まあ、乗りおくれても待てば良いし、タクシーがあれば、それに乗ってもそれほど費用が嵩むわけではありません。

 渋沢到着18時半。北口駅前、いちばん良い場所に、「目利きの銀次」という、入りやすい居酒屋があります。私たちも何となく入店しましたが、あまりの喧騒ぶりに閉口です。申し訳ないけれど、注文前に退出しました。斜め前の中華料理屋(本格中華、ラーメン屋ではない)で反省会。入店時に客ゼロで、なかなか気分よく反省できました。さらにうれしいことに、靴を脱いでみたら全員無傷。良かったけれど、理想を言えば、無謀なる実験者のみ、哀れな結果になってもらいたかった。ああそれから、渋沢駅前の公衆トイレはウォッシュレットですよ。

 今回の行程です。タクシーを降りたところが、およそ500メートル、蛭ヶ岳山頂が1672メートルで、その差1172メートルです。その間に110メートルと50メートルの下りがあります。累計の登りがおよそ1320メートル、下り160メートル。同様に、蛭ヶ岳から丹沢は、登りの累計が230メートル、下りの累計が335メートル。丹沢山から塔ノ岳は、登り174メートル、下り250メートル。さらに下り一方と言われる大倉尾根も、金冷やしから花立までと、小草平の下から堀山までの2か所、合計50メートルの登りがあるので、1240メートルの下りです。足し算してみました。登りの総合計が1774メートル、下りが1985メートル、これを還暦3人組で日帰りなのでありました。コースタイム10時間05分のところ、休憩を入れて10時間20分、すごい!キ〇コ、よく頑張ったな。
 
 
(写真を写真集に掲載していますのであわせてご覧ください。)
 
   以上