◆小旅行 南信濃・遠山郷、下栗の里と和田宿
 
 
 

 常盤さんから5月の行事の報告を頂きましたので、掲載いたします。

  
 日程 平成29年5月13日(土)~14日(日)

 参加者 水堀、阿部、中村、石井、三木、平石、沼田、斎藤(隆)、
       松田、和田、田中、北島、小針、生田、常盤(記)

 天候 初日は雨のち曇り、翌日は高曇りのち晴れ


 昭和39年、私が小学校5年のときに、椋鳩十さんの「月の輪グマ」という童話が、国語の教材として使われました。赤石山脈の山奥にイワナ釣りに行き、そこで母子グマに遭遇する。母グマがいないすきに、子グマを捕まえようとするが、もう少しというところで母グマが現れる。そして母グマが、命がけで滝つぼに飛び込むというお話です。

 どうしちゃったんでしょうねえ。単なる国語の教材なのに、何十年たってもその話が忘れられませんでした。赤石山脈は南アルプスであることは承知していましたが、物語の舞台になったのが、光岳登山の基地周辺だと認識したのが、ほんの数年前でした。2013年に易老渡から光岳、そのあと聖岳から便ヶ島へと下山したのですが、その際に、遠山郷の和田宿で一泊しました。しかし下栗の里はタクシーでかすっただけで、とても残念な思いをしました。

 昨年の暮れころだったと思いますが、NHKの旅番組で遠山郷が取り上げられました。遠山郷は、熊、鹿、猪など、野生の獣肉を味わうことができることで有名ですが、このジビエは冬こそ脂がのって美味い、とかいう内容(だったか?)。下栗の里の紹介もあったような気がします。よし、今すぐGO!と、簡単にはいきません。参加者募集し、宿や料理屋を手配し、交通手段も決めなければなりません。せっかく太った獣たちの脂は、多少落ちてしまうかもしれませんが、気候の穏やかなこの時期に実施することにしました。

 とにかく長野県の最南部です。南信の中心である飯田まで、中央本線、飯田線と乗り継いで、最低6時間もかかりますが、高速バスなら4時間です。飯田からひと山越えて遠山郷中心の和田宿までタクシー1時間、さらに下栗の里へは、すれ違いが困難なレベルの細い道を30分ほどかかります。しかしリニアが開通したら、飯田は品川から1時間以内となるわけで、「秘境」というテーマでの劇的な変化があるかもしれません。自分の目が白くならないことを、祈るばかりです。

 バスタ新宿から、雨の高速道路。ガラガラです。とても良い気分です。定刻に飯田駅前に到着。手配してあったジャンボタクシーに乗り換えます。天竜川流域から、矢筈トンネルを抜けて上村川流域へ。途中、上町の上村小学校脇から、下栗の里へと向かいます。予想されたとおり、すれ違いができず、バックを余儀なくされる場所もありました。

 お昼過ぎに、本日の宿「高原ロッジ下栗」に到着しました。部屋の用意ができていないため、とにかく中に入ってもらっては困るらしいです。となりの「はんば亭」というそば処で昼飯です。手打ちそば、二度芋、こんにゃく、山菜、どれもうまいです。ただし、動物性蛋白質は見事に皆無でした。これは事実ですが、文句を言いたいのではありません。動物なら、翌日、ガバガバ食べます。それよりも、ここの二度芋は、まさに絶品でした。

 雨も小降りになり、午後は下栗の里の散策です。クネクネした道を下っていきます。無人となった家も少なくありませんが、各家のお花は、きれいに管理されています。時々戻ってきて、花の世話などをしているようです。おばあちゃんとあいさつを交わします。なんとも、のんびりしたムードが漂います。そのころ、新宿を1時間ほど遅れて出発したメンバーが到着。総勢15名がそろいました。さっき下ってきた坂道を、ハアハアしながら登ります。酔いが回ってちょっと苦しい。

 この地域には、3軒の宿泊施設があります。民宿が2軒と、当ロッジ。洋風であり、標高がいちばん高く、料金もいちばん高いロッジを選びました。と言っても2食付きで7600円くらいですが。まあ、田舎気分を味わうのだったら、民宿の方が良いようです。ロッジの客室、6畳くらいの部屋にベッドが2つ。テレビなし(ここいらは、どこもそうらしい)、トイレはきれい、食事は貧弱ではないが、それほど美味くない。とにかく簡素な宿でした。

 翌朝は、玄関前に5時に集合。ビューポイントという、里が一望できる地点へと向かいます。林道を離れて500メートルくらい。おお、ポスターで見た景色です。まあ、なかなか。それより、聖岳が立派です。光岳も見えますが、こちらは地味です。雨上がりで霧がただよい、良い気分です。

 7時半、早めの朝食を済ませて、和田宿へと下ります。マイカー、タクシー、徒歩の3組に分かれて出発です。私は徒歩組。遊歩道から車道を下るのですが、どれほどかかるのかはわかりません。2時間くらいかとの見当をつけ、ロッジの管理人から1時間40分とのアドバイスを受けました。とても歩きやすい道、途中に湧水があったりして、サクサク下ったら、1時間少々でした。

 タクシーと、マイカーの迎えをお願いし、和田宿です。9時から開いている、和田城という郷土資料館。この地域、遠山氏という一族が栄えていたらしい、霜月まつりというお祭りがすごいらしい。ふーん、なんだかアカデミックでした。いただいたコーヒーが美味い。10時に退館し、城から見える「かぐらの湯」へと進みます。とてもコンパクトな町で、こっちのはずれにある和田城から、あっちのはずれにあるかぐらの湯まで、徒歩5~6分。

 風呂は10時から11時前まで、ジビエの星野屋に11時集合、時間厳守。ほんとうは、10時30分ころから三々五々集まって、じゃんじゃん飲みましょうと、星野屋10時30分と伝えてありました。が、大先輩から一喝、全員揃わなきゃダメだ。で、10時半には店に行かなかったのですが、10時42分に、お店から電話ありです。長野県人は几帳面なのです。もっ申し訳ありません。すぐ行きます。ああ、思った通りには行きません。アーモンド型のかわいい私の目が、少しずつ三角形へと変わってゆきます。

 時間ギリギリで、全員集合。今回のメインイベント、獣肉ジビエ大飲食です。メインは熊のなべ。鹿肉メンチ、コロッケ、鹿肉ステーキ、猪肉の炒め物。今回の熊肉は、ご主人から「いちばんうまいとこだよ」とのお墨付きの肉でした。たしかに美味い気がしたけれど、臭くないねとか、硬くないねとの、ネガティブではないという声の方が、多かった気がします。それはそうとして、還暦過ぎて、人生初めての熊肉でした。

 もう、5分刻みでの行動です。だんだんとすごみが増します。12時30分に玄関、35分にマイカー組を見送って、40分に和田バス停到着。12時50分に乗り合いタクシーを頼んであります。村内を走る路線バスですが、大型のバスでなく、小型のタクシーがそれを請け負っています。こちらから乗車時刻の指定はできませんが、電車の発車に合わせた運行です。平岡駅までひとり500円と格安です。平岡駅に13時05分ころ到着。平岡駅はJR駅とホテルが一体になったモダンなつくり。しかも飲み物、食べ物、お土産のほか、洋服やエロ本まで売っている、コンビニエントな代物でした。

 早く帰りたければ、13時25分発の豊橋行きに乗車。飯田線、3時間乗車を耐えれば、豊橋から新幹線ひかり号で、18時03分品川着。19時帰宅が約束されています。2人がこちらを選択。安く帰りたければ、13時39分の岡谷行きに乗車。飯田から高速バスで、19時15分新宿着、ただし渋滞があるので、保証はなし。残りの方々はこちらでした。

 バスは順調に進みました。右に南アルプス、左に中央アルプス、そして前方に諏訪湖が、美しい夕暮れ。っと、マイカーの先輩から電話。「おう、今藤野なんだけどよ、大月から上野原のあたり渋滞だぞ」とってもうれしそうなお声です。そうかあ、渋滞かあ。さすが先輩、おっしゃるとおり大月を過ぎたあたりでギュウギュウ状態になりました。時速10キロくらい。でも、運転していないので、寝てれば良いのです。こりゃあ楽ですね。バスタ新宿、20時30分到着。あれほどの渋滞で、絶望状態であったにしては、1時間15分遅れは上出来でした。そしてまた、翌日から日常の生活が、戻ってきてしまったのでした。


(写真を写真集に掲載していますのであわせてご覧ください。)

    以 上