◆朝日連峰・大朝日岳 報告
 
 

 
   日 程:  平成29年6月24日(土)〜25日(日)  
   メンバー:  平石、三木、田中、北島、常盤(記)  


 1973年、野歩の会2年時の夏合宿は、飯豊・朝日連峰でした。リーダーは3年の若菜先輩、2年は芦川、宮田、常盤、1年は鈴木、新井の6名でした。

 今もそうですが、当時は特に体力的に劣っていた私、東北の山なんてつらいだけで嫌でした。財布さえ重ければ、北アルプスで楽勝なのにとの思いです。

 それからおよそ20年後の1996年、気まぐれのように飯豊連峰を縦走したことが一回ありますが、朝日に行ったことはありません。40年前のことを、ちょっと思い出してみます。

 上野から夜行列車に乗って、日本海側のどこかの駅で下りました。急行佐渡号で新潟に行き、白新線・羽越本線で鶴岡に行った模様です。最初の幕営地が、朝日連峰北端の大鳥池畔であることをはっきり記憶しており、そこからの推測です。

 駅前からバスでどこかまで行き、さらにトラックの荷台に乗せてもらったような、あいまいな記憶があります。で、どこかから嫌々歩き出しました。最近の案内によると、大鳥川沿いの、泡滝ダムというところから歩き始めるようですが、ここなのかどうかわかりません。

 歩き始めがお昼近いでしょうし、到着がえらく遅くなったという記憶もありません。3時間くらい、もしくはもう少しかかったか、暑い日でした。

 翌朝、起きたらザーザー降り。水を含んで重くなったザックなどをパッキングしたけれど、そのまま停滞したように思います。幕営地の隣にある大鳥小屋です。素泊まり300円だったように記憶しています。国鉄初乗りが30円だった時代にその10倍です。今の物価、JR初乗り140円の10倍で1400円くらいですから、やはりずいぶん安かったです。

 次の日、たぶん以東岳に登ったのでしょうが、雨の中を移動したという記憶だけで、なんにも覚えていません。宿泊は、つぎの狐穴小屋か、もう少し先の竜門小屋、とにかく雨ばかりで、小屋の素泊まりです。そう言えば、どこかの小屋で休憩したのですが、その時食べたビスケット、たぶん日清ココナッツサブレー、生き返るような美味しさでした。

 朝日連峰の最高峰は大朝日岳で、手前に金玉水という水場があります。ここで給水したことは間違いなく、キンギョクスイでなく、小学生のような冗談を飛ばしていました。

 稜線上で、何日過ごしたのか記憶にないのですが、朝日連峰のあといったん町に出て、さらに飯豊を目指すという計画は断念せざるを得ません。若菜リーダーの決断で、朝日だけで、合宿は終了と変更されました。

 大朝日岳から、平岩山方面に下山です。はっきりと記憶しています。平岩山から御影森を経て、朝日鉱泉への下山予定だったような気がしますが、祝瓶山方面へと下ってしまったようです。とにかく間違いに気づき、道の真ん中でビバークしました。フォースドビバークというほどせっぱ詰まっていたのではありません。雨ばっかりで、嫌になってしまった。道を失って迷ったのではなく、このまま進むと下山まで時間がかかる。ほんの1〜2時間ほどだが、登り返すのも面倒、アンモチベイテッド・ビバーク。テントの中で、天ぷら揚げて食べました。美味しかったです。

 翌日、大朝日岳まで登り返し、中ツル尾根を下りました。ここは、ほとんど下り一方です。尾根を3時間くらい下ると、二股という地点に出ます。ここで沢を渡るのですが、太いワイヤーが2本張ってあるのです。上のワイヤーにつかまり、下のワイヤーに足を置いて、空中20メートルくらいのところを進みます。その幅は30メートルくらいだったのでしょう、全員が通過するのに、30分以上かかったように記憶しています。

 沢沿いを1〜2時間進むと、朝日鉱泉でした。木造3階建てくらいの、これぞ湯治場でした。鋳物のガスコンロ、30分10円(価格ははっきりしない)などという便利道具がありました。鯨肉を入れたカレーライスが美味かった。鈴木君が作ってくれたモロキュウ、美味しかった。翌朝は、冷たい鉱泉に入りましたが、心地よかったです。

 朝日鉱泉からの帰り、林道を2時間くらい歩いてバス停。そこから寒河江経由、2時間くらいバスに揺られて、山形に出ました。たぶん急行列車で帰京したのでしょうが、山形の町中を含めて、なんの記憶もありません。



 あれから、44年もの年月が経過しました。身長こそ当時のままですが、その後体重が15キロくらい増えて、かなりなおデブになり、胃切除をしたため、元の体形に戻りました。髪は真っ白になり、顔や腕には老人性のシミが目立っています。

 雪の消えかけた時期、豪雪地帯の山は一年で最も魅力的な様相を見せます。昨年の利根川源流の山と同じような山、そうだ朝日連峰に行きましょう。田中君と計画をたて、有志を募ったところ、中村さん、三木さん、平石さん、北島さん、鎌田さんから手があがりました。残念ながら、脚部の不調で中村さん、家族の都合で鎌田さんが参加できなくなり、5名での実行となりました。

 私たち登山を趣味とする人は、飯豊・朝日とひとくくりにすることが多いと思います。国立公園って最近はやりませんが、ここは磐梯朝日国立公園の一部です。磐梯山、安達太良山、吾妻連峰、月山などの出羽三山、そして飯豊連峰、朝日連峰、みんな磐梯朝日国立公園に含まれています。

 今回、平石さん、田中さん、北島さんの3人が6月23日に山形駅前に前泊。三木さん、常盤は24日の早朝発としました。前泊組は山形からタクシーで、早朝組は左沢(あてらざわ)駅前からタクシーで、登山口の古寺(こでら)鉱泉へと向かいました。3時間ほどの時間差です。

 以下の記録は、早朝発組の経過時刻です。左沢に10時03分到着、およそ1時間のタクシー乗車で、古寺鉱泉手前の駐車場です。11時12分に歩き始めました。数分で鉱泉、宿の脇から登山道が始まります。最初の15分くらいはジグザグの急登、そこからはゆったりした尾根歩きです。景色はほとんどありません。

 50分歩いて休憩、さらに30分ほどで一服清水です。せっかくだから、軽くのどをうるおします。清水から数分で、ハナヌキ峰からの稜線に出ます。さらに1時間ほど歩いて古寺山。ここの手前で、雪の上を歩くところがありましたが、ほんの数十メートル、傾斜もなく、なんでもありません。

 古寺山から少々下り、小朝日岳を目指します。鞍部から100メートルほど登ると、小朝日岳巻き道の分岐。楽な巻き道をとりたいところですが、1〜2か所残雪が残り、危険な場所があります。巻き道は回避して、そのまま小朝日岳を目指します。分岐からさらに90メートルほど、けっこうつらい登りでした。小朝日岳からは、朝日連峰の山並みが見渡せます。44年前の合宿では、終始雨雲の中だったので、初めて間近から見る朝日連峰でした。若菜リーダーが言っていた通り、確かに雄大で素晴らしい。

 小朝日岳から、200メートルほど下ります。最初からわかっていたので、淡々と下ったわけですが、知らなければ「何、この下り、もったいない!」怒ってしまいそうです。熊越という名前の鞍部から、しばらく登り返すと、銀玉水の水場です。噂にたがわず、素晴らしい水場でした。稜線から30秒、水量豊富、すごく冷たく、うまみたっぷり。

 さあ、最後の最難関です。目の前の雪壁を登ります。前夜泊組を含め、ここでほとんど誰もがアイゼンを装着します。もちろん、ストックまたはピッケルも活躍します。ところが、私たちは持参していません。2人とも、普段ストックを使う習慣がないし、この雪壁だけのためにアイゼン、ストックを携行するのは、重量面で不利だとの計算です。

 ヤマレコに掲載された記事、地元大江山岳会からの情報によると、雪壁の長さは300メートルほどだそうで、雪面は柔らかく、キックステップで対処できると判断しました。急な部分が100メートルくらい、傾斜は徐々に弱まります。ただし、支えのないキックステップは、足の筋肉を激しく疲労させます。雪面から岩稜に移るあたりで、ふくらはぎが痙攣しそうになりました。まあまあ、つらいのは想定通り。

 ここが終わると、大朝日岳避難小屋は指呼の間です。前夜泊組の3人が、小屋の前で出迎えてくれているのがわかりますが、もうヘトヘト。うなだれて歩き、前方を見る元気なしです。16時52分、ずいぶん疲れましたが、無事、予定の時刻に到着できました。靴を脱ごうとした際、こむら返り、痛かったぁ。なお小屋の管理費は1500円で、JRの初乗りのだいたい10倍です(44年前の素泊まりと同じくらい)。気さくな管理人さんでした。

 翌朝は、4時起床。できれば5時出発としたかったのですが、稼働しているトイレがひとつしかないなど、なんやかや5時半を過ぎてしまいました。6時過ぎに大朝日岳山頂、昨日は一日中晴天でしたが、今日は下り坂です。さっさと下りましょう。中ツル尾根の急坂を下れば、沢沿いの平坦な道1時間半でゴールの朝日鉱泉です、のはずでした。

 そうそう、下る前に花のお話。お目当てはヒメサユリとヒナウスユキソウでした。ヒメサユリは、来週が最盛期だけれど、今週もいけるはずでした。が、今年は春先の気温が低かったためとか、1本も見られずじまいでした。ヒナウスユキソウ、それはそれは可愛らしく、上品なお姿でした。その他(と言うのは失礼ですが)ショウジョウバカマ、カタクリ、ハクサンイチゲ、チングルマ、シラネアオイ、ヨツバシオガマ、イワカガミ、などなど、雪が消えた直後はみんな素敵です。

 もうひとつ、虫対策です。事前の調査で、ものすごい数の虫に悩まされると認識していました。頭からかぶるネット、平石、田中、北島。蚊取り線香、平石、北島、常盤。虫よけ剤、全員。平石さん、北島さんは、虫除け3点セットの三冠王でした。予想通り、ブヨや羽虫などブンブン飛んでいましたが、何とかひどい目に合うことはありませんでした。

 6時15分、中ツル尾根を下ります。コースタイムでは尾根の下りが3時間10分。二股から沢沿いを1時間40分となっています。5時間弱ですから、11時ころ朝日鉱泉です。鉱泉の入浴は、予約制となっており、余裕をもって12時としました。帰りのタクシー、これも余裕たっぷり13時半としました。

 この中ツル尾根、上部は普通の下りでしたが、最後の200メートルくらいがひどい急坂で、とてもとても苦労させられました。ここで1時間半くらいかかり、二股到着が10時ころ。また、沢沿いの道もアップダウンが厳しく、鉱泉12時到着が難しそう。そこで、北島さんと常盤が先行することにしました。風呂場はひとつしかないので、先着した北島さんが、先に入浴してしまい、あがったころに後続組3名が到着して、男4名が入浴する。

 二股からの沢沿いの道、地図と44年前の記憶によれば、基本は下り気味の平坦、ただし30メートルくらいの登りが何か所かある、でした。がしかし、今回の感想、激しい登り下りが何か所もある、沢沿いのへつりや、崖っぷちのきわどいところが連続する、とても嫌らしい道でした。先行した私たちが、鉱泉にようやくたどり着いたのが12時20分。10分ほど待たされて、北島さん入浴。なお、朝日鉱泉は以前の場所から移転しており、建物も新しくしゃれた雰囲気です。

 13時ころ、後続組到着かと思われましたが、女性客。この方が風呂に入ってしまったので、出てくれるまで男は入れません。13時10分ころ、後続組到着、13時20分ころ北島さんが風呂からあがりましたが、まだ待たされます。そのころ予約したタクシー到着。男4名は13時30分ころから10分ほど汗を流し、14時前にようやく出発することができました。

 雨の中、タクシーは快調に山形へ向かいます。また44年前のことです。朝日鉱泉で合宿は終了し、翌朝バス停まで歩いたのですが、いったいどれほど歩いたのか?タクシーの料金メーターと、景色を見比べます。ジャンボタクシーですから、1キロ500円弱です。6800円くらいのところで、山道から里に変わり、神社なども出てきました。当時のバスの停留所は、ここらあたりでしょうか。朝日町の白倉、立木、石須部というあたりです。タクシーの料金からの推測ですが、14キロくらいです。3時間くらい歩いたのかなあ、検証不能ですが、多分そんなところ。ちょっとオセンチな私でした。

 山形、大変裕福な感じです。寒河江だけでなく、山形市郊外もさくらんぼだらけ。さくらんぼって、ひと箱数千円もします。ビニールハウスで栽培するようですが、昔も今も高嶺の花で、値崩れしたという話は聞いたことがありません。ハウスひとつで、数十万円か、百万円以上になりそうです。新規のハウスも続々と建設されている様子です。それにつや姫、人気のツヤツヤした米です。たまたま、サクランボ祭りと重なったからかも知れませんが、田園風景は非常に好ましいものでした。

 山形駅周辺での反省会。14時でランチタイムは終わりで、夕方の営業は17時から。まるでラテンの国のように、午後に営業しているお店はほとんどありません。私の調べでは、ファミレスのビックボーイならOK(それ以外は全滅)でしたが、田中さんから、駅ビルにある澤正宗ならやっているとの情報を得て、即そこに決定しました。ちゃんとした居酒屋でした。反省しつつ、予約してあった指定席を発券したり、また戻って反省したり。

 山形新幹線、混んでいます。帰りの電車、うっかり指定をとらずにいたら、数日前なのに売り切れ寸前でした。田中、北島、常盤は、売れ残りゲットした指定席、先輩方2人は出たとこ勝負の自由席(何とか座れた模様)、で帰京したのでした。翌日、久しぶりの筋肉痛で、少々困惑しています。そうかそうか、銀玉水上の雪渓で、足が攣りそうになった、それは仕方ないでしょうね。来年も、この時期にどこかに行きたいなあと、ツラツラ考えています。
   常盤(S51)  
 



タイムライン(田中さんの記録)


2017624()

平石、田中、北島

古寺鉱泉7:43  670m

小休止8:41-51  973m

水場9:25-36

はなぬき峰分岐9:44  1133m

三沢清水 10:22-57

(通過)古寺山11:18

小朝日岳12:21-37  1653m

小休止13:15-28  1529m

銀玉水14:05-40

大朝日小屋15:35-55

大朝日岳16:05-20(ピストン)

大朝日岳 16:32



三木、常盤      コレしか分かりません

古寺鉱泉11:00

古寺山13:54

大朝日小屋16:55



2017625()

常盤、三木、平石、田中、北島

大朝日小屋5:49

大朝日岳6:07-14  1875m

小休止7:02-18

長命水8:26-44 1070m

小休止9:23-27  826m

(通過)吊り橋1 10:05 652m

小休 階段橋10:15-25 678m



この間に常盤、北島先する

朝日鉱泉12:20



三木、平石、田中

小休 吊り橋2 11:13-24  610m

小休 吊り橋3 12:19-24  569m

朝日鉱泉13:02



 
 
   以上