◆「大菩薩周辺・石保戸山と白沢峠」報告 

 
日 程:平成30年5月19日(土)快晴

コース:中央本線「塩山駅」=タクシー= 新犬切峠 − 石保戸山(いしやすどやま) − 鳥小屋分岐点 − 白沢峠 − 一之瀬高橋 − 落合 =タクシー=「塩山駅」

同行者:中村、小柴、阿部、佐藤、斎藤(恭)、和田(記)
 


(概要)
変わった山歩きのお誘い。快晴。爽やかな5月の風と明るく開放的な防火帯。10日間季節が早い。新緑若葉の下、日差しを避け木陰を拾い渡り歩く。ジェットコースターのような登りや下りは遠足的興奮だった。緑に囲まれた山頂から防火帯を下ると正面に霊峰富士が聳え立ち感激する。

後半は変化が乏しい長い林道歩き。飽きが来た頃、白沢峠で予期せぬ遺物に出会う。なぜここに?。下山道を間違えそうになり、慎重に大ダル林道交差点に下った。繋がるはずの携帯電話が繋がらない高橋集落。さらに落合集落までの歩き。疲れた体にひどく堪えた。落合でタクシーに乗った。
新緑若葉の山を十分すぎるほど満喫し十二分に疲れた。山頂が目的ではなく、様々な山道歩きを楽しんだ初夏の1日、長い1日であった。


(入山以前)

■20日は早々と晴天と予報が確定、長く伸びた前線が近づく19日は確定が出ない。17日にやっと「朝、雨は上がり、のち晴れ」の予報、嬉しくなった。

■石保戸山はOB会へ参加し始めた12、13年前から皆と行きたい山のひとつだった。
コースや季節を2、3回シミュレーションしたが、いつも下山口で躓いた。白沢峠の下りは一般山道で「塩山駅と西沢渓谷間の路線バス道」へ下るのが一般的。しかし、荒れた急な沢沿い道で踏み跡が薄い箇所もある。朽ちかけた下り桟道もある。躊躇いがあり、計画は伸び伸びとなった。帰りもタクシーを利用し高橋集落へ下ることで実現に踏み切った。
西丹沢、山伏峠近くに石保土山(いしほどやま・1,297m)という似た名前の山がある。

■私は乗り込む電車時刻を1時間見誤り慌てて自宅を出た。各停に乗車予定を特急に変え、集合時刻に間に合わせる。乗り遅れた場合は、皆には目的地を大菩薩に変更してもらう覚悟を決めていた。


(新犬切峠)
■中央本線小仏トンネルを抜けると晴れ間が広がった。ジャンボタクシーを予約できず、塩山駅からタクシー2台で向かう。民家の庭に咲く初夏の花々を眺め、藤の花咲く山間部を走る。大菩薩登山口、柳沢峠、落合集落を抜け、高橋集落直前から高度を上げ、40分で新犬切峠(1372m)に到着。9,000円/台。
山頂との高度差は300m。5年前の笠取山と同様に、峠も山もうるさいエゾハルゼミの鳴き声に包まれた。周囲はすでに若葉、10日ほど季節は進んでいる。気温は20、21℃。

■日差しが強く日焼け止めを塗る。炎天下の防火帯歩きが思いやられる。10時前に出発。峠にいた3人パーティは先に出発しすぐに視界から消えた。山中ではほかに単独行者に遭ったのみで、私たちだけの山となった。


(防火帯歩き)
■防火帯は水源林保護として東京都が管理されているもの。
防火帯は大きく波打つ山岳ゴルフ場のフェアウェイのようだ。広い草原の両側にはミズナラ、サクラ、カエデなど落葉広葉樹林が立ち並ぶ。空は青く、木々の葉は若葉色、涼しい薫風が吹きぬける。大地に荒れはなく適度に柔らかい。最高に快適な山歩きの条件が整った。山々にはウグイスの明るく力強い鳴き声が響き、見頃は過ぎたがミツバツツジも多い。

■広い斜面に山道はなくどこを登ってもよいのだが、自然と木陰の下を歩く。草地はすでに葉を開いたワラビやフキで一杯。まるで畑のようだ。1週間早ければワラビ採りだ。大木も多い。登りと平地を繰り返しグイグイと高度を稼ぐ。汗は出るが風ですぐに乾いた。

■振り返ると防火帯正面に大菩薩や黒川鶏冠山が見える。息を切らしながらも勢いで登り切れる。二本楢に到着。すぐ先に緑の石保戸山があった。そこからスキー滑降コースのような高低差90mの急な下り。斜面を思い思いに下る。滑って転んでも問題はない。


(山頂)
■下り終えた指入峠から170mの登りとなる。少しずつ高度を上げ、最後の最後は両手両足を使う厳しい斜面。11時55分、あっけなく山頂部に着いた。狭い三角点(1672m)は距離40、50mの藪漕ぎの先にあるはずだったが、鹿の食害で藪は消え去り三角点に到着。山頂部に戻り木陰で昼食をとった。


(白沢峠へ林道歩き)
■山頂から次の防火帯を下ると、正面に富士山が見えた。その端正で神々しい姿に感激する。下り終えると水平な山道が続く。樹間から白峰三山、荒川三山、破風山?が覗く。緩い登りが続き疲れたころに、13時15分、鳥小屋分岐点に到着。小屋があるものと思い違いした方がいたが、笠取小屋と白沢峠、柳沢峠とを繋ぐ分岐に過ぎない。空気が乾燥しているためか、とにかく喉が渇いた。


(白沢峠)

■その先で朽ち果てた廃トラックに出会った。昭和20、30年代、植林に使用され放置された米軍製のトラックだ。タイヤがしっかりしていたのには驚く。新緑で心地よい林道は概ね下り気味なのだが、似たような光景が次から次と現れ、贅沢であるが飽きた。分岐から1時間30分、やっと白沢峠に到着、14時50分。後は下るだけ気持ちが楽になった。

■歩いた林道は稜線のすぐ下を巻いていたのだが、稜線には柳沢峠手前まで続く、立派な防火帯が走り、峠はカラマツ林に囲まれた広場だ。この峠には一部に有名な、峠のシンボル、廃トラックが放置されている。タイヤは半分土砂に埋まり、扉には機関銃の貫通跡?、朽ち果てた荷台を突き破ったミヤマザクラ(らしい)が白花を咲かせていた。もともと米陸軍の車両・ダッジWC54というトラックで、戦後払い下げられ、植林時に荷揚げ用として使われたようだ。何とも言えず味わいのある遺物だった。


(高橋集落へ、道が違う?)
■峠から高低差170mの山道を下り、集落の林道を歩くと高橋に着くはず。峠から東に延びる道を進んだがどうもおかしい。一度峠に戻り別の下山路を探し、薄い踏み跡を辿り沢に下った。沢に入ると日蔭で周囲はうす暗くなった。確信が持てない踏み跡に加え、うす暗い山中で、皆は不安を覚えたに違いない。ルートに間違いはなかった。一安心。安堵の笑顔が広がった。源流の沢底は笠取山と同じく白砂だ。

■山を下り終えた「大ダル林道交差点」は道が交差し紛らわしく慎重に道を選ぶ。道を進むとゲートが前方を遮っている。ゲート両側にもガードがある。一瞬、道を間違えたかと思ったが車とバイク止めだ。柵を乗り越え高橋地区に入る。


(高橋集落、携帯が繋がらない)
■標高1200mにある高橋は、小ざっぱりした高原の集落だが、その昔から「黒川金山」に係わる子孫が住んでいる。ヤマツツジやヘビイチゴが咲く。私はすでに廃村だと思っていたが数戸は住んでおり、寺も手入れが入っていた。タクシー会社によると携帯電話は繋がるという。山を下り終えたところで多くは体力の限界。重い足を引きずり、タクシー頼みでタクシー会社に連絡を取る。しかし、ドコモもauも「圏外」表示。高橋中心部に到着する小一時間前に配車を依頼し、高橋でピックアップしてもらう予定でいた。

■タクシー会社の話もあるし、ドコモの電波エリア図でもカバーされている。携帯連絡が取れずストレスが溜まるが、文句の言いようもなく淡々と歩く。高橋を抜ける手前でやっと「au」が通じた。が、通話ができない。
場所を変え電話すると再び通じた。話し始めたところで、タクシー会社から「話が聞こえなくなるので、その場所を動かないでください」と指示。1m動くだけで電波が届かなくなる。左右前後に1m程度動き電波状況の良い場所を探る。そして0.5mずつ動き絞り込む。電波が確実に通じたポイントに立ち止まり、落合での迎車を予約した。17時。私たちは体に鞭打ち落合まで20分歩く。


(塩山駅へ)
■タクシーは予想よりも早くやってきた。柳沢峠を越え盆地へ下ると夕陽を浴びた富士山が素晴らしい。下界は30℃を越える暑さだったようだ。塩山駅北口に18時10分着。35分、7,200円/台。笠取山山行の帰りに利用した中華料理店に入り打ち上げ。疲れ顔に冷たいビールで乾杯。おいしい一杯。無事で何よりだった。19時11分発の特急で帰路に就いた。


※このコースは最近、破線でコース表記された。道そのものは明瞭で、道巾も広く、荒れておらず、危険なところもない。標高差も少ない。一方、巡視路や作業道が交差するが道標はほとんどないので、分岐では道の選択に注意が必要。やはり破線コースなのか。歩行距離は20km程度か。私の万歩計は30,500歩だった。



写真はこちらです。
1.斎藤さん撮影
2.和田さん撮影
  以上