◆富士緑道(身延線旧線)~龍巌淵~岩本山ハイキング報告   

 高橋さんから5月のハイキングのご報告を頂きましたので掲載いたします。

   

【メンバー】
46三木洋、平石充,47沼田,48斎藤隆、石井啓,53田中亨,57高橋聡
【日程】
2022年5月21日(土)
【行程】
距離:9.0km 登り:165m 下り:17m

<20220521ヤマレコ富士緑道(身延線旧線)~龍巌淵~岩本山>

富士駅8:00 → 8:35旧竪堀駅8:45 → 9:00潤井川河畔 → 9:25龍巌淵 →9:40湯沢平公園9:50 → 10:40岩本山(昼食)13:00 →(バス)→ 13:45富士駅
 
【まえがき】

「頭を雲の上に出し 四方の山を見下ろして 雷様を下に聞く 富士は日本一の山」(文部省歌:富士の山)
富士山は、世界に対し日本の代表として知れ渡る、言わずと知れた日本が誇る日本一の山である。
本物の富士山に行くことが生涯叶わなかった江戸の庶民は、富士山を模倣したミニチュアで我慢せざるを得なかった。現在も東京都区内には「○〇富士」としてその遺構が数多く残っている。
早稲田にも「高田富士」があった。現在の「高田富士」は、昭和40年(1965)「甘水園」に復元されたものであるが、元々の「高田富士」は、安永8年(1779)高田藤四郎が築造し、江戸の富士講史上、最古の富士塚として知られる。
しかしながら、早稲田大学の手によって切り崩されてしまう。時の早稲田大学は、第7代早稲田大学総長時代(昭和29-41年(1954-1966))、大学の大規模な拡大を目論み、高田富士の土地だけでなく、上石神井、戸山、大久保、本庄等の土地に触手を伸ばした。まさに「進取の精神」!(?)
さて、かような偽物の富士山や遥か向こうに微かに見えた小さな富士山で一喜一憂することはない。
「そうだ!『本物』の富士山を見に行こう!」
 
【報告】

 

報告順序を間違えているのか!?
いえ、今回は、前日の「反省会」からスタートです(笑)。翌日の本番の天候を杞憂して・・・。乾杯!

 

集合場所の富士駅です。
明治22年(1889)東海道本線が国府津から静岡まで延伸(当時は御殿場経由「不老山」 (2022/3/20報告)参照)した際、両隣の鈴川駅(現吉原)、岩淵駅(現富士川駅)は開業したのですが、残念ながら富士駅はありませんでした。路線開通20年後に開業しますが、今日では、富士駅は「東海道本線」と駿河湾と甲府盆地を結ぶ「身延線」の接続駅で、富士市の中心駅となっています。
さて、スタート時の記念写真!雨天が予想されたため、当日参加者はありません。天候のせいか、何故か既にお疲れモードです(笑)。
身延線の旅に行かれるNMT先輩とはここでお別れです。

 

富士駅から線路沿いを東へ歩くと左にカーブして工場の隙間に入っていく道があります。ここを進みます。現在の身延線は富士駅を出ると西に向かい右にカーブして北に進む西回りですが、昭和44年(1969)までの身延線は、富士駅から東回りしていました。その線路跡地です。

 

身延線旧線跡は、駅周辺の工場間を抜けると「富士緑道」という遊歩道として整備されています。
身延線の歴史は古く、東海道本線鈴川駅(現吉原)の開業翌年明治23年(1890)、全国1300の浅間神社の総本社「富士山本宮浅間大社」のある大宮町(現富士宮市)へと富士馬車鉄道が開通します。
富士駅開設の翌年明治43年(1910)には、富士からも馬車鉄道路線が施設され、大正2年(1913)富士身延鉄道となりSL化、大正9年(1920)には、日蓮宗の総本山「身延山久遠寺」のある身延まで延伸、昭和3年(1928)には富士-甲府間の全区間が電化で全通します。宗教の力は凄いです。

 

ほどなく旧国道1号を渡ると、緑道の道幅が広がっています。旧「本市場駅」があったところです。

 <旧「本市場駅」>
 
 出典 ©上野ガイド転載

参考までに同じ場所の旧本市場駅の写真を転載します。それほど古いものではないかと思いますが、昭和の香りがします。

 

富士緑道を進んでいきます。この先、緑道がポイントの形に沿って二又に分かれます。列車交換が可能な島式ホームの旧「竪堀駅」です。現在の旧竪堀駅は、公園となっており、しばし小休止。旧竪堀駅の写真を撮り忘れたので・・・

 

現「竪堀駅」の写真を・・・。旧竪堀駅から400mほど西側の複線高架となった西回り新線上にあります。ちなみに晴れた日はこんな感じですという“証拠写真” です。(2022/4/7筆者通勤時撮影)

 

旧竪堀駅を過ぎ、少し進むと次第に左から、現在の身延線西回り新線が近づいてきます。というより身延線東回り旧線の終点です。富士市役所設置の看板には、「身延線は複線化と富士市街地内の交通渋滞解消のため、西回りの路線に変更されました」と書かれていますが・・・。
戦時中、富士身延鉄道は国営化され、国鉄身延線となり、戦後、身延線富士-富士宮間に大きな“転機”が訪れます。
昭和35年(1960)池田大作氏が創価学会第3代会長に就任。すると急速に勢力を拡大した創価学会の方々が、富士宮の日蓮正宗(にちれんしょうしゅう)の総本山「大石寺(たいせきじ)」に“大挙して”押し寄せるようになりました。当時の“身延線は、定期列車より臨時列車の方が多い”と揶揄される程、通称「創臨」という創価学会の「団臨」(団体専用臨時列車)が富士-富士宮間を走るようになりました。
その「創臨」輸送力強化のため、富士-富士宮間は複線化され、富士宮駅には団体専用のホームが作られ、富士駅では東京方面からの機関車付替え、方向転換しなくとも身延線に入れるように東回りから西回りに配線変更されるに至りました。
宗教の力は凄いです。

 

「盛者必衰の理をあらはす」平成3年(1991)日蓮正宗と創価学会が決裂!「団臨」も全滅します。今回、身延線潤井川鉄橋を渡る列車の音を聞くことなく、鉄橋を離れ、潤井川(うるいがわ)右岸の天端(てんば)を北に歩きました。
富士市は、“自称”「かぐや姫」の里で、翁がかぐや姫を発見した竹藪もあります。かぐや姫は美しく成長しますが、帝に目に留まり勅命を受けます。姫は勅命に背き、富士山へ登り姿を消してしまいます。それを村人が悲しみ流した涙が「憂涙河」・・・。

 

この先、潤井川は「富士早川」を分流しますので、右岸は直進できず、ここで左岸へとこの「滝戸橋」を渡ります。写真右奥の緑は、潤井川左岸に植えられた「龍巌淵の桜並木」で、桜の季節では、この滝戸橋から富士山をバックに川面に映えた満開の桜は、まさに絶景です。

 

「滝戸橋」で潤井川の左岸に渡り、桜並木をほどなく進み、「龍厳橋」で右岸に戻ります。
奥に見えるのは、旧富士製紙(現王子製紙系)「潤井川第三発電所」(大正14年(1925)操業最大出力2600kW)です。富士川水系本支流には、知られざる(?)電力会社以外の水力発電所が至る所にあります。

閑話)龍厳橋の銘鈑の「」はUnicode 2B78Eです。UnicodeをMicrosoft Wordで入力するには、コード番号を入力して選択しAlt+Xで変換します。ご参考まで・・・。
 

 

「龍厳橋」から上流の潤井川は、下流の緩やかな流れに対し、急で、川幅も狭く、渓谷のようになっています。天気が良ければ、バックには富士山が覗き、渓谷と富士山の写真が映える(ばえる)予定だったんですが・・・残念!

 

発電所脇を抜けるような細い脇道を登って、潤井川とお別れし、岩本山に向かいます。途中の中腹に広がる団地にある「湯沢平公園」で小休止。

 

岩本山に向かって緩やかな道なんですが、前日のイベントのせいか、先輩方の足の運びが、どうも今いち・・・。
ですが、今日の天候での奇跡!なんと薄っすらですが、富士山が見えてきたではないですか!そもそも、ここまで雨が降りそうで降らずに来られたこと、それですら奇跡なんですが・・・!

 

どうにか、岩本山の展望テラスに到着!
晴れた日には、富士市内はもとより、駿河湾の向こうには伊豆半島が綺麗にみえます。夜景も綺麗なので、「アベック」(死語?)で賑わった証として、ここのフェンスにも「愛の南京錠」(一昔前に流行った?)が、びっしりと付いていました。今のフェンスは、南京錠が付けられないように柵状からパネルに変更されていますが。
注) 愛の南京錠:デートスポットで恋人と一緒に南京錠を掛けて愛を誓うと結ばれるという“信仰”

 

平成25年(2013) 富士山は「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」としてユネスコの世界文化遺産に登録されました。
霊峰富士は、あらゆる信仰の自由を受け入れます。「そうだ!富士山を見に行こう!」信仰が通じたようです。一瞬ですが、なんと富士山が姿を現しました!

 

奇跡も一瞬、雨もパラついてきたので、展望テラス脇の岩本山レストラン「KAGUYA」に避難です。
こ洒落たレストランで、飲み屋の雰囲気ではないのですが、いつも通りのつもりでビールを注文。が、驚くことにあのMIK先輩もHIS先輩もビールに口をつけません!

 

当初の企画では、ここ岩本山からさらに富士宮の明星山へも考えていたのですが、天候と体調(?)を考慮し、文明の利器で下山。

 

バスは、直接富士駅に向かえば、10分程度の距離。ですが、コミュニティバスは、45分もかけて、市内のあちらこちらを通って行きます。市内観光に最適!・・・なはずでしたが、皆様、大変お疲れのようで・・・。
今回は、富士駅到着後、即、解散というかつてないことに!
“前日”は、大変お疲れ様でした!(笑)

以上
 
     高橋聡 記  


報告書は以上です。

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