◆「南ア・櫛形山」報告 

  和田(則)さんから7月の山行のご報告を頂きましたので紹介いたします。

 
  • 日 程:平成28年7月2日(土)曇りのち晴れ間
  • コース:
    中央線 中央本線「甲府」駅 = タクシー = 池の茶屋登山口 − トレッキングコース(北岳展望デッキ − もみじ沢 − 裸山コル)− アヤメ平 − 裸山 − 櫛形山(最高点)− 櫛形山(三角点)− 池の茶屋登山口 = タクシー =「甲府」駅
  • 同行者:石川、阿部、佐藤、石井、斎藤(恭)、北島、和田(記)




<当日配布した地形図(クリックすると大きなマップが開きます)>





<報告>

  • 鬱陶しい雲り空から晴れ間となった1日。私の期待を超えた櫛形山の原生林のトレッキングでした。針葉樹の香りが漂い、サルオガセが広がる森、そして巨木の原生林。柔らかな土と下草が少なく段差のない快適な山道。ところどころに展望ポイントがある、全体になだらかで軽快な周遊コースです。全体が森林公園のようですが、深い森を歩いた満足感に包まれました。

    全滅のアヤメに回復の兆しがあります。この時期はキンポウゲのお花畑を楽しみました。それなりに入山者があったはずですが、ほとんど遭わずに済んだことも幸いでした。

  • 櫛形山は南アルプス北部の前衛の山で、甲府盆地の南西に位置し、和櫛を伏せた大きくなだらかな山容の山です。従来の登山口は山の東側にあり、標高は900m前後でしたが、池の茶屋登山口は回り込んだ南側にあり標高は1800m、山頂を目指すだけなら1時間でピークを踏めます。

 
 (トレッキングコース)
  • 南アルプス市が整備した「トレッキングコース」は、大きな山容の山頂部の半分を巻くなだらかなトレッキング道です。コースに変化を持たせるため、もみじ沢周辺は巻道とはせずに、150mの下り登りを設け、かつ下りによる山道の消耗を避けるため、もみじ沢の急坂は丸太階段にしてありました。ポイント毎にベンチが整備されています。

    私たちは時計回りに歩きました。登山口から山頂までの標高差200mを4時間以上かけて歩いたのですが、反対回りだと最初に200mを登りゆっくりと下り、最後にもみじ沢の150mの急な登りとなります。わくわく感では時計回りが正解だと思います。

 
 (アプローチ)
  • 登山口まではマイカー利用がほとんどで、朝の7時、8時には20、30台止められる駐車場は満杯となります。案内とは異なり、甲府駅からタクシーの場合、片道1時間20分程度、普通車タクシーで12,000円程度かかります。私たちは地元、櫛形のジャンボタクシー(9名乗り)を予約し、片道16,000円弱かかりました。
    他のアプローチは甲府から身延線に乗り市川大門駅からタクシーを使うと50分程度です。
    甲府からレンタルカーを使う手もありますが、ガードレールのない片側が切れ落ちた狭い林道部を走ります。

 
 (櫛形の森)
  • 櫛形の森の多くは、カラマツや太古からの原生林です。鬱蒼としているはずですが、下草がシダ、フキ、バイケイソウに限られて、それ以外はよく刈られた芝生のようで見通しがきき、快適でした。
    これは日陰のほかに、鹿の食害によるもので、鹿が食べないシダ、フキ、バイケイソウだけが残り繁殖しているのです。しかし、所々にある苔むした原生林は美しいです。

    カラマツ林では針葉樹の乾いた香りが漂い、その中を歩くのは心地よいものでした。

    サルオガセは至るところにありますが、水を含んだとろろ昆布のようで、かつて南アルプスで見た風になびく風情はありませんでした。

    巨木が多いのにも驚きました。ほとんどはカラマツの巨木のようですが、巨木は造形的な枝ぶりです。長寿ならではの樹形でしょう。
 

 (花と蝶)
  • お花畑はアヤメ平と裸山がメインでした。そこにはかつて3,000万株のアヤメがありましたが、10年前には全滅しました。原因は不明とされましたが、防護柵を設けたところ、少しずつ植生が回復し始めました。

    今回ざっと見、アヤメ平は10本程度、裸山は100,200本花をつけていました。実際には花をつけていない株や、つぼみの株もあり、その5,10倍以上回復しているはずです。
    柵の内外の下草の様子を見れば、食害は明らかです。すでに全滅した貴重植物もあるようで、もっと早く手を打っていれば、と惜しむ声があります。

    道脇にはつぼみをつけた沢山のバイケイソウやオダマキ、ヘビイチゴ。数は少ないがクサタチバナ、カラマツソウ、イチヤクソウを見つけました。
    山道脇には食害から種を保存するため2m×2m柵が設置してある植物もありました。

    蝶は、お花畑でモンシロチョウを見かけましたが、それ以外は目につきませんでした。石川さんには想定内のようでしたが、残念と思っていたところ、裸山で珍しい光景を目にしました。蝶の固まりです。蝶が群がり獣糞の汁を吸っているものでした。
 
 (登山口を出発)
  • 甲府駅からタクシーは伊奈ケ湖経由で林道に入りました。林道が奥へ奥へと続くので内心は心配。そのとき、「あっ、大きな山が見える」の声。窓の外をみると、雲の上に山頂を雲で隠した大きなお山が浮かんでいます、驚きの富士山でした。

    登山口に10時到着。すでに20,30台駐車しています。山中の気温20,21℃(東京、甲府31℃)。私が企画する山行は、ほぼコースタイムで歩いています。それに休憩時間を足せば、所要時間を読めます。この山のコースタイムが甘そうなので、休憩を入れて、16時到着です。16時迎車でお願いしました。

    10時10分の出発時には下山してくるグループがいます。早朝に出発したのでしよう。皆さんから「お花畑がきれいでした」との声に、期待に胸が膨らみます。念のため、熊鈴をつけましたが、斎藤さんの熊鈴が良い音色を出します。お金がかかっているとのことでした。
 
 (もみじ沢)
  • 北岳展望デッキまでは車イスで入れます。鳳凰三山、甲斐駒ケ岳、北岳は山頂部に雲がかかっていました。カラマツとシダの林に入ります。マタダビやツルアジサイが目立ちます。ひと汗かくころ、休憩所で休みます。雨の心配はなさそうですが、空模様は一向にはっきりとしません。

    休憩所からもみじ沢へ標高差150mを一気に下ります。丸太階段が整備され歩きやすい。もみじ沢は初夏にはニリンソウが咲き、秋にはもみじが美しそうです。ハウチワカエデやイタヤカエデなので、黄色や橙色の紅葉です。

 
 (サルオガセの林)
  • 苔むした原生林から裸山のコルを過ぎると、カラマツに絡むサルオガセの林を歩きます。水分を含んだとろろ昆布のようで、軽やかさがありません。触ってみると固いのにびっくりしました。森が開けた箇所からは展望があり、トレッキングの楽しみです。

 
 (アヤメ平)
  • 林森の中から抜けると、光あふれるアヤメ平、一面黄色に覆われた世界です。防護柵を開けて中に入ります。柵の外は下草が生えていません。
    アヤメ平は上段のお花畑と下段のお花畑に分かれており、上段のお花畑はキンポウゲ(ウマノアシガタ)やアヤメ、オダマキソウなどが咲き、見応えがありました。下段はこれからなのでしょうか、目につく花は少なかったです。下段には避難小屋と仮設トイレがあり、清潔なトイレを利用しました。毎日、掃除にやってくるようです。

 
 (原生林の森)
  • アヤメ平から裸山、櫛形山(最高点)まで、巨木が連なる原生林が続きます。裸山まではいくらか登りですが、その他は平坦な道で、大きく息を吸い込みながら歩きました。

 
 (裸山)
  • 前方が明るくなると、裸山。アヤメが目につきます。アヤメの奥には南アルプスの南部の山々が見えました。小さな周回コースがあり山頂で遅い昼食です。目の前には富士山が顔を出し、風もありました。

 
 (櫛形山まで)
  • まったく平らな道で、下草が茂り苔むす原生林、ますます楽しい山歩きとなります。「櫛形山」道標地点からは富士山を眺め、休憩です。
    櫛形山はのっぺりした大きな山なので、山頂部にはいくつか峰があるようです。最高点がここです。地形図や昭文社の地図に「櫛形山」と記された場所は、この先の道標のない、三角点だけがあるピークです。三角点が最高点にない珍しい山です。

 
 (登山口へ)
  • 左側が開けたなだらかな道を進むと三角点。さらにゆっくりと下ると北岳展望台があり、一気にジグザクに下り始めます。ただ、とても下りやすい道でした。
    16時に登山口に到着です。予定通りの到着で、タクシーが待っていました。

 
 (打ち上げ) 
  • 甲府駅に17時20分ごろに到着。駅ビルの中華料理店で、小一時間の打上げです。
    思っていた以上に楽しめたので、ビールもおいしい。

  • 私はこの山行で動物に遭えるのではないかと密かに期待していました。大きな山ですし、原生林が残っています。熊とは遭いたくないですが、カモシカに出会えそうな気がしていました。結果、私が出会ったのはホモサピエンスのみで残念です。

  • 歩いてみないとわからない山があります。この山は歩いてこそわかる良さを持っています。コースがよく整備されているので、トレッキングを楽しめます。


写真はこちらです。
1.石川さん撮影
2.斎藤さん撮影
3.和田さん撮影


   以上